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契約社員やパート・アルバイトにも賞与・退職金を支払うべし!

いやもうホント、世の社長さんは大変なご時世になってきた。

昨年6月1日の最高裁判決で、契約社員に対する契約期間があることを理由とする正社員との不合理な待遇差が違法であるとの判断(いわゆる「ハマキョウレックス事件」)が示された。この最高裁判決を受けて、先ごろ、アルバイトや契約社員に対する賞与や退職金の不支給が、正社員と比較して不合理であり、支払え、との判決が相次いでなされた。

まずは、2月15日の大阪高裁判決。こちらは正社員に対しては一律の基準で賞与を支給してきたがアルバイトには支給していなかったことが、不合理と判断された。この裁判、一審の大阪地裁は原告であるアルバイトの請求を棄却していた。今回大阪高裁は地裁の判断をひっくり返したことになる。判決文を読んでいないので、大阪高裁が不合理と判断した根拠の詳細は不明だが、昨年6月のハマキョウレックス事件の最高裁判決が大きく影響していることは間違いない。

次は大阪高裁の翌週の2月20日の東京高裁判決。こちらは退職した契約社員に対する退職金の不支給を不合理な格差だとして、労働契約法第20条が施行された平成25年4月1日以降に退職した契約社員に対して、正社員と同様に算定した額の少なくとも25%は支払われるべきとだと判断している。退職金は、一般に賃金の後払い的性格と功労報償的性格の両面を有することが多いが、東京高裁は、会社が10年前後勤務した契約社員に対して退職金を支給しなかったことについて、「長年の勤務に対する功労報償の性格を有する退職金すら一切支給しないことは不合理」と判断した。こちらも一審の東京地裁の判決を大きく変更して判決している。

上の二つの判決のうち、大阪高裁判決の方はアルバイトに対する賞与不支給が不合理と判断し、東京高裁判決の方は契約社員に対する退職金の不支給を不合理と判断したものだ。

この二つの判決から言えることは、パートやアルバイトまたは契約社員であっても、正社員と比較して、①職務の内容や責任の程度、②職務の変更の範囲や配転の範囲、③その他の事情、といった要素に照らし、賃金や福利厚生といった条件について不合理と認められる待遇差は違法であり、殊に賃金については応分を支払わなければならないということである。

賞与や退職金も賃金の一部である以上、正社員と比較して、労働時間が短いからとか、労働契約期間があるから、といったことを理由として、これらを正社員には支給して、パート・アルバイトや契約社員には一切支払わないとすることは許されないということである。

現在、今年の4月1日から施行される改正労基法の特に年次有給休暇の付与義務化で会社の経営担当者は少なからず頭を抱えていることだろう。しかし、年次有給休暇の付与義務はこれから始まることだ。それに対して、いわゆる均衡待遇については、実は何年も前から法が施行されており、パート・アルバイトや契約社員に対する不合理な待遇差を放置してきた会社は、そういった非正規社員から損害賠償請求を受けるリスクを抱えていることになる。

そして、以前ココのブログでも書いたとおり、会社が年次有給休暇の5日の付与義務を履行し、かつパート・アルバイトや契約社員に対する均衡待遇を図る場合、会社の人件費を上昇させる要因となり、それに見合うだけの売上高のアップや粗利率のアップが実現しない限り、会社の利益を圧迫し、労働生産性についても向上させるどころか悪化させることになる。

2月21日付の日経新聞の「働き方改革進化論」でデロイトトーマツコンサルティングのシニアマネージャー田中公康氏は、働き方改革は3つの段階に分かれると述べている。1つ目はコンプライアンスの徹底。2つ目は既存業務の最適化。そして3つ目がイノベーション。

さて、どのように働き方改革を進めていくか?
その前に、もしかしたら以前会社で勤めていたアルバイトや契約社員から賞与や退職金相当の損害賠償請求書が会社に郵送されてくるかもしれない。

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