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才能ってなんだ

「したかったこと、私には向いてないみたいで」

20歳の女の子がそうこぼす。
立ち話ついで、"たった今思いついたんです"くらいのノリで、あまりに自然に言うものだから、これといって気の利いたフォローもアドバイスもできなかった。彼女がどんな人でこれまで何を思い歩んできたのか知らないが、他の人と同じように「そんなことないよ」って言っておいた。

思う。彼女がこの言葉を吐き出すまでに、諦めてしまうまでに、どれほどの努力と、絶望があったんだろう。

部屋の小窓に朝日が差し込むタイミングを待つように、氷点下の中でただひたすらにオーロラの出現を待つように、脚光を浴びるその日のために耐え忍んでいたのに、ある日突然くたびれ、自らの手で手放すのだ。

これほど侘しいことはない、と思う。

私も同じような経験をしたことがある。好きだと思って始めたことなのに、みんなと同じ要領で練習してもちっとも上手くならず、夜の河原で一人泣いたことがあった。涙を堪えるために膝に爪を食い込ませて、膝が血だらけになったこともあった。あと一日、あと一日だけ頑張ろうと耐えて、卒業と共に終わりにした。

あのときの"逃げない努力"が何の糧になったかと聞かれると、さして何にもなっていない気はするが、ただ振り返って思う。今もまだ続けていたら、どうなっていたのかと。

諦めるななんて、言える立場ではない。
できないこと、つらいことは全部、才能のせいにしたらいい。できないことはいつまでも、うまくはできないものだから。才能があるやつにも、できないときにはできないことがある。
一方で継続する努力は、才能とは全く関係がない。あなたを突然裏切ることもない。

その道を生きていくのは私自身であり、あなた自身なんだから、ただ正直でいたらいい。そのまま日を待つも、次を探すも、動いてみないことには正解なんてわからないのだから。直感に従って進めばいい。


朝日が昇って目覚めた時、自分自身を誇れていますように。私も、あなたも。そうやって生きていたいし、ひとの背中を押せるひとでありたい。

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