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おやじパンクス、恋をする。#039

この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ

「ほらな、何ともねえ」涼介が言う。

「で、どういう感じ?」ボンが煙草の煙をモクモクさせながら言う。

「どういう感じって……」俺は口ごもる。「よく分かんねえよ、話はこれからだ」

「ああ、ちゃんと話をした方がいい」と真面目な口調で言うタカ。いやなんだその言い方。てめえは何ポジションなんだ。

 そんなことを思いながらあのバカを見れば、ああ、可哀想に。変なのがさらに三人も増えちまって、いよいよ震えだしそうなほど、萎縮してる。

「つうかよ」涼介が突然ドスの利いた声に変わる。「てめえ何女殴ってんだよ」

「え……」突然声をかけられてビビるバカ。「なんで……ていうか誰ですか」

 ああ、ダメだよ涼介にそんな言い方しちゃ。

「んだとコラ」涼介がその特徴的な尖った犬歯をむき出しにして、食って掛かった。「やんのかこの野郎」ああほら言わんこっちゃねえ。

 俺はため息をついて、今にも俺を乗り越えてバカに掴みかかりそうな涼介の肩を押さえた。

「とりあえずまだなんにも分かってねえ。タカの言うとおり、まずは話をしよう」

「まあ、結果的にぶん殴ることになるにしてもな」ボンがニヤつきながら言う。

「ここで? 狭いじゃん」タカがよく分からねえ不満を漏らす。つうかてめえが話し合えつったんじゃねえかよ。

 そんなこんなで玄関先で俺らがああでもねえこうでもねえとやっていると、なぜかそのバカの方から「玄関じゃ何なんで、どうぞ」とか言って俺らを部屋に通した。まあ、こうやって廊下にはみ出した状態でワイワイやられるよりはいいと踏んだんだろう。

 俺らはその狭いワンルームの中に上がり込んで、俺が登場してから一度も口を開いていない彼女を尻目に、小さな白いテーブルを囲んで座った。

「で、こいつは誰なんだ?」バカの方を指さしながら、なんのためらいもなく涼介が彼女に聞いた。

「誰って、そんなのあんたに関係ないじゃない」と彼女。

「そりゃごもっとも」とボンが大きく頷く。

「るせえな、聞きてえから聞いてんだろ、俺らこいつがあんたとイチャこいてんの見てんだよ、あんたの男?」

「まさか、違うよ」彼女はため息混じりに言った。

「じゃあ、誰なんだ? なんか覗いてたみたいで悪いけど、こいつ、あんたに手あげてたろ」と俺。

 彼女はふっと笑い声を漏らし、「覗いてたみたいって……実際、覗いてたくせに」と言った。

「いやまあ、そうなんだけど」と照れる俺。いや、なんで照れてんだよ。

「この子は、何て言えばいいのかな、私の古い知り合いの、息子みたいなもん」


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