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おやじパンクス、恋をする。#243

 俺たちの状態を見て、運転手は病院に向かおうとした。

 何しろ俺も涼介も、そしてケンカ最強のタカまでもがボロボロで、顔はパンパンに腫れていたし、身体だってどこがどう痛えのか分からねえくらいに痛え。

 けど何となく、喧嘩してそのまま病院に駆け込むっつうのが嫌で、俺は店まででいいいからとワガママを言った。

 パーティーのあったクラブから69までは車で十分足らずの距離だ。

 店の前の細い路地に侵入できねえマイクロバスは近所の公園脇に停車し、運転手がわざわざ外に回ってドアを開けてくれた。俺はカズんとこの社員さんたち――精鋭を連れてきたんだろうか、こちらも梶商事に負けねえ強面揃いだ――にペコペコと頭を下げながら進み、運転席の傍に座っていたカズのおやっさんの前まで行くと、立ち止まって頭を下げた。

 何て言っていいのか分かんなくて、とにかく無言で頭を下げた。

 おやっさんはどう受け取ったのか、「悪かったな、兄弟分の倅が、迷惑かけてよ」と笑った。

 俺は顔を上げて、その顔を見る。梶さんとはまた違った迫力。

 ガッチリとして、頭はグレイのパンチパーマ、大門タイプのメガネに、そして社員たちと揃いのハッピ。おっかねえことこの上ねえ。

「いや、そんな、とんでもねえです」俺は恐縮して、だけどなんだか誇らしくもあって、妙な調子で言った。

 そんな俺を神崎達巳は微笑んで見上げ、「その腫れた顔、いいじゃあねえか。ダメな舎弟の為に体張るのは、兄貴分の本分ってもんだ」と褒めてくれる。

 いやおやっさん、別に俺は雄大の兄貴分でも何でもなく、なんて思ったけど、いや、何でもなくねえな、もしかしたら俺はもう、あいつの兄貴みたいなものなのかもしれない。

「ケガが治ったら、遊びに来いよ。うまいもん食わせてやるからよ」

 おやっさんは最後にそう言って、うーん、嬉しいような、絶対行きたくないようなとか考えながら、俺は再度深々とお辞儀をしてバスを降りた。

 そして、バスを見送ろうと振り返って驚いた。

 彼女と雄大を先頭に、涼介タカボンが、そしてなぜかカズまでぞろぞろと連なって降りてきやがってたからだ。

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この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ

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