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【怖い話】プライベート・ビーチ #6

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みんなで家族旅行に行った お前はまだ小学生で お父さんとお母さんとお前と俺で 海の見える旅館だ 旅館の人が教えてくれた 砂浜に行ったよな 誰もいなくてキレイだった あのときのこと覚えてるか お父さんもお母さんも見ていなかった お前だけが見ていた 

トンネルのことだよ 穴がたくさんあっただろ あのときお前はどこまで見たのかな でも 俺はあのとき いろいろ決まってしまった 半年前に家を出たのも あのときのことを確かめるためだ 

俺はいま あの砂浜に来てる 探さないでくれ 探しても無駄だ でも お前やお父さんやお母さんを 好きだった 悲しませてごめん でも 探さないでくれ もう間に合わない そして 俺は悲しくない 何かに負けて 行くわけじゃないからな 覚悟は決まっている 受験がんばれよ

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 これがあの日の朝、私の携帯電話に届いたメールの全文である。

 読み始めてすぐに、私は兄が、なんのことを書こうとしているのか、想像できた。

 それは、文面にあるとおり、私が小学校五年生のときに行った、家族旅行での出来事だ。

 あのことがあってから、兄は変わってしまったのだ。


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