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おやじパンクス、恋をする。#135

 本来であれば、梶さんの話を聞いて、俺はそれでも彼女を好きなのか、一緒にいたいと思うのか、それだけの話なんだ。

 梶さんは俺に、彼女と愛人のような関係であったと話した。

 俺もバカじゃねえ、その意味は分かる。

 そして、普段の俺だったら、多分そこで匙を投げちまったようにも思うんだ。もういいや、やっぱそうなんじゃねえか、あーあつまんねえ、つってさ。

 けど、そうはならなかった。

 梶さんのことを好きだと思ったってせいもある。芯のある、おっかねえ、そしてちょっとブラックユーモアな爺さん。とにかく俺は、その「事実」を知っても、彼女に対する想いに変化はなかった。

 いや、違うな。それでも彼女が好きだとか、そういう話じゃねえな。

 考えなかったんだ。

 俺が彼女をどう思うか、どう思っているかということを、梶さんの話を聞きながら、俺は考えなかった。

 挙句、いま俺は「雄大のためにはどうすべきか」と考えている。

 出会いは最悪だった。

 あのレストランから、彼女を無理やり組み敷こうとするこのバカが見えた。殺してやるって気分で駆けたっけ。

「お前は、どうして欲しいんだよ」

 俺は落ち着いた気分で、そう言った。雄大がきょとんとした顔で俺を見た。まっすぐに。

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この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ

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