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おやじパンクス、恋をする。#180

 恐怖ってのは、その対象が見えねえからこそ起こるんだって前に言ったっけ。

 今回もそれと同じで、にっちもさっちもいかなくなった雄大の顔が頭に浮かんだ時、俺の中の迷いは消えて、自然と足が動いたんだよ。

 俺たちはでっけえ駐車場の真ん中を、海賊船で進むみてえに歩いていった。何人かの参列者が、ギョッとした顔で俺らを見たが、知るかそんなの。

 さっき入ってった黒ずくめの車がそれぞれ駐車を終え、中から柄の悪い黒スーツの――もっともそれは、単に喪服だったわけだが――男どもがぞろぞろと出てきてた。

 奴らの、俺らに対して注ぐ視線の感じに、ああ、やっぱこいつら梶さんとこの社員だろという感じがした。

 なんつうか、親分の葬式をどこぞのチンピラが邪魔しに来た、みてえな敵意バシバシの目なんだよ。

 俺はなんでかそういう視線に妙な心地よさを感じながら、雄大の姿を探した。奴の車はどこだろう、しかし、見つける前に会場の前に到着しちまって、建物の前に張り出すように設置された白テントの中に立ってた受付のおねえちゃんとおばさんが、やっぱり驚いた目で俺らを見、固まった。俺らも何となく立ち止まった。

 なんとなく気まずい沈黙が流れたときーー

「あのう」

 後ろからドスの利いた声。

 不信感プンプン、明らかに俺らを歓迎してないと分かる。涼介が掴みかかる前にと俺はさっと振り返ってその声の主を見た。

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この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ

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