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おやじパンクス、恋をする。#163

 もともと俺は根暗系のガキで、クラスメイトともあんまりうまくいかなくて、それで悶々としてるタイプだった。

 だからこんな風に、ひとり内向的に考えてああでもねえこうでもねえって状態になることは、三つ子の魂百までっていうか、かつての自分を思えば別におかしなことじゃない。

 だけどなんつうか、自己肯定感がどうのって話は、そこに辿り着いてみれば何となく、雄大の存在からの連想だったのかもしれねえ。

 彼女から聞いた奴の生い立ちを思うに、その自己肯定感ってもんを感じる機会を全く持たずに育ってきたのが雄大なんじゃねえのか。

 だからこそ、奴は梶さんや彼女っていう「初めて自分を認めてくれる人」を得て、はたから見ればちょっと異常なくらいに、その二人にこだわっている。

 そんな雄大が、まだ数回しか会っていない俺を、大切な姉さんの相手として認めるだろうか?

 そして彼女も、雄大の心変わりに対して、どこかで違和感を覚えてるんじゃねえか?

 結局俺の心配事はそこなのだった。

 梶さんを見舞いに行った彼女が、同じく病室にいた雄大に会って、「マサさんのことだけど、やっぱりあれ、ナシな」みたいな態度に出たとき、彼女はそれを受け入れてしまうんじゃねえのか。

 「ごめんマサ、やっぱりあんたとは付き合えないわ」と俺から離れていってしまうんじゃねえのか。

 そして俺の方も恐らく、カッコつけてそれを受け入れてしまうんじゃねえのか。

 そのままグルグルといろんなことを考えたが、結局は彼女の、そして雄大の気持ちが気になって仕方なく、灰皿にできた吸い殻の山は、どんどん高くなっていくのだった。

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この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ


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