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おやじパンクス、恋をする。#123

「何か、嫌なことが起こるだろ。親に怒られるとか、友達に何か盗まれるとか。そうなると、カーっとなって、親とか友達とかが嫌いになる。それこそ、殺したいくらいに」

「おいおい、穏やかじゃねえな」

「実際、相手を血まみれにしちまったこともある。骨折ったり、親父にも飛びかかっていったことが何度もあったし」

「お前があ? マジかよ」

 俺はマジで驚いた。確かにタカは俺らの中でも一番腕っぷしが強えが、決して好戦的な人間じゃない。もちろんそういう場面になったらちゃんと暴れるわけだが、感情に任せて飛びかかっていくなんてこと、今までなかった。

「ああ、マジマジ。実際、俺はガキの頃、小学生くらいまでかな、すぐ暴れるってんで問題児扱いで、いろんな人に迷惑かけた」

「……今も問題児じゃねえかよ」内心ちょっと戸惑いつつも、俺はツッコんだ。

 タカはなんでか嬉しそうにふふふと笑った。

「それが違うんだなあ。あの頃の感じとは、今はぜんぜん違う。俺はもう、わけわかんなくなんてならねえよ。ちゃんと、わけわかった上で、暴れる」

「なんだよそれ」

「要するに、ケンカってことだよ。ちゃんとしたケンカ。わけわかんなくて暴れてるわけじゃない」

「そういうもんか?」

 まあ、言わんとしてることはわからんでもない。確かに、ただただ暴れるのと、ちゃんとしたケンカってのは、意味合いが全然違う。

「でも、本当はケンカもない方がいいけどな。人殴ってると、少し思い出すんだよ、昔のこと。相手を殺しちゃうような暴れ方は、もうゴメンだ」

 へえ、と俺は言って、コロナをゆっくり飲んで、考えた。そして話の流れからそう思うのは当然なのに、なんでか慎重に、ゆっくりと、言った。

「雄大も、そういうタイプだってことか?」

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この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ

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