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おやじパンクス、恋をする。#242

「さあ、皆、乗ってくれ。送るからよ」

 カズが偉そうに言って、おやっさん、雄大、彼女に続き社員たちもゾロゾロと乗り込み、何の疑問もねえんだろうか、タカもうきうきと乗り込み、涼介はボンにぶつぶつと文句を言いながら乗り込んでいった。

 いつもの仕事の時みてえにバスの乗り込み口でニコニコしていたカズの顔を見つめると、カズは俺に気付いて、なぜか真顔になって俯いて、「よお、悪かったな」と言った。

「はあ? 何がだよ」

「いや、一緒に参戦できなくてよ」

 なんだよそんなことか、と俺は笑う。

「お前がおやっさん連れてきてくれたから、なんとかなったんだろ。そうじゃなきゃマジでヤバいことになってたぜ」

「まあ、そうかもしれねえけどさ」

 そういえば、とふと思い出して俺は言った。

「警察はなんで来なかったんだろうな」

「警察?」

 カズが聞き返し来て、ああそうかと思う。

「そっか、お前は知らねえのか。嵯峨野の出目金野郎がよ、通報してたんだよ。それなのに内輪揉めはそっちで対処しろとかって突っぱねられてよ。あれ、どう考えてもおかしいよなあ」

「ああ、あれな」

 首をひねる俺にカズは頬のヒゲをボリボリ掻きながら、とんでもないことを言った。

「あれボンだ」

「は?」

「ボン先生のものまね大賞。あいつってほんと何でも上手いよな。器用貧乏っつうの?」

「ちょ、ちょっと待てよ。どういうことだよ」

「ま、後でじっくり話すよ」

 カズは無理やり俺をバスに押し込むと、添乗員よろしく元気いっぱいに叫んだ。

「発車オーライ!」

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この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ

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