おやじパンクス、恋をする。#182
雄大は大丈夫かという心配、そして、相手側の俺らに対する明らかに敵対心を含んだ態度、そもそも舐められるわけにはいかねえという変なプライドがごちゃ混ぜになって、どうもニコニコ愛想笑いなんてできる状況ではなかった。
変な生き物だよな、男っつうのは。
でもだからといっていきなり喧嘩する理由もねえわけで、実際問題、他にも大勢参列者のいるこんな場所でゴタゴタしてるわけにもいかねえ。
むしろウチの特攻隊長・涼介がトチ狂ってマジで手を出したりなんかしたら、それこそ警察沙汰になっちまう。そりゃマズイ。
やっぱりここは、きちんと誤解を解いてだな、宴会の肩組みコースが実現するかは別として、場を丸く収めないとと思い始めた時だ。
「あ! あいつあん時の!」
ゴリラのおっさんではなくその後ろにいた、三十代半ばって感じのノッポが突然声を上げた。
俺はそいつに何の見覚えもなく、てめえにあいつとか言われる筋合いはねえぞと一瞬カチンと来たものの、よく見るとその視線の先は先頭の俺からズレた先、つまり俺の右後ろの方に注がれている。
あん時ってどん時だ、なんて考えながらその視線を追っかけてくと、そこには――既に臨戦態勢の涼介が、タカに肩を抑えられながらすげえメンチを切ってやがった。
この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ。
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