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おやじパンクス、恋をする。#178

 俺は電柱の陰から顔を出して、会場の方に進んでいくその車のケツを見つめた。

 間違いねえ。

 雄大の車だ。

「確かに、覚えがあるな」とボンが言い、「ああ、あんなセンスの悪ぃ車はなかなかねえ」と涼介も頷く。

「つうことは、あれ、梶商事御一行様ってことか?」俺はタバコをカンカンに投げ込んで、言った。

「まあ、連れ立ってきてる感じだったし、そうかもなあ」とボン。

「あの出目金野郎……」なぜか既にキレぎみの涼介。

「誰だよ出目金って」俺が言うと、カズが「嵯峨野大先生だろ」と答える。

「ああ! 確かにいたな、そんなヤツ」

 そうだそうだ、忘れてた。確かにもともとは、嵯峨野って悪役をどうぶっ飛ばそうかみたいな話だったもんな。

 けど、嵯峨野のことはもうケリが付いた。つうか彼女を狙う恋敵ではないってことが彼女自身から説明されて、正直、もうアウトオブ眼中な存在になっていた。

 それよりも、だ。

 そう、俺があの趣味悪いセダンを見てギクリとしたのは他でもない、考えてみればあの病院でちょろっと話した以来会ってねえ雄大と、ここで再会することがほぼ確定したからだった。

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この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ

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