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おやじパンクス、恋をする。#215

「金とか、大丈夫か? 腹減ってねえか?」

 機嫌を損ねて電話を切られるのを恐れて、あるいは同情かもしれないが、俺は言った。

「ふふ、マサさん、無理せんでください」

 うるせえこのガキ。だったら今すぐ戻ってきて彼女を安心させてやれよ。

 だが、雄大は俺の心情を察するように、言うのだった。

「心配しなくても、じき戻りますよ」

「じきって、いつだよ」

「今日が何曜? えーと日曜だから、あと二日くらい」

「はあ? 何言ってんだお前。期限付きの家出かよこのバカ。二日くらいって、火曜か?」

 俺が言うと雄大は少し慌てたようになって、「とにかくそのうちぶらっと帰りますから。姉さんにもそう言っといてくださいよ」と言って、じゃあ、と電話を切ろうとした。

 人間ってすごいな、その火曜日の日付を卓上カレンダーで確認した瞬間、脳みその全然別の場所にしまってあった記憶が蘇った。

 俺はピンときて、そしてそのピンはすぐに悪寒に変わったんだが、とにかくピンときて「雄大!」と叫んだ。

 だが、電話は切れた。向こうから。

 俺はiPhoneの画面を呆然と眺めた。

「……あいつ、何するつもりだ?」

 思わず呟くと、俺はゆっくりと、カレンダーに視線を戻した。

 間違いない。

 二日後の火曜日。

 それは、梶さんの葬式で社員たちが宣伝していた、あのパーティの開催日だ。

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この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ

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