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おやじパンクス、恋をする。#176

 梶さんの葬式が行われたのは、駅の反対側、栄えてねえ方の出口から歩いて十分くらいのとこにある、小綺麗な公民館だった。

 駐車場がだだっ広い割に建物は小さくて、黒いアスファルトの海に浮かぶ小島みたいだ。俺たちはその様子を遠目から眺める。

 参列者は多く、喪服を着た爺さん婆さんたちが、その小さな会場から溢れるように集まっているのが見える。

 一応は予想された死、だ。事故とか殺されたとかいう突然の出来事じゃなく、ある意味でそのうち死ぬとわかった上での死。

 さすがに笑顔こぼれるってほどじゃねえが、参列者の顔にブルーな色はあまり見えない。皆、久々の再会を喜ぶみてえに、どこか穏やかな表情を浮かべてああだこうだと話している。

 さて、そうなると俄然登場しづらいのが俺たちだ。

 梶さんの思い出をほんわかした気持ちで語り合っている参列者の中に、俺らみたいな厳つい集団がズカズカと入ってきたら、どうなるだろうか。

 オレンジ色のモヒカン(さすがにおっ立ててはなかったが)の俺を始めとし、金髪のタカとカズ、キリストの如きウェーブした黒髪ロン毛の涼介、久々に会ったらもじゃもじゃしたドレッドのエクステを垂らしていたボン……その”ユニーク”な髪型のせいか、全員ちゃんと喪服を着ているってのに、まるでおとなしく見えやしねえ。

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LOVE IS [NOT] DEAD. 目次へ

この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ

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