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おやじパンクス、恋をする。#196

「さあ、行きましょうよ。式が終わっちまう」

 雄大の方から言われて、何だとバカ、そりゃこっちの台詞だこの野郎、と思いながらも俺はホッとしてた。

 真新しい灰皿を盛大に汚すのも気が引けて、俺は吸い殻を持ったまま線香臭え車から降りた。

 この古臭いセダンに、リモートロックなんて洒落たものはついてねえ。雄大はガチャガチャ言わせながらドアをロックすると、一度会場の方を仰ぎ見るようにしてから、歩き出した。

「よお、俺吸い殻捨ててくるからよ」

 さっき俺らがたまってた喫煙所まで行こうと雄大とは違う方向に歩き出すと、「マサさん」後ろから声をかけられた。

「あ? 何だよ」

 踏み出した足を止めて言う。

「俺、マサさんと姉さんが一緒にいるの、初めて見ましたよ」

 ん? なんだそれ。そんなことねえじゃねえか。

「いや、お前と初めて会ったときに見てんじゃねえかよ、彼女の部屋で」

 バカ正直に答えたが、雄大はそれを聞いていたのかどうなのか、言葉の途中でフラッと振り返ると、スタスタと歩いて行っちまった。

 何だよあいつ。

 俺はそう思いながらぼんやり丸っこい背中を見てた。

 そのさらに向こう側でカズがおーいおーいと多分雄大に向かって手を降っているのが見えて、まあいいか、俺もさっさと行こうって小走りに喫煙所に向かった。

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この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ

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