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おやじパンクス、恋をする。#211

 それから数日間、事態は進展しなかった。

 雄大が消えて一週間近くになって、いよいよ俺も、警察に捜索願を出した方がいいんじゃねえかと思うようになっていた。

 彼女とは相変わらず毎日連絡を取り、何度か顔を合わせてもいたが、こういう状況であんまりイチャイチャする気にもなれず、お互いため息ばかりの短い時間を過ごすだけだった。

 今や梶雄大の件は結構な人間に知れ渡り、というのも俺や皆が情報を集めようと言い回ってるからなんだが、とは言えほとんどの人間は雄大を知らないわけで、情報を集めるつってもなかなか難しい。

 有力な話はまったく入ってこず、雄大がいまどこで何をしてるのか、誰にも分からなかった。

 今日、69には涼介タカボンが集合していた。皆それぞれこの件でモヤモヤしてんだろう、他に客がいなかったこともあって、自然と話題は雄大のことになる。

「ちょっと、さすがに嫌な感じだよな」俺が言った。

「家出だとしても、あのぽっちゃりくんなら二三日が限界だと思ってたけどな」ボンの表情も優れない。

「昔さあ、完全失踪マニュアルって本、あっただろ。あれ俺、読んだなあ」いやタカ、そういうの今いらない。

「まあでも、捜索願出したところで、大した解決にはならねえ気がするけどな」と涼介。なんでだよ、そんなことねえだろ。

「確かに、タカの話じゃねえけど、失踪なんてよく聞く話さ。そう本腰入れて探してくれるとも思えねえな」ボンが同調する。

「けど、このまま待ってるだけってのもよ」

「仕方ねえよ、お前はそれより、倫ちゃんの方を心配してろよ」

 カズに言われたのと同じような事をボンにも言われて、まあそうなんだけど、ただその姉ちゃんが元気になるには、雄大が無事で帰ってくるしかねえわけでよ。結局は堂々巡りだ。

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この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ

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