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おやじパンクス、恋をする。#201

 俺にしか分からねえだろう言い方を涼介がして、ああそうかと納得する。これはこないだ涼介が新品のスーツをオシャカにしたあのパーティの第二回、つまり梶商事がビジネス相手を探すためのあのパーティだ。

 俺が皆に説明すると、カズが感心したように「へええ」と言う。

「すげえなあ、てめえんとこの社長の葬式で、ビジネスの宣伝かよ」

 確かにそうだ。なんか一瞬で佐島さんが嫌いになる。なんだあのオッサン、仁義の分かる男だと思ったのに。

「大将の指示なんだろうな。ほら、見てみろよ」

 ボンが顎で示すので振り返ってみると、梶商事の社員があっちやこっちでチラシを配ってた。

 佐島さん一人ならまだしも、確かにこりゃ、上からそうしろと命令されたんだと分かる。

 佐島さんが指示した可能性もなくはないが、先ほどの歪んだ表情を見る限り、佐島さんもイヤイヤ従ってるんだろう。つうか、そうだと信じたい。

「嵯峨野、ゲスいなあ」カズが言うと、「だからそう言ってんじゃねえか」と涼介が同意する。

 頭の中にあの出目金野郎の顔が浮かんで、気分が悪くなった。

 経営不振の梶商事を立て直したんだかなんだか知らねえが、人の気持ちよりビジネスを優先するような奴、好きになれるはずもない。

「で? 行くの?」

 ボンが耳に挟んだタバコをくわえながら言う。

「誰が行くか、バカ野郎」

 俺はそのチラシを握り締めると、テント脇に用意されていたゴミ箱の中に投げ捨てた。

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この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ

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