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2023年度大学院入試受験記【東京工業大学 情報理工学院 数理・計算科学系】

2023年度東工大数理計算系の院試を外部受験しましたので、その体験を綴りたいと思います。

結論から言うと合格したのですが、自己反省の念を込めて失敗談を多く書いています。反面教師として参考にしてもらえたら良いです。


自己紹介

・関東にある国公立大学所属
・所謂コンピュータサイエンスを専攻
・GPAは2前半
・英語スコアはTOEIC 770で提出

勉強を始めた時期

別記事にて詳しく書きますが、院試に向けた基礎事項の勉強(教科書の通読等)を始めたのが11月、受験校を決めて過去問演習を始めたのが6月頃でした。過去問はもう少し早く始めると余裕が出来たかもしれません。

試験内容

筆記試験
筆記試験では3つの必須問題A(微分積分)、B(線形代数)、C(数理論理学?)から2問、9個の選択問題から3問の合計大問5つを解く試験になります。
配点は各大問が20点×5=100点、それに加えて外部英語のスコアが20点分
の計120点になります。
必須問題は3つのうちB(微積)が一番安定して解きやすい問題が出題されている傾向があるので微積を選択して後はお好みでAかCを解くと良いと思います。私は線形代数を対策していたので線形代数を選択するつもりでいました。
選択問題については過去問を数年分見てみて自分が解きやすいと思った科目を解くのが良いかと思います。
一般的には傾向が安定している数理最適化や形式言語理論がおすすめとされてきましたが、近年難易度が高くなっていたりするので(特に数理最適化は難化傾向)、4~5科目程度勉強しておいた方が安心できます。
外部英語のスコアはTOEICで600点程度あれば足を引っ張る事はないと思われます。もちろん高いに越したことはありませんが、700点以上取れたらもう頑張る必要はないです。

口頭試問(面接)
筆記試験終了翌日の昼頃に対象者と面接の試験日時が発表されます。面接日は2日間ありますが、こちらから日にちを希望できる訳ではないので注意してください。面接自体はオンラインで行われます(今後どうなるかは不明)。服はあまり派手すぎるものでなければ何でも良いでしょう。
面接の内容では志望動機や卒業研究、大学院進学後に取り組みたい研究などについて志望理由書を元に聞かれたりする感じだと思います。念入りな対策は必要ないですが、噂によれば「かなり深堀りされ、答えられず散々な面接になってしまった」という話があるので、適当なまま臨むのはリスクが大きいです。

試験対策

選択問題では数理最適化、数理統計、形式言語理論、(+プログラミング)を解くつもりだったのでそれに関連した勉強をしました。
いきなり過去問をやっても何も分からないと思うので、最初は参考書を読んで演習問題を解く感じで進めていきましょう。
参考書の類はケチって自大学で使った教科書を使ったので紹介しません(実際あんまり参考になりませんでした)。他にも数理計算系に合格された方が書かれたnoteがあるのでそちらを参考に選んでもらえれば良いかと思います。

数理最適化
数理最適化と言っても線形計画問題の範囲です。数年前までは双対定理やシンプレックス法、せいぜい相補性定理を知っておけば十分に完答出来るほど簡単でしたが、昨年から急激な難化を見せているため、正直おすすめ出来なくなってきました。東工大で使っている教科書で勉強すれば出題範囲は確実にカバーできそう、という程度です。

形式言語理論(オートマトン)
オートマトンをメインで扱っている参考書が多いですが、試験では言語理論の方(文脈自由言語など)もそれなりに扱います。なので言語理論も載っている本を使いましょう。

↓例えばこれとか

ポンピング補題(pumping lemma)で正規かどうかを判定させる問題は毎年出題されてます。ポンピング補題自体マイナーなのと、これを使った証明には少し練習が必要なので、ネット等で解説を読みながら演習してください。

↓参考にいくつか掲載しておきます

数理統計
最尤推定量が出せれば多分半分くらいは貰えます。後はチェビシェフの不等式を利用した証明や区間推定、検定等が出題されるようです。
初学ならまずマセマをやってからもう少し詳しい内容が扱われている本をやる感じでOKだと思います。統計学の本は世の中に山ほどあるので自分に合うやつを探してください(適当)。ちなみに統計検定の問題に似ているそうなので、統計検定の問題集でも良さそうです。

プログラミング
言語はCだったりJavaだったり(たまにLispなど)年によってバラバラな印象を受けます。上の3つの言語の仕様とアルゴリズムとデータ構造と称した本に掲載されている内容を一通り勉強しておけば大丈夫です。それでも分からない問題であれば捨てましょう。

それ以外には代数学(群論とか)、位相空間、微分方程式、確率論、コンピュータアーキテクチャが選択問題にあります。
確率論は統計学と密接な関係にありますが、年によって傾向が変わりやすいので、確率統計を勉強したからと言って解答できるかは分かりません。期待はしない方が良いです。

試験当日

筆記試験
試験開始は9時からで、自宅を7時前に出発したため眠気を感じながら試験を受ける事になりました。当たり前ですが前日は早く寝ましょう。
必須問題は当初の予定通り線形代数と微分積分を選択し、問題なく解答出来ました。しかし選択問題に入ってからが問題でした。
本来であれば数理最適化か形式言語理論を解く予定でしたが

数理最適化→凸集合の厳密な定義を知らず、まともに書けなさそうだったのでパス
形式言語理論→内容が全部文脈自由言語になっていたため解ける自信がなくパス

2問ともダメなケースは想定しておらず絶望しました。(自分が悪いのだけど)
数理統計は例年通り前半部が最尤推定の話だったのでとりあえず半分埋め、後2問はどうしようか焦りながら他の問題を見ているとプログラミングが簡単な事に気づき、これは何とか完答。
後は確率論の(2)までは簡単な計算だったので渋々選択、その後は分からず終了。

手応えとしては
・線形代数(60~70%)
・微分積分(90~100%)
・確率論(30~40%)
・数理統計(50%)
・プログラミング(100%)
と、あまり芳しくない結果になりました。
数理最適化はともかく形式言語理論はもう少し勉強しておけば取れたはずなのでかなりの痛手としか言いようがないです。

得点率は6.5~7割とボーダーライン付近、全体としてはそこまで難化している印象もない上、今年は志願者が例年より多かったため、落ちたかもしれないなと思いつつ自宅に帰りました。
ただ、既に他大学大学院(名大)に合格していたので落ちても進路未定になるリスク等も全くなく、むしろ名大に行く決心が出来て良いくらいに考えていました。

名大院試の話はこちらから↓

口頭試問
翌日昼頃に口頭試問対象者宛のメールが届いたため、大差で落ちてる訳ではなさそうと分かり少し安心。

本番ではやはり志望理由、卒業研究、取り組みたい研究について聞かれ、一通り説明したそれに対する質疑応答がありました。
掘り下げた質問もありましたが、志望理由や研究内容を予め整理していた事や、他大院試の面接も経験していた事もあって大体問題なく質疑応答出来たと思います。
研究についての質問で、一つだけうまく答えられなかった(知識不足)ものもありましたが、これについては素直に「勉強不足で分かりません。」と答えました。多用しすぎるのはダメですが、多少知らない事があっても適当な事を言って墓穴掘るよりはマシだと思います。
(多少詰まったとしてもフォローしてくれると思います。)

前述の噂を耳にしていたので少し不安になっていましたが、基本的に聞かれる事は一般的に院試で聞かれる事と大差なく、実際のところは何だかんだで先生方と楽しくお喋りしてきた位の感覚で終わりました!(^^)!

合格発表

合格してました。受かるとはあまり思っていませんでしたが、英語に助けられたのかもしれません。

しかし、偶々プログラミングが易化していなければきっと不合格だった事を考えると、やっぱり対策はきちんとしておく事に越したことはありません。少なくとも過去問を解いてみて、知識不足で解けなかったもの(難しい問題ではなく)については重点的に見直して、解けるようにしておくべきです。

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