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デヴィッド・ボウイの写真展in京都に行ってみた(+隠れた名曲紹介)

デヴィッド・ボウイが一時期(80年代初頭)京都に住んでいたのは、ファンの間では有名な話だ。自宅を構えていたわけではなく、あるアメリカ人の東洋美術家の家に滞在していたようだが。

当時、京都の正伝寺で焼酎のCM撮影のロケを行っており、「京都の飲み屋で目撃した」とか「喫茶店で中学生の英語の宿題を手伝った」といった都市伝説(?)も残っている。

その京都滞在時に、写真家の鋤田正義がボウイを撮影した「プライベートショットと、鋤田が2019年から3回にわたりボウイとの足跡をたどりながら京都を撮影した作品のコラボレーションで構成された写真展」(https://kyoto.wjr-isetan.co.jp/museum/exhibition_2206.html#event)に行ってみた。

場所は京都伊勢丹にある美術館「えき」。ボウイファンであり、かつ京都在住の私がこの展覧会に行かない選択肢はない。以下では写真展を観た感想を超簡潔に書いてみる。

ボウイ、京都に溶け込みがち

カルト的な人気を博したロックスターとは思えないほど、京都の町に溶け込みすぎている。

スターのオーラだだ洩れなのに、なぜか日本的な風景に馴染んでいるのが不思議だ。ボウイの気取らない雰囲気と、鋤田正義の撮影技術のなせる技か。

とりあえずタバコ吸いがち

この頃はドラッグ中毒からは脱していたようだが、タバコは吸いまくっている。そしてその画がとにかくかっこいい。

今は亡き(?)公衆電話ボックスの中でも、駅のプラットフォームでも、所かまわず吸っている。

嫌煙家諸氏は、ボウイがタバコを吸う写真(もしくは動画)をぜひ見てほしい。副流煙がどうのこうの、肺がんリスクがうんぬん、みたいな野暮なことは言えなくなるはずだ。

来場者、少なすぎ

日曜日の午後に行ったのに、観覧者が少なすぎる。スタッフが超絶ヒマそうだった。

天下のデヴィッド・ボウイも、もはや過去の人なのか。そう思うとなんだか寂しくなった。まあ、人が少ないおかげで心置きなく鑑賞できたのはよかったけれど。

でも、私と同い年くらいのカップルが一組、熱心に写真を観ていたのは収穫(?)だった。後追い世代のファンも全くいないわけではないらしい(しかも彼女さんはボウイのTシャツ着てたし)。

え?私はもちろん一人で行ってきましたよ。

個人的には、(京都とは関係ないが)『"Heroes"』のジャケットを撮影した際の写真が一番印象に残った。いろいろな動き・ポーズを何枚も撮る中で、たまたま例のポーズ↓をとらえた写真をジャケットに採用したらしい。

ボウイの隠れた名曲をなんとなく5曲紹介

こんな感じで写真展を楽しんできたのだが、これだけだと記事として味気ないので、超個人的な趣味でボウイの隠れた名曲を紹介したい。

1曲目は「Right」(『Young Americans』(1975年)収録)。グラムロックから脱却し、アメリカの黒人音楽に最も接近した時期の曲。とにかく渋い。


2曲目は「Stay」。『Young Americans』とベルリン期の傑作『Low』(1977年)の間に発表したアルバム『Station to Station』(1976年)に収録されている。

ボウイのキャリアの中で1,2を争うファンキーなアルバムだが、その中でも最もファンクな曲。こちらも激渋。


3曲目は「Slow Burn」(『Heathen』(2002年)収録)。

後期のボウイの楽曲ではトップクラスの名曲。終始得体の知れない緊張感が漂うが、これはアルバム発表の前年に発生した9.11が影響していると思われる(当時ボウイはニューヨークに住んでいた)。

客演しているピート・タウンゼントのギターもカッコよすぎる。


4曲目は「The Motel」。「アート儀礼殺人」という架空の事件を題材にした、ボウイのキャリアの中でもかなりダークなアルバム『1.Outside』(1995年)収録。

『1.Outside』の収録曲ではインダストリアルなサウンドの「Hallo Spaceboy」が有名だが、個人的にはこちらの方が好み。マイク・ガーソンの(泣きの?)ピアノが炸裂する。


5曲目は「Killing a Little Time」。ボウイの死後に発表されたEP『No Plan』(2017年)収録。生前最後のアルバム『★(Black Star)』と並び、文字通りボウイの晩年の作品である。

もともとはボウイの主演映画『地球に落ちて来た男』(1976)の続編的なミュージカル『ラザルス』のためにボウイが書き下ろした楽曲。「超アグレッシブなジャズ」ともいえる曲で、ヘビーなサウンドと歌唱に圧倒される。

ミュージカルの脚本が土台になっているとはいえ、晩年にこれほど強烈な楽曲を生み出してしまうのだから、才能の枯渇とは無縁だったのだろう。

「マイナーな曲」という制約をかけたせいか、思いのほか後期の曲が多くなってしまった。

ボウイの全盛期は、70年代のグラムロック期からベルリン期にかけてであるが、実は90年代以降の作品にも傑作がある。特に、『The Next Day』(2013年)と『★』(2016年)は文句なしに素晴らしい。

写真展の記事のはずが、曲の紹介がメインになってしまった。

最後に、ボウイの思想や作家性を「ガチ」で知りたいなら、こちら↓の本がおすすめ。2段組みで500ページ越えの超大作なので、筋金入りのボウイマニアでない限り読む気が起きないかもしれないが…。

著者の田中純氏(表象文化論が専門の東大教授)のボウイ愛、というより「ボウイの亡霊が憑依したのか」というレベルの解釈の深さには畏敬の念すら覚える。

もっとライトな「ボウイ入門」ならこちら↓がおすすめ。

京都あたりに住んでいるボウイファンの方は、一度行ってみたらいかがだろうか。

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