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ウィルスによって拡がるリモートワークに必要なコミュニケーションの備えをおさらいしてみる。

コロナウィルスの脅威が広がりつつある中、大手企業の自宅待機・外出禁止指示が出始め、在宅ワーク・リモートワークに切り替える企業が続出している。

総務省の情報通信白書によると、2019年の国内企業におけるテレワーク導入率は19.1%。2018年は13%台だったので、キャズム理論でいう16〜18%超えをしたことになる。

普及において難しいとされる、アーリーアダプターからアーリーマジョリティーに進むための壁を、数字上では越えた?ことにもなるが、これをさらに押し進めることになるのは、恐怖や不安、そして必要に迫られる状況であるということは、なんとも皮肉なものだ。

働き方改革ということが言われ始めたのも、ある若い社員の自殺が発端であったし、この数年間散々言われ続けてきたテレワーク・リモートワークの普及も、結局オリンピックではなくウィルスが発端ということを見ていると、「もう少しポジティブな形で普及しないものかなあ」と、半分あきらめのような目で見てしまうのは自分だけだろうか?

それと同時に疑問に思えてくるのは、こういう形でのリモートワークの普及は、果たして本当に普及と言えるのだろうか?
本当にこれは、働き方を変えるようなポジティブな普及につながるのか?

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コワーキングスペースの常連さんがあきれた顔で会議室から出てきたので、どうしたのか聞くと、コロナウィルスの影響で、会議参加者全員がリモート会議になったそうだ。
ただ、いざリモート会議を開いてみると、相手方がまったくリモート会議に慣れておらず、1台のPCに向かって複数人が話そうとしたりでまったく聞こえず、5分と経たずに会議は中断となったそうだ。

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おそらく今週、こういった風景が様々な企業で起こっているのではないか?いきなりリモートで自宅からやれと言われても、どうしていいか分からない人は多いはず。

PCやスマホはとりあえず持ってる。アプリも入れてみた。でも肝心の遠隔で複数人と話すマインドセットができていない。全員同じ部屋にいて伝わるあの阿吽の呼吸がいまいち掴み取れない。そして時折発生するネットワーク遅延や、もともと遅い回線速度も影響してか、この独特の間にドギマギしてしまう。

リモートでのコミュニケーションには、独特のエチケットや作法、そして気遣いが必要だと思う。

より良い会話を実現するための環境やシステムももちろん必要だが、それ以上に、相手とのスムーズな会話をしつづけ、お互いが安心できるような雰囲気を作るには、実際に会うのとはちょっと違う形で接するべきだ。

Route Designのメンバーは最初から日常的にビデオ会議をしているので慣れてきてしまっているが、改めておさらいしておくと:

目線の位置

PC、スマホ、タブレットなど、ビデオ会議をすると、机の上において話すため、画面上では上から目線になることが多い。
上から目線になると、顔の表情などが、本来会っている時と変わるため、意図しない形で伝わってしまうこともある。またいかんせん雰囲気は良くない。

PCでもスマホでもタブレットでも、自分の顔が映るカメラの位置は、なるべく自分の目線と同じに持ってくるべき。
ちなみに僕は、なるべくビデオ会議をするデバイスと入力するデバイスは分け、iPadをビデオ会議用に目線の高さに置きながら、手元のパソコンでメモを取る(もしくはその逆)という形でやっている。
その方が、会話を妨げずに作業ができる。
(資料を共有するときなどはデバイスを変える)
また、うまく目線に合わせるためにiPadを固定するためのデスク用アームや、白板を使うときに白板の近くに寄せられるように場所を調整したりもしている。


音声と騒音

ビデオ会議で最も大事かつ難しいのが声。映像は映ればなんとでもなるが、音は騒音とハウリング、そして同時にしゃべった場合のミュートがある。
1対1ならあまり問題ないが、複数人数だったり周りのBGMなどの騒音が大きいと難しい。
なるべくPC内蔵のマイクやスピーカーは使わずに、マイク付きイヤフォンか、会議用のBluetoothスピーカー&マイクを使って会話するべき。
マイクが騒音を拾うと、相手の声を遮って、相手側へ音を伝えようとする場合もあり、その間は相手の声が聞こえなくなる。
また、複数人数で同じ部屋に集まってしまうと、誰かが立てた音や声が、相手の音声とかぶってミュート状態が生じる。さらには複数のデバイスが同じ部屋にあるとハウリングも起こす。
なるべく騒音のない場所で、1人でしゃべる環境を作るべきだ。

ちなみに会議室で話す場合に僕らが使っているマイクはこれ。

1人で話す場合は、Airpods Proなどのbluetoothイヤフォンが、ケーブルに邪魔されず話せる上にマイク感度も良いので調子が良い。


1画面に複数人数はNG

よく複数人数が一つのPCを使って会話しようとすることもあるが、あれは会話が成り立たなくなる。
複数人数が同じ会議室にいる場合、そちらはその場でリアルに集まっているので盛り上がるが、相手は置いてけぼりになることが多い。
また、音声も、複数人数が同時に話し始めるので、相手にとってはうまく聴き取れないこともある。
もし同じ場に居合わせても、なるべく1人一台のデバイスを使ってビデオ会議の場に入るべきだ。その方が全員がお互いの顔を見ることができる。
その場合、同じ会議室にいる人たちのPCマイクが近いとハウリングを起こすため、僕らはその場合は、だれか1人のPCに高感度な会議用Bluetoothマイクをつなぎ、他の人のPCマイクはミュート状態にしている。
これで、画面上には全員の顔が映っているが、音声はだれか1人のPCからしか聞こえない、という状態になり、音声もスムーズに聞こえる。


会話のマナー

ビデオ会議でのコミュニケーションとリアルで会う場合とでは、どうしてもしゃべるタイミングがずれたり、カメラの位置関係からか、いまいちどこを見てるのか分からなかったりすることから、会話にぎこちなさが生まれてしまう。
また、普通にしゃべる感覚で相づちを打ったりすると、その間の相手の音声が聞こえなくなったりして、さらに会話が成り立たなくなる(お互いイヤフォンをしていれば緩和されるが)。
なるべく相手が話している間の不要な音声は入れないようにし、その分、相手が不安にならないよう「聞こえている」ということを伝える上でも、大きく頷いてみたり、身振りを入れた会話をしたりすることが大事。無表情も画面上の方がより無表情に見えやすい。表現をいつもより大きく振れ幅がある状態のほうがいい。
また、相手が会話を挟む余白をうまく入れたり、相手に話を振ることも必要。これはお互いが気にかけることで、さらにうまくいく。
リアルで会うのとは少し違った形での“気遣い”が必要なのだが、普段あまり意識していなかった“優しさ”が必要なのだと思えばよいのかも。


ベースとなる日々のコミュニケーション

ただ、こうしたお互いのエチケットも、お互いの癖や口調、性格を知らないうまく機能しない。
この人は口調がゆっくりとか、こういう仕草の時はなにか伝えたい時だとか、少し間を置いて話し出すことが多いとか、興味がある時はこういう目をするとか、そういうことが画面越しからでも充分読み取れるようになるには、日々のコミュニケーションが多くないと分からないし、信頼を築けていないとうまく成り立たない。
当たり前の話なのかもしれないが、日々チームで会話をする際にも、注意深く観察することが、遠く離れたコミュケーションをする上でも役立つのだと思う。

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もちろん完全リモートワークで有名なソニックガーデンさんのように、専用アプリまで開発しちゃったり日々のコミュニケーションのアップデートに余念がない人たちもいるので、ここに書いている話はあくまで自分たちだけの方法。もっと良いやり方をしている人たちもたくさんいると思う。あくまで参考として読んでいただければと思う。

しかし、どうせなら、今回の騒動が収束した後も、日本のワークスタイルがよりポジティブに変化するよう、コミュニケーションのマインドセットが形作られるといいなと願っている。


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