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さび止め塗装がされている鋼材にローバルを塗っても良いですか?

「すでにさび止め塗装がされている鋼材があります。ローバルを使いたいのですが、その上からローバルを塗装しても良いですか?」

頂いた上記の質問にお答えいたします。
「ローバルを一般的なさび止め塗装の上から塗っても、ローバルの強力なさび止め効果は発揮されません。さび止め塗装は剥がしてからローバルを塗ってください。」


ローバルは鉄の上に直接塗ることでさび止め効果を発揮します。

鉄と亜鉛がくっついていると、鉄よりもさびやすい亜鉛が鉄の代わりにさびて鉄を守ってくれます。これを犠牲防食作用と言います。

鉄と亜鉛が直接接触して、犠牲防食作用が働きます。さび止め塗装があると、鉄と亜鉛がくっついた状態にならないので、犠牲防食作用は働きません。つまり、さび止め塗装の上からローバルを塗装しても、ローバルの強力なさび止め効果を得ることはできません。

百聞は一見に如かず。さび止め塗膜の上からローバル塗ったら、どうなる?!やってみよう。

以下の3つの塗装鋼板の比較実験を行ってみます。

  • 一般用さび止めペイントを塗装した鋼板

  • 一般用さび止めペイントを塗装した鋼板にローバルを塗装したもの(間違った塗装の仕方をした鋼板)

  • 鋼板にローバルを塗布したもの(正しい塗装の仕方の鋼板)

一般用さび止めペイントは、JIS K 5621に該当する塗料です。とりあえずのさび止めとして、一般用さび止めペイントが塗装されていることを想定しています。一般用さび止めペイントは上塗り塗装を必要とする塗料です。比較として、一般用さび止めペイントだけ塗装した板を載せていますが、正しい使い方ではない点をご注意ください。

塩水噴霧試験 ふくれが発生。そこから赤さびも発生。

塩水噴霧試験(SST)を行ったら、写真のようになりました。

塩水噴霧試験の実験結果 間違った使い方をするとふくれが発生

一般用さび止めペイント(写真 左)は塩水噴霧試験には強くないようでかなり早期にさびが発生しています。
ローバルの間違った使い方(写真 中)は塗膜にふくれが発生し、そこからさびが発生しています。
正しい使い方をしたローバル(写真 右)は健全です。

複合サイクル試験 

複合サイクル試験(CCT)を行ったら、写真のようになりました。

複合サイクル試験の実験結果 間違った使い方をするとふくれが発生

一般用さび止めペイント(写真 左)は環境遮断のできないカット部からさびが発生しています。時間経過によって、カット部のさびが広くなっています。
ローバルの間違った使い方(写真 中)はカット部を中心に塗膜にふくれが発生しています。
正しい使い方をしたローバル(写真 右)は健全です。

屋外暴露試験ではカット部からさび発生。

屋外暴露試験を行ったら、写真のようになりました。

屋外暴露試験の実験結果 間違った使い方をするとカット部から赤さび発生

一般用さび止めペイント(写真 左)は環境遮断のできないカット部からさびが発生しています。30μmと薄膜であるため、8カ月経過したら、平面部からも赤さびが発生し始めています。
ローバルの間違った使い方(写真 中)はカット部がさびており、犠牲防食作用が働いていないことがわかります。
正しい使い方をしたローバル(写真 右)は健全です。

実験結果のまとめ、正しい使い方をしないと、ローバルのさび止め効果は発揮しない。

結果をまとめたのが下の写真になります。

ローバル、間違った使い方と正しい使い方の比較

間違った使い方と正しい使い方を比較すれば、正しい使い方が良い結果であるのはご理解いただけると思います。

ローバル塗装で早期さび発生!?さび止め塗装の上から塗るという間違った使い方をすると赤さび出ます。

ローバルが塗られているのに赤さびが発生している写真のような事例があります。このさび発生の原因は、一般的なさび止め塗装がされている上からローバルを塗ってしまったからです。

一般塗装の上からローバルを塗装して、赤さびが発生してしまった事例

写真は溶剤貯蔵タンクの溶剤注入口です。既製品が使われているので、さび止め塗装がされています。電気工具を使って塗膜を剥がすのは溶剤注入口なので危険、手作業で塗膜を剥がすのは手間ということで、ローバルをそのまま、さび止め塗装の上から塗ってしまったのです。
実はここ、恥ずかしながら昔のローバル工場です。正しい使い方をしているところでは、赤さびは発生していませんでした。しかし、さび止め塗装の上からローバルを塗ったここは赤さびが発生してしまいました。

ローバルの強力なさび止め効果は発揮されず、早期に赤さびが出てしまいます。さび止め塗装、さび止め塗膜は剥がして鋼材に直接ローバルを塗ってください。

記事掲載の実験結果はひとつの実験結果にすぎません。同様の実験を行っても同じ結果が得られるとは限りません。JIS K 5621 一般用さび止めペイントは本来上塗りを必要とする塗料だと思います。正しい使い方は、塗料メーカーの製品説明書をご確認ください。

(記事担当:MTMTH)

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(おまけ)

間違った使い方でもローバルを塗った方がまし??

間違った使い方でもローバルを塗った方がまし?!
本来のローバルの性能は出ていません。

今回行った実験の結果を一般用さび止めペイント(写真 左)と一般用さび止めペイントの上からローバル(間違った使い方)(写真 右)を比べると、塗らないよりは塗った方がましという見方もできます。
一般用さび止めペイントは環境遮断でさびを止めます。一方のローバルは犠牲防食作用でさびを止めます。しかし、強くなくてもローバルも環境遮断効果があります。一般用さび止めペイント+ローバルの方が環境遮断効果は高くなるので、一般用さび止めペイントだけより結果は良くなったと考えます。一般用さび止めペイントの上にローバルを塗っても効果があるとは考えないでください。

繰り返しになりますが、長期間さびを止めてこそのローバルなので、鉄に直接ローバルを塗ってください。

さび止め塗装が剥がせない時はどうすれば??

残念ながらローバルはお使いいただけません。環境遮断タイプの塗膜も重ね塗りをすると、防錆効果が上がります。環境遮断タイプの塗料を重ね塗りする手法が一般的と思います。

一般用さび止めペイント、重ね塗りした方が防錆効果がある。

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