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どんとこい超常現象

怖い話や不思議な話なんかが好きだ。

子供の頃、「心霊特集」とか「超常現象」とかいった文言を新聞のTV欄で見つけると、嬉しくて小躍りしたものだ。
何事にも控えめで、冷蔵庫にプリンを見つけた時ぐらいしか小躍りしない、おとなしい肥満児だった僕が躍ってしまうのだから、その喜びの大きさがお分かりいただけただろうか。


昔は、テレビでこの手の番組が沢山放映されており、番組の改編時期ともなると、2時間の特番がよく放送されていた。
人跡未踏の歩きやすい洞窟に探検隊が潜入したり、デカい数珠持ったお坊さんが、何故か泣きながらユラユラしてる人に「この人から出ていけー!!」と怒鳴ったり、駆け出しアイドルと霊能者が心霊スポットに行ってカメラの調子が悪くなったりと、手に汗握る迫真の番組の数々に、肥満児の僕は目を輝かせ、胸躍らせ、プリンを食べる手も止まるほどだった。

また、この時期は大体、どこかのテレビ局の屋上でUFOを呼んでいたので、急に呼び出しがかかるUFOも大変だったと思う。
最低でも、せめて前日ぐらいに連絡を入れるのが一般的なマナーとされているので、おそらくあの時期に、日本はUFOから愛想を尽かされてしまったのだろうと思う。
悔やまれてならない。

当時のこういった番組の中でも、とりわけ人気の高かったのが「あなたの知らない世界」という番組で、今ならマツコ・デラックスあたりを司会にして、なんとかリメイクしてくれないものかと思う。

この「あなたの知らない世界」をはじめ、怪談披露系の番組で、メキメキと頭角を表していたのが、僕が敬愛してやまない稲川淳二さんである。

当時の僕にとって、淳二さんは「たけし軍団の人」ぐらいの認識しかなく、ストロング金剛なんかに投げ飛ばされてるようなイメージの人だった。
が、しかし、時代を経るにつれ、淳二さんはその類いまれなる才能をいかんなく発揮し、怪談の第一人者としての名声をほしいままにした。

20歳を超え、いっぱしの淳ジーニストになった僕は、近所のTSUTAYAに足繁く通っては、淳二さんの怪談作品を軒並みレンタルした。
エロいのも軒並みレンタルした。

シャイだった僕は、店員に
「またコイツ、こんなのばっかり・・」
と思われるのが嫌で、レジではエロいのを一番上にして淳二さんを下にして持っていったものだ。
エロいの・淳二・淳二・エロいの
といった具合に、淳二さんに大変申し訳なく、かつ男らしくない借り方をしたのも、今となっては良い思い出だ。

近所のTSUTAYAには、淳二さんのラインナップも、エロいののラインナップも乏しかったので、幾つかのTSUTAYAに遠征して借りる事もしばしばだった。
それゆえ、延滞料もばかにならず、生活はいつも苦しかった。

そんな淳ジーニストの僕が、満を持して参戦するようになったのが、怪談ナイトという、淳二さんの怪談ライブツアーである。
淳二さんが全国津々浦々に怪談をお届けする、淳ジーニストとしては夢のような、見逃せないライブツアーだ。

魅惑のライブ内容は、
・長編の怪談
・中編の怪談
・淳二さんによる心霊写真解説コーナー
・ほっこり地元ネタや客イジり
など充実の内容だった。

物販も怪談DVDやステッカー、白装束など、淳ジーニストならずとも垂涎の、痒いところに手が届く魅力的なラインナップで、ついつい財布の紐もゆるくなろうというものだ。

そして本題の怪談であるが、淳二さんの怪談は、そこら辺の素人が付け焼刃で話すような、ただただ怖いだけの単純な代物ではない。
淳二さんのそれはウィットに富み、時にハートフルに、時にほっこりと、時に鋭くエッジをきかせてくる。
加えて、淳二さんは我々オーディエンスを試すかの如く、よく登場人物の名前を間違う。

それまでヨシオとタカシしか登場人物がいなかったのに、唐突にマサオが登場するといった寸法だ。
しかも終盤だ。
当然、観客もザワつくが、それしきの事では淳二さんは動じない。
「なんだねぇ、今日のお客さんは粋じゃぁないねぇ」
なんて、淳二さんはおそらくそうやって僕らを試しているのだから、はかり知れない大人物である。
「やだなぁ、怖いなぁ」
なんて言って動じてるうちは、まだまだベスト淳ジーニストには程遠いのである。

ちなみに、ここ5〜6年は怪談ナイトに参戦していない。
大ファンであるTHE YELLOW MONKEYが再結成してしまったのだから、仕方ない。
予算が無いのだ。

しかし今年こそは、怪談ナイトに参戦して、淳ジーニストとして一回り大きくなってやろうと思う。
いつか、ベスト淳ジーニストになれるその日まで。

待っていろ心霊!
どんとこい超常現象!











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