20240327 戦場のメリークリスマス

坂本龍一さんが昨年の今頃亡くなったのだということで戦場のメリークリスマスを見た。

観客に語りかけてくるようなものではなかった。戦争という過酷な状況、敵同士という枠組みの中での奇妙な関係性の映画だと思った。
ハラ軍曹とローレンスは互いを興味深く思っていたようだった。敵同士であることを了解しながらの、奇妙な心の交流。わざわざ「個人を恨みたくはない」と言わねばならぬほどにはローレンスにはハラやその他日本兵へのわだかまりがあったのだろう。戦争である以上ハラの側も同様だったかもしれない。そういったなかでの一言で言えない親愛が「メリー・クリスマス」だったように思う。

セリアズとヨノイ大尉にも奇妙な交流が見てとれた。ヨノイ大尉がセリアズを気に入ったのは最初から明白だったけれど、僕はその意味をはかりかねていた。
終盤に銃砲に詳しい捕虜を特定し情報を引き出そうとやっきになるあまり、ヨノイ大尉が暴走する。融通の効かない、古典的な日本の軍人の有り様だと思った。ヨノイ大尉は暴走の末捕虜長を処刑しようとする。そこでセリアズが前に進み出て、一悶着の末ヨノイ大尉を抱擁し頬にキスをする。
びっくりした。僕もヨノイ大尉みたいな顔になっていたことだろうと思う。
最初から同性愛がモチーフにはあったので、そういうことだったのかなと事後に納得した。でもあんまりよくわからない。

何か言いきられると嘘っぽい。世界はあいまいで、たいてい「そういうものだ」という実感くらいしか得られない。
この映画はそういう姿勢だったのでとても気に入った。

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