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2024/3/4 青空の下で弾き語り

 今日も今日とて恋人が仕事に出かけていく音で目覚める。
 15:00〜友人らとオンラインゲームをすることになっているが、それ以外に用事はない。お金も底をついてしまったので、どこかに出かけることもできない。でも『空は快晴 鳥達は鳴いて 花が咲き まるで春の祭典』とばかりに青い。
 仰向けに寝転び、下に広がっていく青空をカーテンの裾から眺めていると、幼い頃にこんな風景を見た気がしてくる。ベビーベッドにさすひだまり感とでもいおうか。日差しに目をとじ、ぬくもりを感じる。当たり前だけどあたたかい。空の向こう側、雲の上にいったかのような心地だけど、眠くはない。
 ふと、河原でギターを弾くことを思いついた。ひだまり感繋がりだろう。
 家から自転車で5分のところに河原がある。野球ができそうなくらい広かったはずだ。その横でサッカーをしていてもまだ広い。確か椅子もあったはず。
 僕は急いで、朝ごはんを食べ、ギターを持って外に出た。
 ギターを背負っていると背筋がピンと伸びる。ギターバッグの中に確かにあるアコースティックギターを背に感じながら、自転車を漕ぐ。すぎていく人が一瞬自分の少し後方を一瞥するのが誇らしかった。
 河原に着く。風が強いが、寒くはない。段々になっている河原は、白く枯れた草原がどこまでも広がり、川の水面は日差しを反射してゆらめいている。
 ギターを弾いて歌っていても違和感がないTHE ひだまり感を、ギターのチューニングと声出しをしながら味わう。ランニングや自転車で過ぎて行く人の視線がほのかな緊張感をくれる。
 好きな歌を歌って、自分の曲も歌った。ドラムを流しながらやっているのもあって、セッションをしているみたいだ。
 いつか屋外でアコースティックバンドをやりたいという密かな夢の一部が叶ったようで楽しい。
 水分補給はお金がないので、家で汲んできたペットボトルの水のみ。一曲ごとに飲んでいたらすぐになくなってしまった。
 しかも2時間ほどやったところで雨が降ってきて、仕方なく引き返す。ちょうど15:00近くなっていたので良かった。
 お昼ご飯を軽く食べてからオンラインゲームをする。四時間ぶっ通しでやったが楽しかった。勝敗で言えば負けることが多いのだけど、それでも一回一回が会話のタネになる、誰に話しても面白さを再現できないその場限りのライブ感は楽しい以外になかった。
 終わるのがさみしいのがうれしかった。
 帰ってきた恋人と夕食を食べ、恋人がゲームをするのを見たり、自分の用事をして過ごす。
 ゲームを全く知らなかった恋人が、僕がしたゲームへの質問に答えてくれる。説明の仕方がゲームをしている人のそれでうれしくなった。3Dのカメラ操作が不慣れだった彼女が、グリグリ無意識に見やすい方向に動かしている。マップを開いている。次に何をするべきかわかっている動き。そのどれもがうれしい。何より楽しんでくれているのがうれしい。なんと深夜2時になっても、キリがいいところまでやりたいとボスを倒すまでやっていた。もうそれはゲーム好きのそれじゃないか。
 明日はお互い10:00〜予定があるというのに、電気を消した後も話は尽きない。恋人が返答がおぼつかなくなったので握っていた手を離して頭を撫でてやる。
 今日一日中僕の胸にはずっとひだまり感があってくれた。
 明日は雨らしい。

弾いたところ。黄色いイスに座った。
『』のところの引用元

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