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地元エッセイ(2)父との思い出はロックミュージック

 

僕はいろんな音楽が好きだ。

もちろん自分が一番好きなジャンルといったものはあるけれど、どのジャンルにもあまり嫌悪感がない。

 

これは父の影響だ。


 先日、ふとした会話に出てきたこともあって久しぶりにエルレガーデンの『金星』を聴いた。すると中高生のときの夏の夜がするすると蘇ってきた。

 あの頃父に好かれたくて、構って欲しくて、父の車内で流れる好きでもない曲を「この曲いいね!」と言っていた。

「じゃあライブに行くか」と言われ、内心嫌だったけれど笑顔で「行きたい」と嘯いた。(エルレではない)

 

実際に観に行ったライブ

はエルレガーデンではない。その頃は活動を休止していた。

 初めて観に行ったのは『ANGRY FROG REBIRTH』というバンドのスリーマンライブだ。申し訳ないが曲が始まるまでは音楽初心者、ライブにはなかなかキツいものがあった。(結局好きになって何回かライブには行くことにはなるのだけど)音は大きい、知らない人ばっかで狭い。

 早く帰りたいと思った僕の前に現れた彼らは、僕の気持ちなんて知るわけもなく、演奏を始める。

 衝撃を受けた。

 生で聴いた初めての音楽は聴くというより浴びるといった表現が近い。それぞれの楽器の音の粒が塊になり、波のようにリズム良く体に押し寄せていく。

 曲終わりのオフショアにはさみしさすら感じた。

 知らない曲だった。それでも拳は周りに合わせてかかげられていて、体はリズムに揺れ、心は舞い踊っていた。

 

そうして僕はライブにハマった。


 父親にいろいろなアーティストを紹介してもらった。いろんなアーティストのライブに連れて行ってもらった。

 僕はライブに行っていたころはいわゆるJRock戦国時代と言われていて、その頃に出ていたアーティスト
『THE ORAL CIGARETTES』
『BLUE ENCOUNT』
『KANA-BOON』などは10回以上観に行った。

 フェス『MONSTER Bash』やサーキットイベント『SANUKI ROCK』には毎年行っていたし、そこで初めて自分の好きなジャンルやアーティストを発掘した。

 

社会人になって、

好きなバンドのライブにすら行けなくなってしまったし、新しい音楽を取り入れることも減ってしまった。あってもインターネットで知ることやサブスクリプションサービスのオススメ機能で見つかることがほとんどだ。

 また生の音を浴びたいものである。

 実は僕自身も歌を作っている。

もちろん好きなアーティストや最近聴いているものぽくなることがある。

 それがなぜで、どこをどういうふうに捉えて、どういうふうに自分が料理したのかを探すのが楽しい。脳のブラックボックス、無意識にメスを入れる感覚はゾッとするタイプの快感がある。

 歌はそれらが、歌詞、メロディ、弾き方、曲の構成、メッセージと多くの部分に散見されるので、どれほど時間をかけても、ブラックボックスの全てを知ることはできない。

 自分で沼を作れるわけだ。

 そして、その沼の中を泳いでいてたまにあの頃を思い出すことがある。

 父に合わせて音楽を聴いていたこと、田舎だったのもあってライブ会場まで3時間ほど車で走らなければいけなくて、その間たくさん父と音楽の話をしたこと。そして車内に流れていたロックミュージック。

 それらが自分を形作っているという事実は、あたたかいたしかなよろこびさがある。

 

思えば父と話す機会も減った。


 10代の前半まで憧れ、後半で失望し嫌悪しつつも、20代で許せてしまった父。

 少しずつ種の正体がわかっていくみたいで、父と話すのは少しばかり嫌悪感はあるけれど、時折用事を見つけては電話をかけるようにしている。

 また父の車でライブに行きたい。

 余談

 初めてライブを観に行った『ANGRY FROG REBIRTH』は解散してしまった。好きだったのに新譜を追えず、ライブに行けずにすみません。またどこかであなたたちの音楽に触れられたらうれしいです。

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