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〔ネタバレ無し〕朗読劇・幻燈の獏 感想

 8/13、8/14に行われた朗読劇『幻燈の獏』という作品を配信で見ました。

 もうね、長い映画を観たあとのような冷めやらぬ余韻でいっぱいです。さきほど観劇を終えて現実に戻されたばかりで、興奮が抑えられないのですが…その高揚感のままに感想を書いていこうと思います。

 かの有名な江戸川乱歩の作品と世界観をベースに展開されるオリジナルストーリーは妖しくも美しく、そして華やかながらどこか暗い影を随所に落とし続ける……私が思い描き、想像していた乱歩の小説から感じる雰囲気・空気感を現した作品でした。
 そういう肌で感じる部分だけでなく、『怪人二十面相』に始まり『蜥蜴』やら『蜘蛛』やらと乱歩好きの知識欲を刺激し、脳にまで乱歩感を流し込まれるような脚本なんですね。

 物語としても、本格ミステリというより乱歩の得意分野であった〝見たくはないけど見てしまいたくなる恐怖〟や異常な偏愛、狂気、それらが生む不思議で幻想的な世界……故に今がどっちの世界か迷ってしまいそうな危うさを感じる展開でして……。

…いやもう江戸川乱歩だよ、やべえし尊い(突然の語彙力紛失)。

 なので、乱歩好きは絶対に観て欲しい朗読劇です。

 …と、乱歩好きの方々に推してきましたけど、江戸川乱歩とかコナン君の元ネタってことくらいしか知らんっていう方でも楽しめる舞台だと思います。

 言うて、私が乱歩作品を読んだのは十数年前とかなり前のことでして細かいことは勿論「読んだことあったっけ?」って忘れている作品もあります(10ページほど読んだところでコレ前読んだやつじゃんなんてザラにある)。
 そんな私が元ネタを全部把握できているかと言えばそんなことはなく。むしろ元ネタを分かってない方が圧倒的に多いと思うんです。そんな中でも、物語の展開は息つく暇ないほど常に緊張感があり、胸が締め付けられたり恐怖したりと絶え間なく心が揺さぶられ、右肩上がりでクライマックスに向かっていく展開は誰でも面白いと感じると思います。

 また、生演奏で表現される空気感も素晴らしく、単純な「音」だけでは表現しにくい静かに迫り来るような気配、這い寄るうごめく何か…そういう目では捉えられない不気味さに心を絡めとられている感覚を味わいましたね。
 恐怖も張り詰めた緊張感も、音楽や音を起点に自然と支配されている…というか下地を作られている感じでしょうか。
 おそらく、配信よりも現地で観劇していた方々はより強く感じていたのではないでしょうか。

 聴覚からの情報なのに物語が立体的に感じ、キャラクターが動いているかのように錯覚するのは演者の力でしょうね。
 もちろん、前述した生演奏もそうですし照明の当て方、衣装、椅子などのひとつひとつが立体的に見せるための下地であり、それらが出来上がっているからこそなんですが……、声が乗っかることで解像度がえらく上がるんですよね。

 朗読劇なんだから声があって当たり前だろって言われるかも知れないけど、下地を踏み台にして輝くのではなくて下地も含めて魅せている感じの舞台だったんですよね。全員が主役のお子様ランチみたいな。……なんか例えが間違っている気がするけど、そんな感じなんです。どこかが欠けても成り立たない絶妙なバランスでした。

 1日目と2日目では演じるキャストが変わるのですが(一部キャストは両日同役)、同じキャラクターで同じセリフなのに言い方や仕草で受ける印象が全く異なるという発見が興味深く面白かったですね。

 例えば、甘粕正彦という役。1日目には木島隆一さんが演じられているですが、30代の全方位に優しい男という印象を受けるんですよね。偉い人なのに物腰が少し柔らかく、こちらが下手な話し方をしても黙って聞いててくれそうな雰囲気。
 一方で森久保祥太郎さんが演じられた甘粕は、40代前半~半ばくらいでその年齢の男性にある色っぽさをほんの若干滲ませてる程度……なのに支えたくなってしまうような、そんなカリスマ性を感じるんですよね。
 ……ベクトルは違うんだけど、きじ粕も森粕もどっちも貢ぎたくなる不思議。

 他にも、喋っていない時に目で演じられている方もいらっしゃったり、衣装の小道具を存分に使って盛り立てていたり、姿勢や目線や手で表現していたり、演者によって魅せ方が異なるのでキャラの個性が大きく変わり見ていて楽しかったですね。

 キャストが入れ替わるタイプの劇を見るのは初めてではありませんが、こうもガラッと変わるのは初めて見たかもしれません。
 私の個人的な感覚ではありますが、同じ内容であるはずなのに2日目の方が圧倒的に「見やすい」と感じるんですよね(見やすいからと言って不気味さや妖しさが軽減されているわけではないです)。1日目はクセと緩急を感じ「油断ならない」と自然と肩に力が入りました。

 こういう感覚の違いが何故起きるのか自分に問いかけながら紐解いていくのも楽しいですし、演者のフィルターを通したキャラの味付けに対して新たな解釈を得られる面白さも体感できて、両日分買って良かったと本当に思っています。
 どっちも好きですし何度も見返したい。……ということで円盤化はよ。

 最後に。

 私の推しである速水奨さんが期待を裏切らないマッドサイエンティストっぷりをこの上なく発揮してるし、功績を褒められて(褒めてない)嬉々として喋る感じとか狂ってて最高だし、白衣が似合ってるし、13日配信分のキャストトークでマイク抜けなくて困ってる姿が可愛すぎて本編との落差で風邪ひきそうになるし、14日配信分の舞台からはけるときに白衣をファサ…って靡かせるのかっこよすぎてお盆の疲れなんて吹っ飛ぶので是非見てくれ見て下さい。


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