ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調, Op.92

00:00 I. Poco sostenuto - Vivace
12:28 II. Allegretto
22:04 III. Presto, assai meno presto
30:19 IV. Allegro con brio

フルトヴェングラー指揮 ベルリン・フィル 1943年10月31日&11月3日 ベルリンでのライヴ録音

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

交響曲第7番 イ長調 作品92(こうきょうきょくだい7ばん イちょうちょう さくひん92)は、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンが1811年から1812年にかけて作曲した交響曲。リズム重視の曲想から現代においても人気が高く、演奏される機会が多い。

概要
第5番や第6番におけるさまざまな新たな試みの後に、再び正統的な手法による交響曲に回帰した作品である。

ワーグナーは各楽章におけるリズム動機の活用を指して、この曲を舞踏の聖化 (Apotheose des Tanzes) と絶賛している。その一方で、ウェーバーは「ベートーヴェンは今や精神病院行きだ」との言葉を残し、ワインガルトナーは「他のいかなる曲よりも精神的疲労を生じさせる」と語っているなど、音楽家からの評価は様々である。

作曲は1811年から1812年にかけて行われ、初演は、1813年12月8日、ウィーンにて、ベートーヴェン自身の指揮で行われた。同じ演奏会で初演された『ウェリントンの勝利』の方が聴衆の受けはよかったとされるが、それでも初演は成功であり、第2楽章はアンコールを求められた。

演奏時間
古楽やピリオド楽器の研究の影響がベートーヴェンの演奏にまで影響し始める以前の、伝統的なモダン楽器による演奏では第1・3・4楽章のすべての繰り返しを含むと約42分とされる。

ただし、すべての繰り返しが行われる演奏は少なく、その結果40分弱の時間で演奏されることが多かった。カラヤン/ベルリン・フィルなどでは35分を切る時間で演奏されている。近年は、かつては「速すぎる」と考えられていたベートーヴェンのメトロノーム指示と作曲当時の演奏習慣を尊重する傾向が強まり、全て繰り返しを行っても40分を切る演奏も増えている。

編成

第3番のような拡張されたホルンのパートはなく、第5番や第6番のようにピッコロやトロンボーンを動員することもなく、第9番のような合唱はもちろん使用されていない。また書法も第3番や第9番に比べて明瞭であり、古典的な管弦楽といえる。

第8番の初演で一緒に演奏された際は、木管楽器が倍、弦楽器はヴァイオリン各18、ヴィオラ14、チェロ12、コントラバス7、さらに出版譜に無いコントラファゴットも2本加わるという当時としては巨大な編成であった。

曲の構成
古典的な交響曲の形式に従うが、緩徐楽章(第2楽章)では通例「遅く」などと指定されるところを「やや速く」と指定されている。また、全曲を通してリズムが支配的であり、快い速度で全曲を駆け抜けていく。

第1楽章
Poco sostenuto - Vivace イ長調 4分の4拍子[注 1] - 8分の6拍子 序奏付きソナタ形式(提示部反復指定あり)。
トゥッティで四分音符が強く奏され、オーボエがソロで奏でる。そして、16分音符による長大な上昇長音階が特徴的な序奏の後、付点音符による軽快なリズムの音楽が始まる。第1主題はフルートの楽しげなソロによって提示される。そこから付点音符の動機が全曲を通して反復されるため第2主題との対比は少ない。軽快なリズムが主題部展開部再現部すべてを支配しておりワーグナーの評が示す通りである。展開部は弦と管の対比応答が目覚ましい。コーダでは22小節に渡って持続される低弦によるオスティナートが、混沌としたままppからffまでを導き、最後に、弦と管が応答を繰り返したのち一体化し終結になだれ込む。曲を締める音は主音のド(イ音)ではなく第3音のミ(嬰ハ音)である。
途中弦楽器が弾く主和音(ラド#ミ)と木管楽器の下属和音(レファラ)が並走する285小節は19世紀末から転調の誤りと捉えて修正される事があり、20世紀初期に出版されたオイレンブルクやペータース社のMax Unger校訂版スコアでも小節後半で弦楽器の音程を修正している。

第2楽章
Allegretto イ短調 4分の2拍子 複合三部形式。
初演時に聴衆から特に支持された楽章。シューマンはこの主題を基に変奏曲を遺しているし、ワーグナーはこの楽章をさして「不滅のアレグレット」と呼んでいる。複合三部形式の主部は変奏曲の形式であり、かたくなに同音が反復されつづける静的な旋律でありながらも、和声的には豊かに彩られている。最初の三小節でホルンと木管が奏でる印象的な和音のあとに、弦楽器で主題が奏でられ、その後に哀愁を帯びたオブリガートが絡む変奏が続く。後半をリピートした主題を弦楽器の低音の提示を含めて四度演奏し、最後に全楽器によるフォルテに至るのは第九の歓喜の旋律の提示展開と同じである。
「アレグレット(少し速く)」は、この曲の全楽章の中では最も遅い速度設定である。

第3楽章
Presto, assai meno presto ヘ長調(トリオはニ長調) 4分の3拍子 三部形式。
形式的には三部形式となっているものの、トリオは2回現れ、ABABAの型になっている。2回目のスケルツォの途中には、強弱記号をp(ピアノ)やpp(ピアニッシモ)に落とすよう指示がある。コーダでは、第9番の第2楽章と同様にトリオが短く回想される。

第4楽章
Allegro con brio イ長調 4分の2拍子 ソナタ形式(提示部反復指定あり)。  
熱狂的なフィナーレ。第2楽章同様、同一リズムが執拗に反復され、アウフタクト(弱拍)である2拍目にアクセントが置かれている(現代のロック、ポップスにおけるドラムスの拍子のとり方と同じである)。第1主題は後年の資料研究からアイルランドの民謡「ノラ・クレイナ」の旋律からとられたとされている。この第1主題は主和音ではなく属七の和音で始まる。第1楽章同様、コーダでは低弦によるオスティナートが演奏される。
121小節(※それまでの括弧を通しでカウントしない場合)から第一括弧を5小節間弾いた後のリピートについては不備があり、初版、旧全集版含む19世紀中の出版譜では5小節と13小節のどちらに戻るか示されていなかった。20世紀に入ると5小節にサイズの小さい"S"、第一括弧の125小節には"Dal Segno"を補う事が通例となり、ベーレンライター版では資料に存在しない事を一層明確にするため、これらの記号は括弧で括られている。
#ベートーヴェン ,#ludwigvanbeethoven,#beethoven,#交響曲第7番

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?