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『稲盛和夫一日一言』 9月12日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 9月12日(火)は、「一番大切な経営資源」です。

ポイント:経営において確かなものは「人の心」。それは移ろいやすく不確かものではあるが、ひとたび互いが信じ合い通じ合えば、限りなく強固で信頼に足るものとなる。

 2022年発刊の『経営のこころ 会社を伸ばすリーダーシップ』(稲盛和夫述 稲盛ライブラリー編 PHP研究所)の中で、「心の通う、心で結ばれた集団をつくる」として、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 創業当時、もちろん人材はありませんし、資金も不足気味だったなかで、前の会社で私の上司であった現在の相談役と、経営というのは何をベースにしてやっていくべきだろうかということで、議論をすることがよくありました。

 例えば、初年度に利益が出たのですが、その利益をどういうふうにしようかという場合、相談役は「経営していくには、何といってもカネ・モノが大事だから、利益は内部留保にまわそう」と言われる。
 それに対して私は、「いや、せっかく利益が出たのだから、従業員にあげよう」と言う。そんな具合でした。

 そうしたときに私は、カネもモノも大事だけれども、それらは非常に不確かなものだ。いちばん確かで、今後頼りにしていかなければならないのは、「人の心」ではないかと考えました。
 歴史を紐解いても、人の心ほど頼りにならなくて不安定なものはないことを示す事例はいくらでもあります。同時に、人の心が不動にして非常に強固なものであることを示す事例も数多く見い出せるのです。

 確かに人の心ほど儚(はかな)く頼りにならないものはないけれど、これくらい強くて頼りになるものもないはずだ。そういうカネやモノよりも強くて頼りになる人の心というものをベースに、経営をやっていくべきだと思ったのです。

 それ以来、私どもはずっと、人の心をベースとした経営を行なってきました。どうすれば強固で信頼のできる、心で結ばれた集団をつくることができるか、ということに焦点を絞って経営をしてきたのです。(要約)

 心で結ばれた集団をつくるということに関して、名誉会長は次のように補足されています。

 心で結ばれるとは、一般には「心を通わせる」ということになろうかと思います。心を通わせるには、「愛されるには愛さなければならない」といわれるように、その中心になるべき私、すなわち経営者が、まず素晴らしい心の人たちに集まってきてもらえるような素晴らしい心を持たなければならない、と私は解釈しています。そのために、経営者である私自身がわがままを自戒しています。

 また、皆の心を一致団結させるためには、やはり経営者が私心をなくして、皆が心を寄せてくれるこの集団のために、自らが命を懸けるというくらいの気持ちで社員に尽くさなければならないと考え、努めています。
 そうした、信じられる者同士の集まりを基本にして、今日までやってきました。
(要約)

 「類は友を呼ぶ」という言葉があります。似かよった傾向をもつ者は自然と集まるものである、といった意味ですが、これに似た言葉として、名誉会長は「心が心を呼ぶ」と言われています。

 私は創業23年目に京セラに入社して以来、40年ほどお世話になりました。その中で、創業時に集まられたメンバーはもちろんのこと、その後に集まった先輩諸氏の方々が皆、名誉会長と同様に「この集団のためなら命を懸けても惜しくない」という強い気持ちを持って、信じられる集団、仲間のために必死に尽くそうと踏ん張ってこられたおかげで、現在の京セラがあるといっても過言ではないように思います。

 「人の心をベースにした経営」、常に信じ合える者同士の集まりでありたい、そうした思いを大切にする企業で働けたことを今でも感謝しています。


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