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『稲盛和夫一日一言』 12月11日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 12月11日(月)は、「豊かな人生」です。

ポイント:与えられた仕事を天職と思い、その仕事を好きになるよう努力し、さらに打ち込むこと。懸命に働き続けることで、結果として物心ともに豊かな人生を送ることができるようになる。

 2009年発刊の『働き方』(稲盛和夫著 三笠書房)の中で、「何のために働くのか」という命題に対して、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 何のために働くのか。その理由を「生活の糧を得るため」と考えている人がたくさんいます。食うがために必要な報酬を得ることこそが労働の価値であり、働くことの第一義であるというわけです。

 もちろん、生活の糧を得ることが、働くということの大切な理由の一つであることに間違いはありません。ただ、私たちが一生懸命に働くのは、そのためだけではないはずです。

 人間は「自分の心を高めるために働く」、私はそう考えています。
 「心を高める」ということは、お坊さんが長年厳しい修行を努めてもなかなかできないほど難しいものなのですが、働くことには、それを成し遂げるだけの大きな力があるのです。

 働くことの意義が、そこにあります。日々一生懸命働くことには、私たちの心を鍛え、人間性を高めてくれる、素晴らしい作用があるのです。
 ひたすら働き続けることを通じて、心を練り上げてきた人間だけが持つ、人格の重みや揺るぎない存在感、そうしたものに接するたびに、私は「働く」という行為の尊さに改めて思いを馳せるのです。


 そして同時に、将来を担うべき、現代を生きる若い人たちにも、仕事で努力することを厭わず、仕事で苦労することから逃げず、ただ素直な心で一生懸命仕事に打ち込んでほしいと思うのです。
 ときに、「いったい何のために働くのか」といった自問が湧いてくるかもしれません。そうしたときには、ただ一つのことを思い出してください。

 「働くことは人間を鍛え、心を磨き、人生において価値あるものをつかみ取るための、尊くてもっとも重要な行為である」ということを。(要約)

 今日の一言には、「人は得てして、恵まれた環境にあっても、与えられた仕事をつまらないと思い、不平不満を口にします。しかし、それで運命が好転するわけではありません」とあります。

 2012年発刊の『京セラものづくりの心得を語る』(伊藤謙介著 京セラ経営研究部編/非売品)の中で、「仕事を通じて自らを高め続ける」として、伊藤元京セラ会長は次のように述べられています。

 古来、日本のものづくりの心には、一生懸命働くことによって何かを獲得する、仕事を通じてものづくりの本質を究めていくという「求道的(ぐどうてき)労働観」といえるものがあるのではないでしょうか。

 求道とは、礼儀を重んじ、「道」を求めて修行をするということです。
一生懸命仕事をすることによって、素晴らしい人間性を獲得していくからこそ、素晴らしいものづくりができるようになるのです。
 伝統工芸の世界においては、厳しい修行を通じてものづくりの本質を究めるということが、延々と続けられています。

 こつこつと地道に仕事を続けていくのは大変なことですが、自分が成長していって何かを獲得する。「一芸を究める」ということは、素晴らしいものを獲得するということです。
 そうなることが自分のためにもなり、社会のためにもなる、そこを大事にしていかなければならないと思うのです。
(要約)

 岡山県にある『備前おさふね刀剣の里』という施設に行ったことがあります。そこでは、「鍛刀場(たんとうば)」と呼ばれる工房で、刀匠(とうしょう)たちの仕事ぶりを間近に見ることができます。

 出来上がった日本刀の美しさには誰もが驚嘆させられますが、その製造工程では、実にシンプルかつハードな作業が繰り返されています。
 鋼(はがね)を火箸(ひばし)にはさんで、火が熾(おこ)っている火床(ひどこ)の中に差し込んで真っ赤に熱してから、金床(かなどこ)の上で大小の鎚(つち)を打ち続け、さらに水の中につけて焼き入れをする、その作業を延々と繰り返すことで、鋭い切れ味を持つ刀身が鍛えられていきます。芸術品ともいえる精巧な日本刀がつくられる前工程を目の当たりにして、これが「究める」ということなのかと感動したのを覚えています。

 目の前の仕事にど真剣に向き合っていると、多少の不平不満などはどこかへ吹っ飛んでしまいます。素晴らしい考え方や人格を自分のものにしていくためにも、真摯な気持ちで日々の仕事に打ち込んでいきたいものです。


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