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『稲盛和夫一日一言』 6/13(火)

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 6/13(火)は、「成功という試練」です。

ポイント:一般的には、「試練」とは苦難のことだけを指すが、人間にとっては、成功さえも試練となる。天は、成功という試練を人に与えることによってその人を試している。

 2011年発刊の『京セラフィロソフィを語るⅡ』(稲盛和夫著 京セラ経営研究部編/非売品)の「成功もまた試練」という項目で、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 自然、また神様は、我々に人生の試練を与えます。それは厳しい苦難や災難というような試練もありますが、成功という試練も与えると私は考えています。

 成功というのは、一見すると甘くて魅力的なものに見えますが、これは人生にとって大変厳しい試練だろうと思うのです。人間がどう変質を遂げるのかを自然は見極めようとして、人からうらやましがられるような成功を与えているのです。

 成功もまた人生の試練なのだとすれば、成功した場合でも、もともとの努力してきた自分を決して見失ってはなりません。見失わないためには何が秘訣かというと、「自分が変質を遂げていないかどうか、もともと努力してきた自分を見失っていないかどうか」ということを日々反省することです。
 過去の自分と今の自分を比較すれば、過去には考えられないくらい豊かな現在を過ごしている。しかし、それを当たり前のこととしてとらえてもいいものだろうかと、常に反省してみるのです。

 私は、成功したことをずっとありがたいことだと思ってきましたから、今日まで感謝する毎日を過ごしてきました。その間、ことあるごとに「(神様、)ありがとうございます」と感謝の言葉を発し、逆に変なことをしたときには、「(神様、)ごめんなさい」とよく声に出して言います。

 感謝をする心があるから反省も起こるわけです。成功したからといって決して自分を見失ってはいけません。そのためにも、日々反省するということがたいへん大事になってくるわけです。(要約)

 今日の一言には、「成功した結果、地位に驕り、名声に酔い、財におぼれ、努力を怠るようになっていくのか、それとも成功を糧(かて)に、さらに気高い目標を掲げ、謙虚に努力を重ねていくのかによって、その後の人生は、天と地ほどに変わってしまうのです」とあります。

 『平家物語』 巻第一 「祇園精舎」の冒頭を示します。
【原文】 
 祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。たけき者も遂にはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ」

【現代口語訳】
 祇園精舎の鐘の音は、諸行無常の響きがある。沙羅双樹の花の色は、盛んな者も必ず衰えるという物事の道理を示している。おごり高ぶっている人の栄華も長く続くものではなく、まるで覚めやすいと言われている春の夜の夢のようである。勢いが盛んな者も結局は滅亡してしまう、まったく風の前の塵と同じである。

 「驕る平家は久しからず」という言葉も耳にされたことがあるでしょう。
 残念ながら、私は今までのところ、驕れるほどの地位や酔うほどの名声、またおぼれるほどの財といったものとは無縁の人生を歩んできましたが、それでも、何度か身近に「盛者必衰の道理」を感じる機会はありました。

 その大きさやインパクトの違いはさておき、成功や幸運さえもまた試練だと捉え、「謙虚にして驕らず、さらに努力を」の気持ちを片時も忘れることなく、残りの人生を全うしていければと思っています。


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