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『稲盛和夫一日一言』 10月21日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 10月21日(土)は、「経営者の真価」です。

ポイント:真の経営者とは、自分の全智全能、全身全霊をかけて経営を行っている人のこと。命をかけるくらいの責任感で毎日を生き、その姿勢をどのくらいの期間続けてきたかで、経営者の真価は決まる。

 2022年発刊の『経営12ヵ条 経営者として貫くべきこと』(稲盛和夫著 日経BP/日本経済新聞出版)「第8条 燃える闘魂 ー経営にはいかなる格闘技にもまさる激しい闘争心が必要」の項で、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 経営にも、格闘技などの世界で必要とされる「闘魂」が不可欠である、と私は考えています。人がよすぎてケンカもしたことがないなどという人は、早い時期に社長の座をもっと闘争心のある人に譲るべきです。

 経営においては、いくら企業間競争に打ち勝ち、万全の経営に努めても、円高などの経済変動や国際紛争、さらには自然災害と、思わぬ環境変動がいろいろと湧き起こってきます。

 京セラが今日にいたる道程は、例外なく、決して平たんなものではありませんでした。多くの企業が数々の激流に翻弄され、衰退・淘汰されていきましたが、京セラは幾多の荒波を真正面から受けながらも成長を続け、創業以来一度も赤字を計上することなく、現在まで収益を上げ続けています。

 それは、私をはじめ後を継いだ京セラの経営陣が、「絶対に負けるものか」という強い思い、いわば「燃える闘魂」を持って経営に当たり、いかなる環境変動にも一喜一憂することなく、誰にも負けない努力と創意工夫を積み重ね、成長発展を目指してきたからに他なりません。

 一方「燃える闘魂」には、母親が子どもに抱くような、愛情に裏打ちされた、やさしい闘魂もあります。例えば、猛禽(もうきん)類に幼いヒナが襲われそうになったとき、親鳥は自らの危険を顧みず、凄まじいまでの闘魂を示してわが子を守ろうと立ち向かいます。

 経営者としての責任を果たそうとするならば、日ごろ弱々しくてケンカなどしたことがない、闘魂のかけらも見られないような経営者であっても、ひとたび困難に遭遇すれば、従業員を守るために敢然と奮い立つ。そうした経営者でなければ、従業員の心からの信頼を得ることはできないと思います。

 経営者が自らの保身に汲々することなく、どのようなリスクが降りかかろうとも、従業員を守ろうと自らの責務を果たし続ける。そうした経営者であるならば、どのような時代になろうとも、その企業は必ず成長発展を遂げていくことができるはずです。(要約)

 冒頭の「・・・もっと闘争心のある人に譲るべきです」という部分は、昨日の一言「両刃の剣」でも引用した言葉です。

 今日の一言には、「どんなに素晴らしい経営手法や経営理論、経営哲学を頭で理解していても、真の経営者になれるわけではありません」とあります。名誉会長は、同じ書籍の中で、次のようにも述べられています。

 経営者は、ライバルと競争する、お客様とのトラブルを解決する、事業を大きく展開するなど、あらゆる局面で修羅場を通らなければならないことが多々あります。
 本当に進めるのかと足がすくむ局面もあるでしょうが、それを克服するには「なにくそ」という闘志が必要です。そこには、内に秘めた「強い意志」と、外に出てくる「燃える闘魂」の両方が必要になるのです。(要約)

 スキルやノウハウといったテクニカルなものではなく、まずは経営者自らが心の底から湧き上がってくる強烈な思いを持っていること。
 京セラの場合は、その思いが「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」という経営理念を実現していくための駆動力となってきたと思っています。

 命をかけるくらいの責任感で日々生きようとしているかどうか。経営者に限らず、人間の真価はそのあたりで決まってくるものかもしれません。


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