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『稲盛和夫一日一言』 3月6日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 3月6日(水)は、「経営者の勇気」です。

ポイント:経営者はまず、集団のために自己犠牲を払うことをも厭わないような、高潔な哲学を持っていなければならない。

 1996年発刊の『成功への情熱 ーPASSIONー 』(稲盛和夫著 PHP研究所)「自己犠牲を払う勇気を持つ」の項で、リーダー自らが持つべき勇気について、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 すべてのリーダーは、よろこんで自己犠牲を払う勇気を持っていなければなりません。

 集団として何か価値あることを成し遂げようとするには、たいへんなエネルギーが必要です。そのエネルギーを得るには代償が必要となりますが、それはリーダーが率先して払うべきものです。リーダー自らが自己犠牲を払う勇気を示すことによって、部下の信頼を獲得することができるのです。

 職場環境を改善していこうとする場合、それはリーダーの便宜のためではなく、そこに働く人々の大多数のためのものでなければなりません。リーダーは自己の利益を犠牲にしてでも、良い手本を示さなければならないのです。リーダーのこの勇気なくして、職場の改革、改善などを、有効に遂行できるはずがありません。

 リーダーが自分にとってのみ都合のよい職場にしようとするなら、部下も同様に自分勝手になり、誰もリーダーについていこうとはしないでしょう。
 リーダーが自己犠牲を払ってこそ、部下の信頼と尊敬が得られるのです。そうすれば、部下たちもすすんで職場の協調と規律、そして発展のために貢献するようになっていきます。

 自己犠牲とは、すべてのリーダーがよろこんで支払うべき代償なのです。(要約)

 今日の一言には、「取り巻く環境がいかに変わろうとも、例えば事業が成功し、名誉と多額の収入を得るようになったとしても、自分の欲望を抑制する克己心、真の正義を重んじる勇気を持っていなければならない」とあります。

 2001年発刊の『京セラフィロソフィを語るⅠ』(稲盛和夫著 京セラ経営研究課編/非売品)「真の勇気を持つ」の項で、仕事を正しく進めていくためには勇気が必要として、名誉会長は次のように説かれています。

 ふだん私たちは、周囲の人から嫌われまいとして、言うべきことをはっきり言わなかったり、正しいことを正しく貫けなかったりしてしまいがちです。

 仕事を誤りなく進めていくためには、要所要所で正しい決断をしなければなりませんが、その決断の場面では、勇気というものが必要になります。
 しかしそこでの勇気とは、蛮勇、つまり粗野で豪傑と言われる人の持っている勇気とは違います。

 リーダーは、「こんな問題があります」「あんな問題があります」と、部下から様々な相談を持ちかけられます。そんなとき、勇気がなければどうしても安易な解決法を選んでしまいがちです。
 困難な方が正しいと分かっていながら、勇気に欠けるところがあるものだから、結局安易な道を選んでしまう。そのような失敗をしないためにも、リーダーには理屈抜きに勇気が要るのです。

 しかし、誰もが勇気を持っているわけではありません。脅されたりすれば肝を潰して、ガタガタ震えてしまうこともあるでしょう。
 それでもいざという場面では、度胸を決めて戦わなければなりません。それは、リーダーであれば必ず負わなければならない「責任」なのです。

 「部下のために、また自分を支えてくれる家族のために、命に代えてもこの事業を守っていくのだ」という凄まじい気迫、信念ほど、リーダーを強くするものはありません。そうしたものがあれば、人間には何ものにも屈しない勇気が湧いてくるのです。(要約)

 「自己犠牲」には、「ある目的のために自分の欲望や幸福を捨てて尽くすこと。自分の利益をかえりみず、他人の利益を優先して行動すること」といった意味があります。

 自己犠牲を払うということについて、名誉会長は「利己」と「利他」の対比で、次のように述べられています。
(日経ビジネス電子版 2022年11月16日記事より)

 事業を行なっていく場合、利己を肥大化させると同時に、利他も肥大化させていかなければなりませんが、その際には利己に比例して利他を肥大化するというより、利他のほうが少しでも上であるべきです。

 そうした「利他の心」を目覚めさせるには学ぶしかありません。
 利己は本能ですから、学ばなくてもしょっちゅう出てきますが、心の奥底に沈んでいる「利他の心」は意識してそれを伸ばそうとしなければ出てきません。そのためには学ぶことが重要であり、それが「人間性を高める」ということなのです。
(要約)

 自己犠牲という行為を見て、一部には「ああ、そうすることがこの人の美学なんだ」といった、少し醒めた見方をする向きもあるかもしれません。
 しかし、「集団のために、誰よりも自分が踏ん張らなければ」という強い信念を持って動くリーダーには、周囲の誰もが共感し、支えていきたいと思ってくれるようになるのではないでしょうか。


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