見出し画像

『稲盛和夫一日一言』 11月16日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 11月16日(木)は、「小善と大善」です。

ポイント:甘やかすあまり、自分では何もできない人間を育てるのか、逆に厳しく接することで、自身を鍛錬することのできる人間を育てるのか。前者を小善、後者を大善という。

 1996年発刊の『成功への情熱 ーPASSION-』(稲盛和夫著 PHP研究所)の「大善をもって導く」の項で、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 リーダーは、愛情をもって部下に接していかなければなりません。これは、決して溺愛するという意味ではありません。「小さな愛」(小善)ではなく、「大きな愛」(大善)により部下を教育していかなければならないのです。

 たとえば、親が子どもを甘やかすあまり、子どもは自分では何もできないようになってしまい、成長するに及んで人生を誤ってしまうということがあります。それとは逆に、厳しい親に育てられた子どもは、自分を鍛錬することを学び、人生における成功者になるということがあります。前者を小善、後者を大善といいます。

 職場においても、さまざまな上司がいます。その中には、優しくて、部下の意見をよく聞き、自由に仕事ができるようにしてあげる上司もいます。また、非常に厳しい上司もいます。

 もし、信念もなく、ただ部下に迎合している上司ならば、長い目で見て決して組織のためになりません。部下に甘い上司というのは、人気はあるかもしれませんが、その気楽さは部下をだめにしていくはずです。
 長い目で見れば、目標を課し、規律をもって鍛える厳しい上司によって、部下ははるかに伸びていくのです。

 「大善は非情に似たり、小善は大悪に似たり」という言葉があります。小善をもって部下を導いていくリーダーは、つかの間の名声や成功しか手にすることはできないのです。(要約)

 雑誌『PRESIDENT』 2019年7月5日号特集の「稲盛和夫が教えてくれた『人間の器』の広げ方」の中で、稲盛名誉会長と第二電電の創業に参画された千本倖生氏は、名誉会長の部下との接し方について、次のように述べられています。

 稲盛さんは平成最高の経営者です。自分が経営する企業をどれだけ成長させたか、後に続く経営者にどれだけ影響を与えたか、純粋な社会貢献事業にどれだけ取り組んだか。名経営者と呼ばれる人は何人もいますし、ある一面では稲盛さんと同等の方もいるでしょう。しかし稲盛さんの場合は、どの角度から見ても傑出しています。

 とくに企業経営を哲学の領域にまで高めたことは、特筆すべきことではないでしょうか。私自身が経験したことですが、稲盛さんと一緒に働いていると、心の底から褒められたり、震えるほど叱られたりしながら、人間性そのものが向上していく感覚を覚えます。そんな経営者を、稲盛さんのほかに私は知りません。

 稲盛さんはDDI創業の頃すでに間違いなく突出したリーダーでした。そして令和の時代に入った今も、稲盛さんの教えは、経営者にとってますます偉大な道標になっていると感じます。

 京セラやDDIを確固たる大企業に育て上げ、JAL再建を果たされてからもなお、努力を重ねることで人間性を高め、リーダーとしてどこまでも成長しようとされている。その姿勢そのものが、稲盛さんの本質であり、私たちが学び続けなければならないことだと思うのです。(要約)

 私は京セラ在籍中、京都本社にある経営研究部という部署で、京セラフィロソフィの継承啓蒙活動に携わっていたのですが、名誉会長と一緒に京セラを中小零細から大企業へと導いてこられた大先輩方が、「名誉会長には、何度もその場に立っていられないほど厳しく叱られたけれども、今の自分があるのは間違いなく名誉会長のおかげだ。自分は名誉会長に巡り合うことができて、本当に幸せだった」とうれしそうに話をされる姿に何度も接してきました。

 京セラフィロソフィの「小善は大悪に似たり」の項では、次のように説かれています。

 人間関係の基本は、愛情をもって接することにあります。しかし、それは盲目の愛であったり、溺愛であってはなりません。
 真の愛情とは、どうあることが相手にとって本当に良いのかを厳しく見極めることなのです。
(要約)

 自分のことで精いっぱいの状態であれば、どう接するのが相手にとって最も良いことなのかなど考える余裕も持てないでしょう。しかし、それでも相手が大きく成長していくためには、周囲からの非情とも思えるような「大善」が必要なのだと信じて、厳しく接していくことも必要なのではないでしょうか。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?