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政治家は「そんなあなたに生きてほしい」とか言うけどさ

そんなあなたとは、誰だろう?わたしは、大切なあなたに生きてほしい。ひとたび知ってしまったあなたに、幸せになってほしい。この地球で一緒に暮らすあなたと、自由を相互に承認したい。わたしだって、誰だって、そんなあなたに生きてほしいよ。でも、どうしたらよいの?


この星でもなく、この国でもなく、このまちでもなく、ここにいるわたしを守ってください


子どものときは、母親と。高校卒業後は、一人で。父親から逃れるように、家出を繰り返していました。そういうぼくを、守ってもらえるでしょうか。もっと大変な状況にいる人もいますから、ぼくは「そんなあなた」のなかには入れないでしょうか。

犯罪を犯した人を、ニュースは「なんてひどいの!」と言います。わたしは犯罪を、他人事とは思えません。お酒を飲んだら暴れる父親、熾烈な生産ノルマと罵声が飛び交う職場、「いまやらなければ、やられてしまう」という状況に追い込まれたら、果たして逃げるための手段を選ぶほどのカードが手元にあるでしょうか。カードを引く機会もなくて、もう最悪の1枚しか残ってないよ……

「夢を追って」貧困に陥ったら、自己責任ですよね。学歴に意味がないと思って、受験勉強をせず、意味の感じない大学を中退したり、これも自己責任ですね。人生に目標を持ったこと、家庭環境、勉強する意味を知る機会がなかったとか、これも全て自己責任なんですよね。

今、わたしは幸いにも生きています。とても幸せです。でも、あと少しのところで、生きられなかったかもしれません。今もこうしているときにも、どこかに若い頃の自分がいるようで、一人だけ幸せになってしまったようで、無力すぎて申し訳ない。


同情するなら住居をくれ


家出をすると、困るのは、住居です。住まいを維持していくことができるか。暮らしの固定費を支払い続けることができるのか。そこが最も心配です。それでもぼくは、離婚してほしいと言いました。

余裕のある人は、制度がありますと言います。でも余裕のない人には、お金だけでなく情報も回ってこないんですよ。今であれば、児相だとか女援だとか、そういう公的機関あることを知っています。だけどその頃のぼくは、全く知らなかった……

それなのに、政治家は、政治で全て解決するようなことを言います。本当に、政治ですべてを解決できますか?それって、政治というより宗教なんじゃないですか?選挙だから、仕方ないんですか?そういう不誠実な振る舞いが、社会を壊していってませんか?

もう、言葉はいらないよ。仕組みがほしい。しかも、いますぐ。無理ですよね。そうですよ、それはわたし知っています。

だから、全ての人の役割を調和させていかなければならないです。今日もおいしいご飯をつくってる飲食店の人や、今日も同じ時間にバスを走らせてくれる運転手さんがいて、世の中は回ってる。そういういろんな役割を持った人が失業したからって、じゃあ公務員として雇います!って、それで全て解決か。生きるって、ただ飲み食いをするだけでなく、尊厳が確保されているから「生きている」と言える。選択肢を希望するのは、わがままですか?


弱者の救済であれば、勇ましい政策より、消費税減税より、生活保護の話をきかせて


貯金も使い切って借金もして、どーんとお金をばらまきますよ!という気前のよい公約は、派手だし、わかりやすい。自分のお金じゃないけどね。

通貨発行権のない自治体の財政運営は、極めてシンプルです。入ってくるお金は、ほぼ決まってます。地方交付税制度ですね(東京都などの不交付団体もある)。総務省が概要をペライチにまとめてくれていて、めちゃ優秀。そのほか、基準財政収入額に対象税目など、下記にまるっとまとまってます。

つまり、自治体財政は、決まった範囲でどこにお金を使うか決めていくことに尽きます。入ってくるお金が見えてるなんて、民間経営者から見たら、算数かと思うかもしれませんね(一方で、行政経営の難しさは、ステークホルダーが多数複雑なことなんですが)

だから、財政拡大は、緊縮財政を引き起こします。今どーんと使ってしまったら、どこかで使えなくなるということですね。「命が大事だから」というのは、当たり前の話です。ただ、そのパワーワードだけで、後先を考えない執行に賛同して大丈夫ですか?

先日、路上生活問題のアドボカシーに取り組む北畠拓也さんと、下記のオンラインイベントでお話をしました。

ちなみに、こんな政治を文句ばかりを言っているアタクシですが、次回のテーマは政治です。ねえ、政治、好きなの嫌いなの?笑

そんなこともあって最近、いろいろ話をさせてもらいながら、良い勉強させてもらってます。

特に生活保護制度についてなんですが、自治体に関わっていた者としては、運用についてが主な着目点になっていて、制度そのものがどうかということは、あまり考えていなかったなと反省しています。話を聞くなかで、自分が問題に感じたのは、3点です。

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①利用奨励されていない

一人暮らしをしている若者が生活保護申請をすると、両親などに連絡が行くわけです。しかし、一人暮らししている若者は、実家に戻れない事情を抱えている場合があります。そうしたとき、両親に連絡されるくらいなら諦めるという判断を迎えがちです。というか、自分だったらそうします。

こうしたケースごとの事情に対応すべきですが、むしろ事情を良いことに、申請に至らないようにしてしまうことがあります。そもそも「申請主義」ですしね。すべての困窮者を守ろうと、役所はしていません。

これは単に、役所が悪いと言っているわけでなく、役所にもまた事情があります。役人(公務労働者)というのは、文句を言われながらも、コツコツとすべきこと(世間とズレている場合もありますが)を実行できる善良な人が多いです。でも簡単に言ってしまえば、人とお金が足りていません。華やかな政策も結構ですが、地味だけど現場の具体的な課題を解決することこそ、要請されている政策ではないでしょうか。


②就労意欲を涵養する仕組みになっていない

という話になったときに、はっ!と気づいたのは、さっきチラ出ししました「地方交付税制度」です。これを参考にして改良すれば良いのではないかと思い、ざくっと図にしてみました。

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インセンティブの割合を何%にすれば良いかは、就労意欲を涵養しつつ(ちなみに、地方交付税制度の25%は、自治体の税収確保意欲を涵養しきれていないと思っている)財政的にサスティナブルなのかという詳細な検討が必要ですが、つまり地方交付税制度における「留保財源」のようなものが設定されたら、就労意欲を涵養する仕組みなるのではないかというものです。


③丸裸になるまで困窮しないと使えない

生活保護の8つの扶助のうち、単独給付を受けることができるのは、医療扶助だけになります。住宅扶助に関しても単給が受けられれば、幅広い低所得の方々の利用が可能になります。

加えて、保護開始の貯金水準を現在より高く設定することです。これらは、例えとして適切かわかりませんが、「早めに治療する」ということです。医療も貧困も重篤化するほど、時間もお金も要しますし、手遅れになる確率が高まります。

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社会的弱者の救済を語るなら、本丸は生活保護だと思います。改善をすれば、より大きく、一時的ではない力を発揮できる社会保障制度です。法律を制定する国と、制度を運用をする自治体が一緒になって、時代に即した生活保護制度を構想していきたいものです。

日本は「なぜ、イノベーションが起きないのか」と言った話がありますが、イノベーションに必要である「失敗と検証の繰り返し」が、恵まれた人にしか開かれていない。つまり、イノベーションの分母の少なさが問題です。

衣食住が保障されていれば、失敗をすることができます。少なくても、住まいのみでも保障されていたら、イノベーションの分母を増やすことができるのではないでしょうか?

わたしは、福祉の話を経済につなげて話すことも重要だと思います。多くの人とともに、社会の課題を価値に変える方策を模索していきたいです。


学びより先に、水を飲ませてよ


この話の流れでですね、微力だけど、無力ではないと、この企画の話をするつもりでした。

そして、その話に至るため、「ヘルパー募集って、搾取じゃないですか?」「なんで日本にジョブスが生まれないのとか、眠たいこと言わないでよね」「地域教育を売りにするけど、余裕のある人しか学べませんか?」という3項目を挟もうと思ってたんですけど、もう3500文字を超えてるじゃないですか笑。いやほんと、話が長くてすみませんねっ…!(なんかあったらしい)

あ、「生存のための学校」は、募集中です。行政や政治のように大きなことはできませんが、政治家が「そんなあなたを守りたい」とか言ってるうちに、素早く実行に移せるのが民間の強みです。住まうことに困っている人を、1人でも2人でも多く避難してもらえたらいいなと思っています。

※「こんなイヤんなっちゃう社会なのに、誰も悪者がいないなんて、ほんともうイヤなんちゃうねシリーズ」は、前編後編で書いていますので、併せて読んでもらえたらうれしいです。

そういうわけなので、後編をのちほど書こうと思います。話が長くてすみませんが(2回目)、引き続きよろしくお願いいたします!

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