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おわりの写真とはじまりの写真

2023.7.18、駅の改札で待ち合わせ時間になった頃スマホを確認しながら周りを見渡していると
とても上品な佇まいで、じっとこちらを見つめながら私であると確信したように静かに「Ryokoさんですか?」と声をかけられた。

ふとしたお誘いから、一体どんな方なのだろうと、興味深く彼女の活動内容のページを開きあっという間にお会いする事になった。

駅前の純喫茶に入って注文したお互いのツナトーストとチェダーチーズトーストをシェアしながら
向かいに座る彼女とは初めて会ったと思えないほど自然に会話をする。

そこから歩いてすぐにある、お会いするにあたって事前に予約した思い入れのある場所で、インタビューから始まった。

レコーダーをまわしながら、会話がはじまる。
時々彼女はノートに私の言葉を書き留めているようだったが、今思い返せば言葉じゃなく仕草や表情や彼女にしかわからない感覚の何かだったかもしれない。

どういう内容を話したかは、私からここでは書かないが少々話し過ぎてしまったかもしれないと肩をすくめて笑ったら
「むしろ話してくれてありがとう。」と彼女の事も話してくれた。

彼女が用意してくれた同意書にサインをし、撮影するにあたって、着てきたワンピースから撮影用のものに着替えをする。

カーテンの隙間から見える景色はあの日と違って、部屋の様子も違う。
窓辺の近くのデスクに座った私に、特に彼女は一切指示をしない。

まるで気配を消してるように、あの人と一緒だ。

少し休憩を挟んで、ヌード撮影に移行する。

私を撮った事のある方は知っている事だけど、私は撮影するにあたって幾つかNG事項がある。(もちろん彼女にも事前伝えてある)


カーテンを閉じて部屋は一気に暗くなった。
間接照明のみが身体を照らす。

言葉数が少なくなるにつれて、普段は限られた場合にしかないであろう写り方をしていたのに気がついたのは数時間後の事である。




彼女が、当日夜何枚か送ってくださった中の一枚。


これを見て自分でも驚いたが、レンズに向かって横顔でもなく髪や手腕で顔の多くを分かりにくくする事もなく自らレンズを見つめているのだ。

いや、レンズの向こうにいる彼女に手を伸ばしていたのかもしれない。

彼女はこんな言葉を送ってくれた。

「背伸びしない今日の素直な有り様の写真を撮ることが出来て良かったのかもしれないと思いました。
誰かの記憶の宝物になるようなおわりの写真と、はじまりの写真。

うん、勝手に自分で腑に落ちて居ます。」

その日彼女と過ごした時間を自分の中でおさらいする。

彼女は撮影中に、私の顔が好きだとも言ってくれた。
その場で写真を確認する私に、顔ばっかり撮ってるのバレちゃうね、と長い睫毛を揺らして笑った。

彼女だからこそ撮れた写真だと思う。
彼女だからこそ向けた顔だったと思う。

そして何より彼女は「人間」を撮っていると感じた。




はじまりのおわりと、おわりのはじまり。


P/ R-photographer









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