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専門用語を使う前に。

IT業界にいるとついうっかり、IT用語と呼ばれている用語を当然のように話してしまいます。

話していると自分も業界人になった感じに思えてくるのでうれしい気持ちにもなるんですが、知っているのが当然という空気感は知らないことをメモすることすら躊躇されてしまうような感じになってしまいます。そもそも専門用語がわかっていることを前提で物事を進めていると齟齬がでてしまいますし、専門用語の必要性を感じていない人にとっては仕事が急に面白くなくなりますし、更に勉強強要されてしまうような空気では社員がやめちゃいます。ですのでうちの会社では、誰にでもわかるように話してくださいと口を酸っぱくいっています。

2000年僕が富士通ビジネスシステムという会社にて働き始めたころは、まさにIT業界が盛り上がっていた時代でした。(写真は元富士通ビジネスシステム第二本社)

ASP、CRM、PV、CTR、インプレッション、EDI、SAS(SaaSではないです)、NAS、SFA、メディアレップとかバイラルとかエヴァンジェリストとかが出始めた時代でした。(頭が・・・・いたい)web広告も非常に大きく伸びていた時代でして、目まぐるしかったことを覚えています。僕は大阪から東京に出てきて、出社して当日に、すぐに渋谷のベンチャー企業に出向となりました。会社が渋谷のベンチャー企業に出資していたのでそこに半常駐となったのです。

常駐先はITベンチャーが集うサンブリッジ、元オラクルの社長さんアレン・マイナーさんが設立したシェアオフィス&ベンチャーキャピタル(ベンチャー企業に出資する機関)。セールスフォースドットコム、@ITなどいまでも大活躍の企業も同じフロアで働いていました。そこで僕は出資しているベンチャー企業ビートレンドの製品であるwebマーケティングのシステムセールスを担当することになりました。

担当したまではいいのですが、会議に出ても、飲み会に出ても飛び交う専門用語の言葉がまったくわかりませんでした。当時の僕はPCが一人一台あるなんてすごい!なんて思ってた頃でしたので、オフィスに行くとはじめてなことだらけでしたが、中途採用でしたので仕事は当然やれて当たり前という空気でしたし、知らないことなんてあってはならないという感じで仕事が進んでいました。つまり中途採用なんだから知らないは、許されないというか、知ってて当然という感じだったのです。今でも怪しいのですが当時はより何一つちゃんと業界を理解できてませんでした。そんな状況であるにもかかわらず圧倒的に知識が足りない僕にwebマーケティングセミナーのスピーカーをやってもらうという先輩からの命令が降りてきました。しかも毎週。「わかりました」と受けたものの必死に先輩の物まねをして何とかごまかしておりました。(これはこれで、非常に楽しかったですし勉強になりました。)

とは言え、なんですが、webマーケティングセミナーでスピーカーをやらせていただき、更に質問も受けるようになってくると、良く分かったのですが、セミナーに来て下さるお客様は新人の僕とそんなに知識量は変わらないということに気が付かされました。そもそも多種多様な業種の皆様がこれからwebマーケティングをしようかなー?という感じで来ることが多いので、

「あんたらはもっともらしく言葉使っているけど、そんなもんわしらの業界の人間は知らんがな」「つまりどういうこと?」という感じだったのです。

質問で頂くのはそもそも用語についてが半分でしたので、これってセミナーで話すときにちゃんと説明した方が親切だよなぁと思うに至ります。

僕はその時に、専門用語を知ってなければweb業界で生きていけないという訳ではないんだと自覚し始めました。とはいえ先輩からは、叱咤激励を受けながら(いまでもお付き合いをいただくいい先輩達です)、学びながらも何とかぎりぎりで仕事をこなしていました。

そんな折、ある言葉に出会います。NTTドコモさんの『モバイルフロンティアへの挑戦』という言葉。

当時から、すでにiモードなどモバイルでのマーケティングはwebマーケティングには欠かせないものでしたので、僕らはNTTドコモさんの展示会などにご招待をいただき足を運んでいました。その会場である国際フォーラムで気球がつるされていて、その中心にそんなことが描かれていた展示物を見て衝撃が走ります。思いかんだのは、多くの方もそうかもしれませんがアメリカの西部開拓時代。そっか、この事業分野はフロンティアなんだ、だからみんなで開拓競争をしているんだ!

フロンティアにいる以上は、知識量よりは行動力の方が大事なはず。

(さらには自分もいつかは絶対に挑戦するぞなんてことも思っていました)

話はそれますが、iモードを作った主要メンバーの松永真理さんは、コンピューターがこんな使いにくいなら、自分達に使えるところまで降りてこいという発想でiモードを創り上げられたのだそうです。

話が長くなりましたが、専門用語を使うにあたり、

試されるのは専門用語を使うことで仕事の効率、合意事項が共有できるようになるのか、そして、相手にちゃんと理解していただけるのかということが達成できなければ専門用語を使う意味はなんじゃないかな?

昨今、意識高い系などと言われている言葉もありますが、結果を出せなければすべては空虚です。

僕としては専門知識で語るより、

当たり前の主語述語、いつまでになにをどうするかが明確に話せるようになる方がはるかに大事

ですし、そのための手助けになる言葉の使い方をしてほしいと会社ではお願いしています。ここまで読んでくださってありがとうございます。

最後なのでせっかくなので僕なりに用語解説。

ASP:アプリケーションサービスプロバイダーの略。サーバーにソフトを置いてそれを複数の人に提供するシステム。ASPという言葉が開発言語の名前でもあったので当時、正直、ややこしかった。

CRM:カスタマーリレーションシップマネージメントの略。顧客の囲い込みをするシステムをeCRMと呼んだ。当時はメルマガ、会員システム、行動分析、クーポン配信などを示していることが多かった。GPSとかなかったし、アプリのプッシュ通知とかなかったしねー。

PV:ページビューの略。ページが見られた数。

インプレッション:つまりは表示。バナーなどが表示された数。要するにページの下の方にある広告などもあるのでどれくらい画面に表示されたかとPVは別もん、という訳でした。

CTR:クリックスルーレートの略。PVやインプレッションに対して何パーセントクリックされたかを測る指標。

EDI:エレクトリックデーターインターチェンジの略。企業間の電子商取引を紙ではなくて電子で行うということ。でもまだまだ世の中には紙はなくなってないという・・・。過渡期なんだろうね。

SAS(SaaSではないです):システムアタッチドスカジーの略。コンピュータにハードディスクやSSDを繋げる規格のひとつ。つまりは大量のデータを保持できるようになりますぜーということで説明するときに使った。データ分析のステティシカルアナリシスシステムというのが最近出てきて略称同じで最近ではそっちの方の意味合いの方が強くなっているのかもしれません。

NAS:ネットワークアタッチストレージの略。ネットワークを通じて外からアクセスできるハードディスクのこと。

SFA:セールスフォースオートメーションの略。営業しやすくるためのシステムのこと。日報とか決済システムとか名刺管理とか。そんなの。

メディアレップ:広告出稿かのうなメディアをまとめているもの

バイラル:口コミ。バイラルマーケティングとかいうと口コミしてくれる人たちを集めて口コミするということなんでいいんだか悪いんだか今となってはわからない。

エヴァンジェリスト:伝道者。つまり仕事としてある特定の分野やシステムを広めるために従事している人。ステマとは違い、特定の商品だけを押すということはあまりない。時々あった。

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