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採用におけるコミュニケーションは複雑で、でもだからこそ面白い

はじめに


 はじめまして、株式会社HERPにて、採用管理システムのHERP Hireの事業責任者を2023年1月現在務めております、河井と申します。約1年ぶりに、採用活動に関するnote記事を書きました。

 今回は、企業横断採用ブログリレー~候補者と企業のより良いコミュニケーション~と題した企画の最初の記事となります。

 この企画は、企業探しにおける情報の非対称性が低下し、企業・候補者双方にとって最善の選択とするために、採用活動におけるコミュニケーションの重要性がますます高まっていることを背景としています。参加する各企業からの、コミュニケーションに関する様々な視点・見解・知見の発信を通じて、採用のあり方を見つめ直す企業や候補者が増える機会をつくりたい、という想いから始まったものです。

 そんな企画において、大変僭越ながらトップバッターを務めることとなりました。私は人事・採用・HRの専門的な経験は豊富では無いのですが、日々採用管理サービスの開発に関わる立場として、『候補者と企業とのより良いコミュニケーション』についてどのようなことを筆者、ないしHERPが考えているかについて、ざっくばらんに言語化していきたいと思います。

コミュニケーションはWHYが最も重要である

 まずは採用に限らずコミュニケーションを構成する要素を5W1Hとして整理してみると、やや当たり前感がありますが下記のようになるかと思います。

  • WHY:なぜコミュニケーションをするのか

  • WHO:誰が(誰と)コミュニケーションするのか

  • WHAT:どのような内容をコミュニケーションするのか

  • WHEN/WHERE/HOW:いつ、どこで、どのようにコミュニケーションするのか

 中でも、コミュニケーションを準備する上では、コミュニケーションの前提・目的 = WHYが、コミュニケーション参加者の中で擦り合っていることが最も大事と言えると思います(一般論として、WHYからはじめる重要性は語り尽くされています)。前提・目的が擦り合っていないと、他の要素も基本的に噛み合わず、質の低いコミュニケーション = 得たい効果が得られない結果となる、ということです。
 そしてWHYが擦り合うためには、『どのような経緯・文脈でそのコミュニケーションが発生するに至ったかを理解すること』と『各参加者がそのコミュニケーションに何を期待しているかをできる限り理解すること』が必要になりますが、そこには『コミュニケーションの参加者が増えるほど難易度が増していく』という特性があります。

採用におけるコミュニケーションは、『すべて』であるのに難しい

 ここまではコミュニケーション一般についての話でしたが、ここからは採用活動について深ぼっていきます。
 まずは採用活動におけるコミュニケーションとは何なのかについての私見ですが、『採用活動とはそれ即ちすべてコミュニケーションである』と考えています。組織が作成した採用HPや求人票、スカウト文面などと候補者との出会いから、候補者が書いたレジュメを組織が確認すること、面談・面接、そしてオファーを出して入社決定に至るまで、同期的・非同期的の違いこそあれその全てが候補者と組織の間の『マッチングを測るためのコミュニケーション』です。
 そのため、採用活動の質を上げるとは結局コミュニケーションの質を上げることを意味しており、その重要性は語っても語りきれないと考えています。特に究極のコミュニケーションミスとしての入社後ミスマッチは、候補者・社員にとってなんのメリットもないどころかデメリットしかなく、社会的な損失もとても大きい、ということは言うまでもないです。
 
 そして採用においても『コミュニケーションのWHY』が擦り合っていることが大切になるわけですが、ここに『企業などの組織 対 候補者個人 のマッチング』特有の難しさがあると見ています。言い換えれば、組織側から見るとその候補者は明確に一人の人格なのですが、候補者側からすると、組織のメンバー個人個人、及び組織としての(法)人格とコミュニケーションをしマッチングを図っている、ということです。組織側のメンバーの中でコミュニケーションの文脈や目的の認識を揃えた上で、誰が・どのような内容を、などについて設計することは、非常に複雑性が高い活動になります。
 
 さらには、企業・組織にとっては採用活動をプロセスとして設計していかなければいけない、という点も見逃せません。企業にとっては採用は数ある業務・活動の中の一つであり、他業務とのリソース配分の観点や継続性・スケーラビリティを考慮すると、ある一定の規模以降においては仕組みとしてのプロセスへの落とし込みが当然求められるようになります。
 しかしこのプロセス化と、候補者一人ひとりとのコミュニケーション品質の維持・向上を両立することは大変な努力が必要になります。企業・組織にとって採用活動は頻繁・定常的に行うものですが、候補者にとっての転職活動はそうではないため、ここに起因する違和感は候補者から見ると想像以上に気になる部分でもあります。(少なくとも求職者としての自分はそうでした。)
 例えば弊社の代表の庄田は、『候補者がそのコミュニケーションに何を期待しているかをできる限り理解する』ための材料・情報収集のための候補者アンケートを推奨しています。この取組みから得られるものは非常に有意義だと日々感じていますが、一方でまだまだ一般的な取り組みにはなっていないように見受けられますし、コストがゼロというわけでもありません。(詳しくは下記の記事をご参照ください)。

 また別の難しさとして、コミュニケーションパスが長くなりがちなこともありそうです。例えば、候補者 ー 人材紹介企業 ー 採用担当 ー 求人に関わる現場のメンバー といったパスにおいて、コミュニケーションの文脈や期待がすりあった状態を実現していかなければいけない、いかにも難易度が高そうです。

 このような難しさから生じる結果として、よく聞かれるようなコミュニケーションの齟齬がまだまだ発生してしまっているのだと思います。

  • 面談のつもりだったが蓋をあけたら面接だった、や、経営メンバーや現場メンバーからのスカウトメッセージに返信したら、いきなり違うメンバーから事務的な日程調整連絡が返ってきた、など

    • 筆者も転職活動をしている際に、カジュアル面談と言われていざ始まったらいきなりケース面接をされたことがあり、悲しい気持ちになったことがあります。

  • 以前の面談や面接でなされた質問を、特にさらなる深堀りもなく繰り返してしまう

    • 同じ質問をすること自体とは問題は無いが、前回の回答を踏まえた上でのさらなる仮説の深堀りや違った確度からのやりとりでない場合、『前回も話したんだけどな』といった印象を候補者に与えてしまうかもしれません。

  • 候補者に合わせてフレキシブルに次の面接官や面談参加者をアサインしたものの、アサインされたメンバーがなぜ自分がアサインされたのかについての理解が浅いまま場に臨んでしまい微妙な空気になってしまう

    • 候補者に合わせて参加者を柔軟に調整すること自体は非常に有効ですが、事前の文脈共有が不十分であるために逆効果になってしまっては悲しいです。

HERPが目指すもの:候補者とのコミュニケーションを最適にデザインするための企業への支援をしたい

 ここまで長々と、採用におけるコミュニケーションの特徴や重要性、難しさに関する考えを書いてきましたが、ここからは『それでは筆者は、HERPはどうしていきたいのか』について述べられればと思います。

 採用管理システムとしてのHERP Hireは、企業が候補者とのコミュニケーションを最適にデザインすることを通じて、採用成果を創出することができるサービスを目指しています。各候補者と企業との間でコミュニケーションのWHYがすりあい、最適なメンバーとコンテンツを準備して企業が候補者に向き合うことができる。そんな採用プロセスの構築と実現のお手伝いをしたい、そういった思いを旨に日々の活動に取り組んでいます。 

 そしてそのために肝となってくることは、候補者の情報や候補者に関するコミュニケーションの保存や共有に関する流れを設計し提供することだと捉えています。そしてそれは、複雑なフローを単純にするアプローチよりも、むしろ複雑なフローをいかに複雑なまま、効率的に継続的に実行できるか、といったアプローチと親和性が高いのではないかと感じています。例えば下記のようなものです。

  • 候補者自身や、候補者とのコミュニケーション・候補者に関するコミュニケーションに関する記録など、コミュニケーション設計の材料になる情報に対して、その候補者にとって最適なメンバーがアクセスできること

  • 候補者とのコミュニケーションに関する議論や会話が活性化するようなインターフェースであること

  • 候補者が、企業の求人に出会い、応募し、面談・面接を行う中で、それぞれに何を期待し、それぞれからどのように感じたかについて、採用に関わるメンバーが把握しやすくすること

 これらを実現していくために、HERPの採用管理システムのプロダクト開発では、主たるユーザーとなる企業の採用担当向けの調査・ヒアリングはもちろん、現場メンバーや面接官などに相当する方にも外部パートナーとして定期的・高頻度でプロダクト開発のプロセスに関与していただいています。また企業・組織側だけでなく、採用候補者視点のインサイト収集なども行っています。(詳しくは、やや古い記事ですがをご覧いただければ幸いです。)


 もちろん、道はまだまだ半ば、いや半ばにすら到達していません。コミュニケーションの設計・準備に意識やリソースを集中することができるように、採用業務の管理のオペレーションの正確性や効率を高めていくことももちろん非常に重要です。既存のプロダクトの仕様の変更が必要なものもあれば、新規に開発すべき機能などもありますが、日々邁進していきます。

 そしてこれから約一ヶ月間、今回の企画を通じ、様々な企業の採用担当の方たちにとっての「企業と候補者のより良いコミュニケーション」についての考え・こだわりを知ることができると思います。HERPとして、それらを今後のプロダクト開発のインプットとし、そのこだわり達を妥協することなく届けることをサポートできるプロダクトにしていく所存です。

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