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「日本最後の秘境」こと雲ノ平に行ってきました。

お盆明けの日曜から、雲ノ平など黒部源流をぐるりと周遊する縦走登山に行ってきました。5年ぶりの泊まりがけ登山(山小屋泊)かつ初めてのエリアで少し緊張していましたが、景色も経験も本当に素晴らしかったので感じたことを記録しておきます。

0.まずどんなスケジュールだったか?

今回の目的は「憧れの雲ノ平に行くこと」だったので雲ノ平を軸にコースタイムと山小屋の場所からルートを決めました。元々ファーストハイク(軽量)の早歩きスタイルで年1~2回の日帰り登山は繰り返していたので、計画はその感覚を元に少し余裕を持たせて1日10時間前後のコースタイムを休憩込みで6~8時間×3日間歩くことに。以下、詳細行程ですが興味がなければ地図だけ見て頂ければイメージが湧くと思います。

◆1日目(晴):折立登山口スタート(7:05)~太郎平小屋着(9:10)・出発(9:30)~薬師沢小屋(10:30)~雲ノ平山荘到着※(13:00)

◆2日目(晴→大雨):雲ノ平山荘スタート(5:30)~水晶小屋着(7:35)・出発(8:00)~水晶岳(8:25)~鷲羽岳(10:08)~三俣山荘着(11:10)・弁当食べてサイフォンコーヒーを頂く。三俣山荘出発(12:20)~黒部五郎小舎到着(14:00)

◆3日目(大雨):黒部五郎小舎スタート(5:20)~黒部五郎カールで濃霧の中20分彷徨う~黒部五郎岳登頂(7:10)~北俣岳(9:00)~太郎平小屋着(10:40)・カレー大盛り食べる。太郎平出発(11:10)~折立登山口到着(13:10)

※歩いたコースをGoogle Earthで辿るとこんな感じです。Google Earthでエア登山するのはめちゃ楽しいです。

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1.「いつかの憧れ」だった雲ノ平に、「今行く」と決めて行ってしまえて本当に良かった。

雲ノ平は「日本最後の秘境」とも言われるだけあって見聞きする度に「死ぬまでに行ってみたい」と思う憧れの場所でした。昨年くらいにふと「いつかと言わずに次の休みで行く!!」と心に決めて具体的に計画したら思った以上にアクセスはスムーズでびっくり(登山口まで富山駅から車で2時間、登山口から雲ノ平までも1日〜2日間で到着)。漠然と憧れるのではなく「具体的に計画してしまう」ことで夢は現実味を帯びるものなんだなと思ったのでした。もちろん体力面から「行ける」と判断した範囲のスケジュールを組みましたし、5年ぶりの宿泊登山だったため当初希望していたテント泊から小屋泊に変更するなどのリスクヘッジはしていますが。次の憧れはどこかなとか考えるのも楽しいです。

※雲ノ平山荘のHP、写真やデザインがオシャレで素敵です。


2.一度山に入れば、登山スタイルも体力も目的地も人それぞれ。人と比べず、自分なりに山を楽しんだら良いのだなぁ。

登山雑誌などは最新ギアやウェアの情報に溢れていて、めちゃくちゃ目移りしますよね。自分もトレンド情報が大好きなのですが、一度山に入ってしまえば昔ながらの重たそうなザックを担いでゆっくり歩いてらっしゃる方も珍しくありませんし、麓の喧騒とはかけ離れてそれぞれの方がゆったりと山を満喫されているのがよくわかります。そんな山中で最初は「自分の装備はイケてるかな、どう見えるかな」みたいな気持ちがあったのですが、徐々に「人は人、自分は自分」「知識よりも経験だよね」みたいな感覚に変わっていったのでした。頭でっかちにならずに素直に山に入る経験を重ねて取捨選択をしていくことで、自分に合った登山スタイルができていくものなのでしょう(もちろん防寒・雨具・非常食などの最低限の危機管理をした上ではありますが)。「山の楽しみ方は人との比較でなく自分で決めたら良い」ということは当たり前のようで、自分の思考の癖(周りに認められる便利さや効率を重視しがち)を取り払ってもらえたような思いがしたのでした。

3.山で一期一会を繰り返すことの清々しさ

単独登山をしていると、出会う人ほとんどの方々と挨拶はしますし、山小屋等でも見知らぬ方と話が弾むことも珍しくありません。ただ不思議とお互いにどれだけ話題が盛り上がっても名前を聞くことすらほぼなく(こちらからも聞かず)、話題は常に「どこの山から来て、どこの山に行くのか」だけ。山行計画と見た目でだいたいの経験や登山スタイルもわかりますし、その日の山行のことや翌日の予定、天気などそれだけで本当にずっと喋っていられるんですよね。何者でもない一人の登山客として自分を受け止めてもらいつつ、お互いについて特に干渉せず「お気をつけて」と清々しく見送り合う、まさに一期一会という関係は麓とは違った心地良さがありました。
太郎平で東京から来たオシャレなトレランおじさんと記念撮影したり、雲ノ平でタイから来られた日本人親子から母娘二人旅の話を聞いたり、雲ノ平山荘であの故・伊藤正一さんの奥様や二男の方とお話できたり。あと黒部五郎小屋ではチェックインしたら僕の布団で爆睡しているオッサンがいて「今日大雨で混んでいると思ったらこのびしょ濡れのオッサンと同じ布団で寝るのか…(ゴクリ)」と覚悟したらただの布団間違いだったり。誰一人お名前もろくに知らないのに表情だけはリアルに浮かんでくるのは不思議な良い思い出です。これは一人旅をされる方の感覚と似ているのかもしれません。

4.濃霧の中での道迷い、暴風雨の中でクタクタになりビバークも覚悟

山行スケジュールにも書いたのですが、2日目PMと3日目AMは本当に土砂降りで、川のように水の流れる登山道をくたくたになりながら歩いていました。3日目のAM、濃霧の黒部五郎カールで登山道を見失い、方角もわからなくなって(コンパスは持っていたのに麓で正確さを確認していないので信頼できなくなり)かなり焦りました。「迷ったときはショートカットせずに引き返せ」という遭難体験談の鉄則を思い出して元に戻ろうとも、360度巨岩ゴロゴロでどちらが元の道かもわからないような。後からついてきたおじさんと一緒にGPSを見ながらなんとか元に戻って冷や汗を拭いたのでした。(ちなみにこの方は、黒部五郎小屋で自分の布団で寝ていたびょ濡れのオッサンでした。)

その後も雨足は強くなるばかりで黒部五郎岳から北ノ俣岳までの登りの繰り返しでだんだんクタクタになってきて、「そろそろどこかの繁みでビバークしようか」と思ったりもしました。幸い、「弱気になるのは空腹のせいだ」と思い返して雨の中で山小屋のおにぎり弁当を立ち食いし、北俣岳山頂で出会った青年とお喋りしながらなんとか歩き続けたのでした。シャリバテとはよく言ったもので、「コメを食べたら元気になる(ただ空腹感があるとは限らない)」のは今回つくづく感じた学びです。

5.そして、麓で待ってくれる人のいる温かさ

一人で3日間歩き続けて下山して、登山口から2時間の妻の実家に帰ったのですが自動洗車機に入れられたように身の回りのものがどんどん洗われて自分もお風呂に入れてもらって、なんだか涙が出るほど嬉しかったのでした。3日ぶりの子供達(三兄弟)とのスキンシップも心に染みました。

逆説的ですが、一人で山に入るからこそ普段一人じゃないことの有り難さがわかるというか。自分との向き合いも大いにあったのですが下山して思ったのはそんなことだったのでした。

山小屋のご飯の記録やギア・ウェアについての反省もあるので、それは別の記事でアップしようと思います。以下、写真です。

6.おまけの写真

※初日の朝9時過ぎ、太郎平に到着。

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※太郎平から雲ノ平方面を眺めます。

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※薬師沢小屋の前の渓流。もう谷底です。

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※薬師沢小屋からの急登。かなりきつかったです。

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※雲ノ平の入り口です。景色を堪能する余裕もないくらいヘトヘトでした。

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※一日歩いた先の高原にいきなりオシャレな雲ノ平山荘があります。また是非行きたいです。

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※雲ノ平山荘には色々売ってます。見ているだけで楽しいです。ネクターめちゃウマでした。

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※晩御飯は石狩鍋。生姜のお漬物でたらふくご飯を頂きました。美味しかった。

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※2日目早朝、雲ノ平山荘から水晶岳に向かうところ。振り返って一枚。

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※朝露に濡れるチングルマの綿毛と水晶岳。ここ登山道を外れていました。やけに手付かずの草木があるとだいたい道を間違えてます。

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※水晶岳からの景色

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※鷲羽岳。ゴツゴツしてカッコ良い山でした。

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※鷲羽岳から三俣山荘を見下ろす景色。急坂で小1時間かかりました。

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※三俣山荘でおにぎり弁当を食べて、束の間の休憩。サイフォンコーヒーを頂きました。雨足も強まってなかなか出発できず一時間。

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※三俣山荘から先は大雨。黒部五郎小屋まで約二時間、こんな足を洗うような山行でした。

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※黒部五郎小屋の赤い屋根を見つけた時は嬉しかった。

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※左奥が自分の布団。相布団じゃなくて良かった。ご飯も美味しかったです。

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※三日目朝は5時半出発。黒部五郎カールの手前の景色はなんだかムーミン谷みたいでした。

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※30分位ぐるぐる彷徨った黒部五郎カール。今回一番焦りました。

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※黒部五郎岳。視界ゼロでした。気にならずにひたすら歩く。

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※疲れ果てて立ち止まった何度目かの小ピークで、無理やり弁当をかきこんだら少し回復。山菜と酢飯が美味しかったです。

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※ヘトヘトになって太郎平小屋で頂いたカレー、美味しかった!

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※折立に到着。最後の樹林帯で、木の根に足を挟んだまま転んで左膝の内側靭帯を痛めました。

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※本の紹介

◆定本 黒部の山賊→別記事でも紹介していましたが、まさに今回ぐるりと回った黒部源流エリアを戦後切り拓いた故・伊藤正一さんのユーモア溢れる手記です。想像上の山域だったエリアを訪れて当時を想像しながら景色を見て回るのはすごく贅沢な体験でした。

◆伊藤正一写真集 源流の記憶「黒部の山賊」と開拓時代→黒部源流を切り拓いた伊藤正一さんの貴重な写真記録。ほんの70年前にはほぼ未開拓だった黒部源流をどのように開拓していったか。この貴重な写真集がunlimitedなのは相当お得と思います。

◆黒部源流山小屋暮らし(やまとけいこさん):今回は初日に通過だけした薬師沢小屋の方による山小屋日記です。土地勘がなくても楽しめましたが、行った後に読むとまた味わいも変わってくるのだろうと思います。もう一度読みたいと思っています。