【034】デザインされた抜擢人事
今週も11月の2週目になりました。4日間で新幹線と飛行機に数回乗らないといけない移動がやや大変な週でもあったのですが、そんな移動の最中に、見かけたニュースが興味深かったので、今日はこの話をしたいなと思います。
言わずとしたファーストリテイリング、こういう会社です。
※言わずもがなではありますが、以下妄想です。
この記事の話、相当な抜擢人事な印象です。私のイメージだと、従業員という母集団に対してS評価が1%、A評価が10%とすると、この人事はSSS評価で0.01%ぐらいな印象です。
◆そもそも内部監査は登竜門
あまり知られていないのですが、内部監査というのは海外だと経営層の登用に向けた登竜門だったりします。
私自身も事業会社に在籍したころ、グローバルのプログラムを1つで内部監査の担当者として、短期間で様々な国の事業を監査するというものがありました。
国や事業に対するリスク感度を鍛える、適切なガバナンスというブレーキの利かせた方を学ぶ、それらを第三者として理解し対応策を実務に落とし込んでいく経験は経営層へチャレンジするための入門といったところでしょうか。
◆なぜ監査役?
一般論としても、監査役というものが経営層への登竜門となりやすいと思っています。
まずファイナンス畑での最高峰としてCFOがありますが、グローバル企業ののCFOが現状担っている業務や影響力などを踏まえると、一足飛びにそこに行きつくにはなかなかハードルがあろうかと思っています。今回のお話も同様で、一番ネックになってくるのはマネジメント経験でしょうか。無論、台湾でのご経験もあられるので、ここでいう経験は従業員数万人のグローバル企業のCFOを担うためのマネジメント経験という意図になります。いやはや、凄い。
加えて、外向けの対応としても、事業規模からして相当ハードなコミニケーションが必要になってくるでしょう。CFOとして戦っていくための圧倒的な戦闘力というものが現状ではまだないが、そこを鍛えるための監査役というポジションかなと同時にも思っています。
監査役であることで、一番大きいのは経営層の議論を体感できるということ。これが最高品質の経験かと思います。
加えて、比較的スタンドアロンで仕事ができる監査役という組織上の位置づけも、事業への影響度及び人材育成両方の観点からリスク低減に寄与していると思います。
改めて、非常に良くデザインされた抜擢人事な印象です。次はPL責任を負った事業部のポジションやるのか、はたまたファイナンス畑に戻って重役に就かれるのか、いずれにしても様々な形でより高度な経営層への道が開かれたと思います。
◆だからといって監査役が軽んじられているわけではなかろう
他方で、監査役が人材育成のためのポジションとして軽んじられているのか?といえば、そういう見方でもないかなと思っています。
ある意味で、こういう形で監査役というポジションが使えるのは、かなり組織全体に自浄作用が効いている証左とも読みとれます。つまり、監査役1人のパフォーマンスに左右されずとも組織全体として必要なガバナンスは構築・維持されていると。もちろん、現時点での話であり、今後どうなるかはわからないところではありますが、監査役がいなくとも組織的に適切なアクセルとブレーキを使いこなせる会社は素敵だなと、個人的には思います。
海外では結構多い監査役から経営層登用という流れ、今回のケースが日本でのモデルになって、数年内に続々と若手を抜擢人事で登用する日本企業が増えてくるかもしれませんね。
このニュースを聞いた時に、もう一回頭を回して、そもそも組織の中で創出される仕事の経験値が所与だと仮定したときに、その経験値をどのように割り振っていくべきか?という論点も考えたのですが、それはまた別のお話。
今週は以上です。ありがとうございました。
※編集後記
よくよく考えたら、関係性が逆で、抜擢された人事がたまたまデザインに富んだわけではなく、たぶん、デザインされた必然性の上に行われた抜擢ですね。あと、ファーストリテイリングが本当に凄いところは、将来取締役を目指せるかもしれないトップ人材をちゃんと発掘して、適切な(つまりは年齢・経験では不相応だけど潜在的な能力としては妥当な)レールに乗せきる力だと思いました。いやぁ、本当に凄い。
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