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【補講001】プロフェッショナルとしての報酬とかの話【補習所】

1月も3週目に突入して、ようやく仕事も休みモードから切り替わってきました。新年会であったり、今月から始まった新しいプロジェクトのキックオフであったり、プライベートも含めて若干の繁忙している今日この頃でございます。

そんな中、若手会計士の教育機関でもある補習所も2023年度のプログラムがスタートしました。私もちょっとだけ関与させていただいてまして、先日、ゼミとかディスカッションがあったので、今回はその内容について補講という形で書いていきたいなと思います。

東京実務補習所の内容であり、今回はJ1向けの内容になるので、実際に補習所に通われている方の参考になれば良いかなと思ってますし、受験勉強中の方や全然関係ない人にとっては、どういうことを学ぶのかイメージを持ってもらうにあたって、参考になればと思っています。

なんでこういう取り組みを始めてみようかと思ったのか、noteのネタが枯渇した以外の理由については、次回の記事にしたいと思います。

先日のディスカッションのテーマは大きく2つあったのですが、初回の補講なので、少しだけ小話を2つ最初に挟ませてください。


紙の上の勝負じゃない

以前、合格者向けのメッセージにも書かせていただいたことにも若干関連しますが、実務って監査報告書や株式価値算定書、不正の調査報告書みたいに書面それ自体が成果物になることもあるのですが、それらを作成するためにも、紙以外の所作が必要になりますし、そもそも書面で成果を求められない口頭助言で成果を求められるようなお仕事も多々あるわけです。

例えば、社外監査役の仕事もその一つで、毎月、限定的な情報中で、意思決定に資する有益な情報を、独立した第三者の立場から提供する。超簡略化すると、経験×知見×コミュニケーション能力の勝負だったりします。

というわけで、まず初めに、仕事において他人との会話が非常に重要だということを理解してもらうといいかなと思います。

論文式試験に合格された一年目の会計士の皆さんの勝利条件は変わりました。ルールが変わってしまったので、早くそのルールに慣れましょう。

答えのない問に向きあって、答えを導くプロセス自体を楽しむ

もう一つ、実務補習所において重要なポイントは、答えのない問いに向き合う点です。今回も然り、テーマがふんわりしたものが多く、十人十色で個々人で全然違う結論になるテーマも結構あったりします。なので、重要なのは、何が正しいか正しくないかという二元論で語ることではなく、なるべく良い答えを出せるように、答えを作り上げるそのプロセス自体に知恵を絞ることだったりします。

正しさの基準が人それぞれなので、そこに重きをおいて議論を進めると破綻しちゃうわけで、色んな人の意見に耳を傾け、なるべく良い結論を導き出せるように会話を重ねる。

そういう意味でも、やはり会話が重要だったりします。なお、私も含め会計士は基本的に陰キャが多いのですが、喋る量が大事なのではなく、(その場の結論を左右する)気の利いたことが言えるかどうかだったりするので、たくさん人とお喋りするのが苦手な方も安心しましょう。私も然りですが、コミュニケーション能力にめちゃ自信がある人間の多くが、キャリアとして会計士を選びませんので。

大事な大事なお金の話

話を戻して、ディスカッションのテーマの1つはお金の話でございました。

アドバイザリーやコンサルティング業務など、会計士が提供するサービスには様々なものがありますが、監査業務を提供した場合、あなたはクライアントからいくらもらえると思いますか?また、クライアントの立場としては、いくらを支払うのが良いと思いますか?

この問いめちゃめちゃ良い問いです。そもそも、お金の話は議論するうえで、非常に良いテーマだと思っています。

綺麗ごとを並べると、報酬とは提供する業務の価値を表してくれるものであり…

  • 自分が本当に価値のある仕事をしたのか?

  • 本当にその価値に対して払って受け取る報酬を妥当なのか?

  • 妥当でないとしたら、何にギャップがあるのか?

という疑問と向き合うことと同義なので。逆に、生臭くもリアリティのある言い方をすれば、お金は生活するうえで必要です。というか、お金ないと生きていけないので、お金稼ぐために必死です。必死になる内容をテーマに掲げるのは、真剣な議論を行う上で非常に効果的だと思います。

代弁すると、知らんがな、という話でもある

なお、このテーマが特に去年度の合格者向けの方々である点を考えると、若干難しいかなとも思っています。何故ならば、監査法人でトレーニーとして働いたことがある方を除いて、皆さん監査法人で働いた経験がないので。皆さんの声を代弁すると、ぶっちゃけ、知らんがな、って感じでしょう。

経験がないことについて、実感込めて喋るのはなかなか難しいと思いますが、ある意味、何も知らないフレッシュな状態で出てきた議論というものは、結構価値があったりします。というか、私的には有難い話です。会計士キャリアを10年以上やっていると、色んな情報に脳みそが浸されているので、なかなか斬新な発想に至りませんので。

差額が発生しギャップを埋めるという思考ではなくて

またまた脱線してしまったので、話を戻すと、自分がいくらもらいたいかという話と、相手にいくら支払わせるべきかという話は、監査業務に限らず常に考えないといけない話です。

私も毎週色んな提案書を準備する中で、結構気をつけていることの一つとして、例えば、「サービス提供側の私は値引きをしました」「値引きをしてくれたけど、クライアント自身は外部の専門家からサポートが必要スコープを削られてしまったので、結局プロジェクト自体は上手くいかなかった」という、いわゆる両者Lose-Loseという関係に陥ることが挙げられます。

なので、逆に、両者がWin-Winの関係にするような思考で考えれば、結構良い結論になります。

例えば監査業務で報酬として、チャージレートが1時間あたり1.5万円だと仮定します。とすると、クライアントの方は1.5万円以上、例えば支払うのは1.5万円だけど2万円ぐらいの便益は受けてると思うと、今後も1.5万円払い続けるでしょう。その一方で、監査法人としては、本当は1.5万円もコスト発生しないけれども、例えば1万円ぐらいのコストで対応できる仕事ではあるのだけれど、請求額とコストの差額の分だけ利益が出るので、1.5万円で報酬を提示してるわけです。

言わんとしたいことは、皆さんが実際にやりとりしている価格(上記の場合はチャージレート)と、各当事者(上記の場合はクライアントと監査法人)が感じる価値は違うというお話です。これは常に起こりうる話なわけで、監査法人とそこで働く会計士の皆さんの関係性も同じかなと思っています。

非常勤の監査スタッフの時給が7千円で成立するのは、監査法人側からすれば、その方が働くことで7千円以上の価値を業務によって提供してもらえるからであり、逆に起用されている会計士側からすれば、本来的には、自身が7千円以下の価値しか業務提供できないにもかかわらず、価値以上の報酬を受け取って儲けることができるからです。世の中、常に、この需要と供給のバランスの中で、お値段が決まっているということを理解していただくと良いかなと思います。

よくありがちな議論の方向性として、「監査法人は1.5万円もらいたいと思っているけど、クライアントは1万円ぐらいの価値しか感じていない。だから、その差額は監査の質を上げて埋めよう」という話もあったりするのですが、勝手ながら、この話にダメ出しをさせていただくとしたら、リアリティに欠けるという点でしょうか。そういう関係性のギャップが明示的にあるのであれば、とっくに監査業務は終焉を迎えています。現実的な物事の考え方を身に着けるという意味でも、やっぱりお金の話は良いです。

価値の源泉とは何か?

日々、結構な数の提案書を作る過程で、報酬と業務内容のバランスをみたときに、これで良いのかしらと悩む場面が多々あります。

例えば、時折Twitterで話題になるPMO業務というのがあるのですが、私がPMOの提案を書くときも、この仕事の価値の源泉は何なんだろうかと考えながら、報酬を提示しています。さっと考えられる要素として…

  • 常駐していつでも素早く正確な相談に乗ってもらえる

  • 常時タスクとスケジュールをコントロールしてもらうことで、プロジェクトを円滑に進めてもらえる

  • 当事者間ではなかなか解決が難しい問題について間に入ってもらうことで、課題の解決を手伝ってもらうとか

日々の仕事の価値の源泉も然りですが、中長期でみれば、お金のお話は、自分自身のキャリアにも関連しています。

結局、好きで、得意で、儲かる仕事をするのが最高に幸せなはずなんですが、意外と儲かるものはわからない。好きなものや得意なものって一部自己完結可能だったりするのですが、儲かるものって自分のことだけ考えててもわからなくて、他人は何故お金を払ってくれるのかという観点がないと、思考しきれないところがあります。

改めて、初回のテーマとして良い内容であったと思ってます。加えて、これはただの感想であり、偏ったものの見方な可能性は大いにありますが、大手の監査法人の方って素晴らしい知見を有したプロフェッショナルばかりであり、職人気質な方が多い影響か、商売感覚がちょっと浮世離れしてる人が少なからず一定数いる気がします。そういう意味でも、補習所でお金の話するのは良かったですね。

令和風、チャージレートとプロフェッショナリズムの関係性

蛇足ではありますが、チャージレートの話について、昭和生まれのプロフェッショナルな方々は「一時間数万円のチャージに見合うバリューを出してください。何故ならば、あなたはプロフェッショナルでなので。」という教育を受けてきました。私も実際監査法人に入所したての頃は、そんなことをチクチク言われたことがあります。もちろん、鼻くそほじりながら聞き流しておりました。

でも、もう令和なので、やっぱり言い方は変えた方がいいかなと常々思っています。というわけで、チャージレートをもっとポジティブに捉え直しましょう。

皆さんは、突然、会計士という資格を手に入れたことで、自身の労働が時給数万円として企業等に請求できることになったわけです。つまり、自分が一時間働くだけで世の中が数万円を動かせるようになり、年間ではおそらく数千万円ぐらいお金を動かしており、経済活動に参加できてるわけです。貴方がプロフェッショナルとして働く働かないで、年間で動くお金が数千万円変わってきます。チャージレート高ければ高いほど、より大きく世の中を動かせるから良いよね。マジ尊い。

初回のゼミのテーマはもう一つあったのですが、私が熱くなりすぎてしまったので、もう一つは次回以降に回したいと思います。

今週は以上です。ありがとうございました。

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