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編集者を惹きつける書籍企画書は、出だしが勝負

娘がインフルエンザで急遽入院して、先週から更新できずにいました。今は付き添い中です。みなさまもどうかご自愛を。

さて、所属作家の書籍企画を出版社に売り込むのがエージェントの仕事。でも、実際、どのぐらいのペースで企画が採用されるのだろう、って思いませんか? 私の場合は、この半年でいうと、月に3本程度。文芸書やビジネス書、ノンフィクションなど内容も様々、大手から老舗、中小の出版社まで取引先も様々ですが、たぶん多い方かなと思います。

企画や原稿はもちろん著者あってのものなので、エージェントがドヤ顔するのはお角違いなんですが、編集者の興味を惹く企画書の書き方には、ちょっとしたコツがあると思います。そのテクニカルなポイントを、ここに書きます。私自身が何百冊もの売り込みの現場で、実際に編集者に指摘を受けたことがベースになっています。

■ 書籍企画書を構成する基本要素とは?
書籍企画書というと、だいたい以下のような要素の組み合わせで成り立っています。

・仮タイトル
・企画主旨/概要(テーマや内容の説明など)
・企画意図/背景(このテーマを選んだ社会的背景や類書の売れ行きなど)
・著者略歴/紹介(このテーマを書くに値する著者の経歴や実績を含む)
・企画内容(「企画主旨」をより詳しく説明したもの)
・目次構成案(この内容がどのような展開で書かれるのかを示すもの)

もちろんタイトルや内容がもっとも重要ですが、たとえそこが凡庸であったとしても、どんな編集者でも目次構成案の最初のほうぐらいまではチラ見してくれるもの。そのため、目次構成案の前半で惹きつけないといけません。

■ ポイント  目玉商品をいちばん前に出す!
書籍企画書なんて山ほど読んでいる、忙しい編集者に興味を持ってもらうためにまずやるべきことは、 いちばん面白いところ、つまり目玉商品は先に出すことです。

ですから「はじめに」や「第1章」が勝負です。このあたりを誰でも知っているような時事問題や一般論などの前フリ、本題に入る前の助走で終わらせてはいけません。編集者が「これ、ホントなんですか?」「◯◯さん、こんな経験したんですか?」と食いつくようなネタを必ずいくつか仕込みましょう。

真面目で誠実な著者さんほど、順序立てて説明しようとされるため、冒頭は一般論や「そもそも」論になってしまいがちです。「いやいや、だって私の手元にある本はそうなってますよ!」とおっしゃるかもしれませんが、それはすでに企画会議を通った本ですし、書き手の個性や持ち味はひとりひとり異なるものですから、そのまま参考にしてもあまり意味はありません。

例えば、結論がいちばんインパクトがあるなら、結論から入って下さい。
例えば、基本的な方法論を伝えるための事例やエピソードが豊富で、ユニークな内容なら、冒頭から立て続けに面白いエピソード紹介をして下さい。
それで構成の流れが多少ぎくしゃくしても、この時点では大きな問題はありません。まずは編集者に興味を持ってもらい、そこから話題を広げて、掘り下げて、この企画の面白さについて理解してもらうこと。そこがスタートなのです。

■ 目次案を書き換えて採用された健康書の例
実際に、私が数年前に担当した、ある健康関連の企画の例についてご紹介します。知人を通じて持ち込まれたその企画は、とてもユニークで面白い切り口でしたが、様々なデータを用いて持論を論証しているために、一見、堅苦しい論文のような印象を受けました。この面白さをすぐに編集者に理解してもらうためには、このままの目次では難しいと思いました。

そのため、その原稿の中から、既存の健康に関する常識とは異なり、意外性を感じるところだけをピックアップして、冒頭に新たに一章を設けた目次構成案を作りました。大手出版社に持ち込んだところ、編集者がすぐに興味を持ってくれて、少し情報を加筆しただけで、企画を採用してもらうことができました。その後、無事に本になり、ロングセラーとして今も版を重ねています。

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ちなみに弊社主催の出版講座では、基本的な書籍企画書の書き方を教えています。弊社名物の鬼塚忠代表自らが、みなさんと一緒にディスカッションもします。ご興味をお持ちの方はそちらもどうぞ。
【2023.1.25 修正】

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お読みいただき、ありがとうございました!