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QuestReading[11] 競争戦略よりも大切なこと

Harvard Business Review(HBR)の特集をReview(#2)。
今回の特集は、2017年にHBRマッキンゼー賞を受賞した<Why do we undervalue competent management? >という論文から始まる。この論文のタイトルは、直訳すれば「どうして私たちは有能な管理を過小評価するのか」になるが、これに<競争戦略よりも大切なこと>という邦題をつけ、さらにマイケル・E・ポーターの<戦略とは何か:What is strategy?>の抄訳を付録した、今回の特集構成は読みごたえがあった。

ビジネスにおいて「戦略的な意識決定」と「中核的なマネジメントプロセス」のどちらが大切かという話をQuestReading。

書名:DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー|特集|競争戦略よりも大切なこと~Management is not only about strategy
著者:ラファエラ・サドゥン、ニコラス・ブルーム、ジョン・ヴァン・リーネン、マイケル・E・ポーター、名和高司、柳弘之、小笠原浩
出版社:株式会社ダイヤモンド社
出版年:2018年(10月号)

<戦略:strategy>は模倣されにくい

市場と事業を選択し、資源を集中し持続させる。そして、ライバルの機先を制するためにコアコンピタンスを高める。これがビジネスでの競争の本質である。

いかにもという一文だ。しかし、これは私が特集の中の文言を寄せ集めたもので、内容は概念的、読み返せば、どんな会社にもあてはまる内容の文章になっている。常に正しい常識などないビジネスにおいては、現場の具体化な特徴が大事なのだと思う。

邦題訳でやり玉にあがった<競争戦略>は、競合他社と異なる活動・方法を選択することと言われる。具体的には、経営層トップのコミットメントを得て「○○という他社と異なる存在になる」と意思決定することだとされる。
その際に、自社や環境を徹底的に洗い出せば、競合他社が模倣しにくい「○○という他社と異なる存在になる」という<戦略:strategy>を作り上げることができると言える。

対して、マネジメントはどうだろうか。
中核的な経営管理プロセスとなる「目標設定」「人材育成」「業務管理」「業績モニタリング」を考えると、技術進歩が目覚ましい現代において、どんなマネジメントも遅かれ早かれ、競合他社に模倣されてしまうと考えられている。
だからこそ、競合他社とどのような異なる存在になるのかという戦略ポジションこそが競争の源泉と言われている。

<経営管理:manegement>は模倣されやすい?

では、次の4つの事柄は、技術進歩が目覚ましい現代において、競合他社に模倣されてしまうだろうか。

・ どうやって採用する新しい技術を決定する
・ どうやって従業員を動機づけしていくか
・ どうやって無駄な作業をなくすか
・ どうやって活動を管理するコツを身につけるか

4つのうち1つでもエクセレンスにできている企業がどのくらいあるかを考えるとごくわずかであるし、つまり、それぞれを模倣するのは難しい(もしくは、模倣できたとしても成功しない)。

このような模倣されにくい「どうやって」で一番有名な例は、トヨタ式といわれる「カイゼン」活動だ。製造業の生産現場で、上位層からの指示ではなく、作業者が中心となって知恵を出し、ボトムアップで問題解決をはかっていく取り組みだが、文章にすればその通りで、どんな会社も憧れるが、なかなか実現しない。

このように模倣されにくい4つ事例だが、タグをつけると

・ どうやって採用する新しい技術を決めるか=【目標設定】
・ どうやって従業員を動機づけしていくか=【人材育成】
・ どうやって無駄な作業をなくすか=【業務管理】
・ どうやって活動を管理するコツを身につけるか=【業績モニタリング】

と関連づけることができ、これらは遅かれ早かれ模倣されそうな中核的な経営管理プロセスと一致する。

つまり、<業務管理>と捉えれば模倣されやすそうだが、<どうやって無駄な作業をなくすか>を徹底的に考えれば模倣されにくくなる。同じようなことでもだ。

実は「戦略」についても、例えば住宅メーカーが<現実世界を様々なセンサーによってデジタルの上に表現する存在になる>と言えば、確かに独自ポジションを宣言しているようだが、GAFAや異業種の存在も含めれば、それは垣根を超えて模倣されやすいポジションに過ぎなくなる。

大切なこととは

<競争戦略よりも大切なこと>の最後の節は「戦略家だけでなく経営管理者であれ」というタイトルが掲げられている。<戦略とは何か>の中でも戦略ポジションと業務効果(活動の選択)は両輪とされている。
つまり、邦訳のように<よりも>ではなく、どちらも大事ということになる。これでは、やはりいかにもという感じがする。

では、大切なこととは何か。それは、現場の具体化な特徴なのだと思う。
マイケル・E・ポーターは、それをリーダーの役割として、「何をすべきではないか」を指し示すことだと言っている。
私は、これが具体的な特徴を出すステップだと捉え、つまり「よそ見や妥協をせずに、徹底的にコミットすること」だと考える。

「業務管理」にせよ、「デジタル上に表現する」にせよ、模倣されやすいと思うのは、その中に選択肢が多いからだと思う。そのとき、<信念も持ち、いろいろな選択肢を排除し、これでいくとコミットできること>が具体的な特徴を出すために大切なことなのだと思う。

そして、信念も持ち小さくてもやり遂げたときに、きっとそこには、模倣されにくい独自性の核ができあがっている。

免責:
本を精読しているわけではありませんので、すべての内容が正確とは限りません。詳細は、実際の本でご確認ください。

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