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同じ音楽を好きな友達が増えるパーティーを―SHOGO × YOSA & TAAR 対談インタビュー(前編)

 前回のインタビューでは名古屋で活動するNEISHI Bros. に話を聞いた。その後、彼らはYOSA & TAARと客演アーティストを招いた『Touch & Go "Modern Disco Tours" Release Party』を開催。“伝説の一夜”として記憶に残った。
 一方で、今の名古屋シーンはそれ以前に育てられたムーブメントの上にあるということにも触れておきたい。兄のNEISHIはイベントを始めるきっかけとして『Pacific』と、そのオーガナイザーであるSHOGOの存在を挙げている。
 そこで今回はSHOGOに加え、次回の『MODERN DISCO』にNEISHI Bros. とPurple Disco Machineの名を連ねたYOSA & TAARを迎え、3人へ対談インタビューを行なった。前後編に分け、SHOGOの活動から名古屋シーン、YOSA & TAARと『MODERN DISCO』、リリースや今後の活動までの繋がりを辿る。

■ クラブの原体験を思い出した『MODERN DISCO』

―NEISHI Bros. へのインタビューで、『Touch & Go』を始めたきっかけにSHOGOさんのパーティー『Pacific』が挙げられていました。改めて名古屋での活動やシーンのことを教えてください。

SHOGO:地元の三重で『SOME TRIP』というHouse/Technoのイベントをやっていた、ujさんっていう僕の師匠のような先輩に誘ってもらって、社会人になってからDJを始めました。初めて『MODERN DISCO』に行ったのはBondaxがゲストのとき。そのときはバリバリEDMが好きだったから自分でも文脈を忘れたけど、何故かBondaxを知ったんだよね。2年目の『Ultra Japan』の1、2日目に行って、その夜にBondaxを見て、3日目の『Ultra Japan』にも行くっていう動き方をして。

名古屋でもクラブには行っていたけど、このときの『MODERN DISCO』でクラブに行き始めた頃の体験を思い出したというか、おしゃれな人がおしゃれな音楽で踊っているのがかっこいいなって思って。そうしたらハマっちゃって、それ以降行けるときは夜行バスや新幹線を使って行くようになりましたね。

YOSA:結構初期だよね。

―遠征するようになったのも名古屋にそういうシーンがなかったから?

SHOGO:ないから行かざるを得ないし、『MODERN DISCO』が好きだから絶対に行くって思った。『TAICOCLUB』と『MODERN DISCO』が被ったとき、今だったらよっぽど見たいアーティストが来ない限り『TAICOCLUB』に行っちゃうと思うけど、買っていたチケットを売って『MODERN DISCO』に行ったことがあって。ゲストのTodd Edwardsもあまり知らなかったけど「『MODERN DISCO』のほうが楽しいでしょ」って思い切っていた時期だった。

通っているうちにこれが名古屋で知られていないのは寂しいし、こういう音楽が好きな友達を増やしたいと思って始めたのが『Pacific』。名古屋になかったシーンでもあったから、やってみたら面白いことになるんじゃないかとも思ったし。Nu Discoってクラブの「ドン!ドン!」って感じがないから親しみやすくて、周りの友達に普及させやすかった。

―どうして『Pacific』って名前にしたんですか?

SHOGO:まずpacificに「穏やかな」って意味があって、Nu Discoは水辺のイメージがある心地いい音楽だったから。それと半濁音が発音していて気持ちがいいからそれにしたかった。あと、『エウレカセブン』ってアニメの33話「パシフィック・ステイト」でレントンとエウレカが初めて二人乗りのリフをする好きなシーンがあるんだけど、それもあってすごく悩んでこの名前に決めて。自分的には会心の出来になった。

2016年3月20日の第1回目『Pacific』のゲストがTAARさんだったんだよね。思い入れが強いから日にちも覚えてる(笑)。前日が僕の誕生日だったんだけど、TAARさんが名古屋駅に着くなり急にヘッドホンを新調しに行って、「誕生日だったんでしょ? USB買ってあげるよ」って買ってくれて、TAARさんのサインをもらって。

TAAR:言われるまで忘れてたわ。ビックカメラのポイントが貯まったからその分で何か買ってあげるってね(笑)。

SHOGO:今も大切に残ってる。使ってないです。失くすの嫌だし家で大切に眠ってます。

TAAR:ありがとうございます。

SHOGO:いえいえ(笑)。

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■ 『MODERN DISCO』の意外なスタート

SHOGO:もともと『Pacific』は名古屋でやりたかったし、最終的にYOSAさんとTAARさんを呼びたいって目標が実現できてよかったと思う。でもそれが終わったら呼びたいアーティストが自分の中で完結しちゃって。『MODERN DISCO』は不定期で続けられるのがすごいと思うんですけど、モチベーションはなんですか?

YOSA:俺たちは誰を呼びたいっていうモチベーションでやってない。日本人DJだけでちゃんとお客さんが入るパーティーを目指しているから。本当だったらYOSA & TAARがやるってだけで(SOUND MUSEUM)VISIONが埋まるくらい。そもそも『MODERN DISCO』に対するモチベーションは1年経ったくらいから沸々と出てきたくらいだった。はじめは呼ばれただけのパーティーだったからレギュラーになるのも知らなかったし、スロースターターだったよね。

TAAR:僕らは「こういう目的があってこういうパーティーがやりたいです!」みたいなのではなく、ふわっと始まったから。それぞれにブッキングされて出るパーティーとほとんど変わらない。

YOSA:はじめはそう。レジデントになることも知らなかった。

TAAR:レギュラーパーティーにする気もなかったと思う。

YOSA:TAARのことは知っていたけどそんなに一緒にやったこともなかったし、1回目のゲストがDariusのイベントってすぐ終わるんだろうなって。そうしたら1回目が成功しちゃったんだよ。

TAAR:めっちゃ人が入った。その日は僕がラストだったんだけど、6時半までDJしてたらしくて。

YOSA:すごい盛り上がったよね。そのあとも2回目のDJ FALCON、3回目のKAVINSKYって、1回目のテンションが続いたんだよね。そのへんの采配は当時VISIONの店長だった松鶴さんがうまいというか、すごかったのかな。俺たちが『MODERN DISCO』をがっつりやり始める前から松鶴さんは描いていたのかもしれないよね。天然でやっていたかもしれないけど、『TECHNO INVADERS』とか当ててるから。

TAAR:『Trap Soul』とか『trackmaker』とか。

YOSA:そう。途中から俺たちもブッキングに口を挟むようになって、「YOSAとTAARをレジデントに据えたい」って言われて。どこかのタイミングでFKJを呼びたいって話をずっとしていた。

TAAR:当時『Majestic Casual』っていうYouTubeチャンネルを結構見ていて、個人的にはそれに似た雰囲気のことをやりたいと思ってた。『MODERN DISCO』をやる前に、『EDGE HOUSE』のオーガナイズをしているKOSUKEさんと『Highness』っていう、今でいうNu DiscoとかFrench Touch 2.0みたいなパーティーを青山のFAMEでやっていて。毎週やるのは大変だったけど、こういうのをいつかまたやりたいとは思ってた。それで当時のmixに『Majestic Casual』で紹介されていた曲を使っていたら、それを松鶴さんが聴いてくれていたみたいで、Dariusが来るときに「親和性があるじゃん」って呼んでもらえたりして。だからその流れでBondaxとかMoon Bootsとかをセレクトしていたのね。

YOSA:俺は当時もっとゴリゴリな感じでやっていたから、そういうジャンルは正直あまり興味がなかった。やっていってみたら意外とハマったけど、一晩中そういう感じだとちょっと辛いんだよね。だから俺とかMAYURASHKAさんがいたことでちょっと違うグルーヴになるというか、French Touch 2.0一色にならなかったのは新しかったのかもしれない。

TAAR:一時期はピークの時間だけBPMが遅いっていうパーティーだった。

YOSA:(BPM)110~115くらい。あれは超フレッシュだったと思う。

TAAR:『MODERN DISCO』はハウスだと思っていて、お互いにDeep Houseが超好きだし、YOSAなんて日本を代表するDeep Houseのクリエイターだったわけだし。Deep Houseっていう出発点からFrench TouchとかNu Disco、ヨーロッパのゆるいビートの音楽を拾える部分だけ拾っていこうって。


■ クラブシーンとファッション

SHOGO:自分はがっつりじゃないけどElectroを聴いていた世代だったので、音楽とファッションがリンクしているのに憧れがあって、『MODERN DISCO』のそういうところがかっこよかった。

YOSA:俺たちは全く意識していなかったけどね。ただElectroの影響は絶対にある。TAARはあのムーブメントを作っていたROC TRAXの一員だったし。俺はその頃Deep Houseをやっていたけど、常にDEXPISTOLSのDJは気にしてた。パフォーマンスのやり方はあのときに見ていたYouTubeのDEXの動きを真似しちゃってるところもある。

TAAR:それはあるかもね。

SHOGO:ふたりがシャツをこうやってやる(襟を目元まで上げる)のとかそうじゃないですか(笑)。

YOSA:そうそう。このあいだの『Touch & Go』では絶対に盛り上がると思ってTシャツを投げたんだけど、同時に曲が盛り上がっちゃってスルーされて、「あれ?」って(笑)。

TAAR:あと『MODERN DISCO』のTシャツを上に掲げたときにさ、ROC TRAXのTシャツを上げてる人がいた! 

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SHOGO:「Hip Hop=こういうファッション」みたいなものがElectroにもあるじゃないですか。あのときにそれをすごく感じて。

TAAR:でも僕らはシーンを作ろうとかは全然思ってなかった。

YOSA:あのとき26歳くらいだったから、VISIONみたいな大きな箱で常にやれるし名前も出て、「俺らもちょっと階段を上ったかもね」くらいの感じ。本腰を入れ始めたのはFKJ以降かな。FKJを呼んだときは今までで一番人が入ったから。クラブレベルでFKJを初来日させたっていうのはあとあと語り継げる話になった。


■ 『MODERN DISCO』という中継地点

SHOGO:最終的にパーティーへの愛を感じましたけどね。お客さんも含めて。

TAAR:お客さんに引っ張られたところはある。

YOSA:当時クラブの現場で、あの人数が自分のDJで常に踊ってくれるってなかったから。

TAAR:お客さんがパーティーを好きって言ってくれるようになったから、僕らも本腰を入れ始めたのかもしれない。

SHOGO:どこかのタイミングで「背筋を伸ばさなきゃ」って言ってましたもんね。

YOSA:それが2年目くらい?

TAAR:それくらいからリリースしようって話になっていたんだよね。

YOSA:長かったね(笑)。それぞれアルバムを出すレベルのプロデューサーでもあるDJふたりがやっているパーティーって、他を見渡してもなかなかない。そこで出会ったレジデントのふたりがリリースまで繋げて、『MODERN DISCO』って名前がアルバムでも広がった。狙っていたわけじゃなく、「この状況だったらやらないわけにはいかないでしょ」って話はずっとしてた。

TAAR: パーティーって良くも悪くも一過性のものだから、その前後を作ってあげるのはやる価値があるものなのかなって。

SHOGO:客演アーティストを好きな人たちがYOSA & TAARを好きになって、『MODERN DISCO』に行くパターンが増えた気がする。熱狂的なYOSA & TAARファンがいるわけではないんだけど、経由していくイメージ。ASIAN KUNG-FU GENERATIONのGotchさんが「アジカン好きの人はレミオロメンが好きとかBUMP OF CHICKENが好きとか、他のバンドへの中継地点になっている」みたいな話をしていて、YOSAさんとTAARさんのやっていることはそういう感じなのかなって思う。

TAAR:主役は音楽っていうのはあるし、DJの匿名性の美学もちょっと持ってる。

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YOSA:ただ、ずっと課題に思っているのは、今のドメスティックなDJには、お客さんがついていないということ。「YOSA & TAARがDJをやればお客さんが100人来ます」とかだったらパーティーを作る側もクラブも楽なんだけど、それって俺たちの2個上の世代しかできていないんだよね。だからいつも、石野卓球さんみたいな存在って改めて本当にすごいと思ってる。卓球さんがDJをやるってなったらたくさんのファンが来るから。だから客演の人たちがきっかけで俺たちのことを知ってイベントに来てくれるって流れが俺の中で最高。まだ全然足りないけど、明らかにここ最近で増えたと思う。

SHOGO: 僕の周りだと踊Foot Worksを好きだった子とかが『MODERN DISCO』に行くって言っていて。オドフットはバンドだけど四つ打ちの流れがあるし。

YOSA:そういう人たちが俺たちのパーティーに来たら、Purple Disco Machineでも盛り上がってくれる可能性が高いじゃん。そういう人を増やしていきたい。アルバムを聴いて『MODERN DISCO』やYOSA & TAARに興味を持ってくれた人たちが、俺たちの呼んだPurple Disco Machineで棒立ちになっていいのかっていったらそれは違う。気に入らなかったらを踊らなくていいんだけど、まずは全部の音楽に対してオープンになって、踊る気で来てほしい

SHOGO:楽しみ方を知らない人も多いですからね。でもフロアにひとり楽しそうな人がいると楽しみやすいかなとは思うんですよ。自分もそういう人たちを見てきたし。

YOSA:踊り方とかはどうでもよくて、例えばkoharuみたいに黙々と立ってんだか踊ってんだかわかんないくらいでもいいのよ。でもいわゆる地蔵の人がいる状況は作りたくない。DJ中にSHOGOみたいなやつを増やさなきゃいけないって常に話してる。

TAAR: SHOGOがいる現場といない現場は違うよね。まずSHOGOがいたら「あいつが引っ張ってくれるから攻めても大丈夫だ」って思う。

SHOGO: そう言ってくれると嬉しいです。僕も三重の先輩に教えてもらったし、楽しみ方がわからないだけで音楽ってみんなにとって楽しいものだと思っているから。


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 前編ではNEISHI Bros. が遊びに行っていた『Pacific』と、その始まるきっかけになった『MODERN DISCO』のスタートが語られた。後編は明日、11月20日に公開。

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写真:Shotaro Shiga
『Touch & Go "Modern Disco Tours" Release Party』より
企画・取材・編集:koharu

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