人を動かす資料の大原則とは|『PowerPoint資料作成 プロフェッショナルの大原則』出版記念セミナー開催レポート

 2019年1月29日、『PowerPoint資料作成 プロフェッショナルの大原則』(技術評論社刊)の出版記念セミナーが開催されました。

 著者である松上純一郎氏が登壇し、「働き方改革の時代に求められるドキュメント・コミュニケーションとは」について講演しました。今回はその模様をほぼ全文書きおこし形式でお届けします。

《登壇者のプロフィール》株式会社ルバート 代表取締役 松上純一郎氏
同志社大学文学部卒業、神戸大学大学院修了、University of East Anglia修士課程修了。米国戦略コンサルティングファームのモニターグループで、外資系製薬企業のマーケティング・営業戦略、国内企業の海外進出戦略の策定に従事。その後、NGOに転じ、アライアンス・フォーラム財団にて企業の新興国進出サポートに携わる。現在は株式会社ルバート代表取締役を務める。ルバートにて企業に対して中期事業計画策定等のコンサルティングを提供する一方で、自身のコンサルティング経験から、提案を伝え、人を動かす技術を多くの人に広めたいという想いで、個人・法人向けの研修を行っている。著書に『PowerPoint資料作成 プロフェッショナルの大原則』(技術評論社)、『ドリルで学ぶ! 人を動かす資料のつくりかた』(日本経済新聞出版社)。

セッション1 講演セッション ~「ドキュメント・コミュニケーション」と「働き方改革」~

松上純一郎氏(以下、松上) 皆さん、こんばんは。この本の著者、松上です。

 最近の世の中のニュースやお客様との話から、働き方改革の影響をすごい感じてるんです。まず最初に、マクロ的に働き方改革の背景にどういうことがあって、皆さんの会社にどのような影響が及ぼされていて、それにどういう風に対応しなければならないのかをざっくりご理解いただいて、後半で、この本を活用して働くことへのモチベーションを上げていただくというのが、このセミナーの目標になります。

関西育ちの松上純一郎氏

 まずは自己紹介からということで、私、大阪の高槻市出身です。普段は関西弁で、今日はエセ標準語です。学校は、同志社大学、神戸大学大学院、その後イギリスにある大学院を出ています。

 卒業後、モニターグループというコンサルティングファームに入りました。マイケル・ポーターという有名な経営学者が、アカデミックな場だけでなく実際の企業の戦略も手掛けようという事で、ハーバードビジネススクールの教授陣と立ち上げた会社です。「純戦略ファーム」と銘打っていて、単なるコスト削減は基本やらない、売上アップにつながることしかやらない。尖ったことをやっていました。ユニークな会社だったのですが、結果的にデロイトに買収されて、デロイトモニターという会社になりました。この本の7割くらいは、そのファームで学んだことについて書いています。

 その後は、以前から発展途上国に興味があったので、NGOに転職してザンビアやバングラデシュで活動していました。

 現在は、株式会社ルバートの代表をしていて、今の時代の働き方をしている副業の方やフリーランスとしてサポートしてくださる方を結集して研修とコンサルティングをメインにやっております。

コンサルティングファームとNGOでの経験から見えたこと

 モニターグループ時代に何を感じてきたかというと、営利事業は富を持つ人ほどインパクトを享受しやすい。業界の1位か2位しか、こんなコンサルティングファームには依頼できないんですよ。だから、強き者をより強くするのが資本主義だなと。 

 一方、NGOは富を持たない人にインパクトを与えよう、というもの。マクロでは政府がお金のある人から税金という形で富を吸い上げて非営利的なことをやるというのが皆さん認識していることだと思うんですが、ミクロでは政府のサポートから漏れてしまう人達がやっぱり沢山いて、これをなんとかできないかと感じていました。

 コンサルティング会社とNGOは、まったく両極端の価値観で動いていて、まさに別世界でした。

 私が経営するルバートでは、『「人が良く生きる」ことを実現したい』というビジョンのもと、人の生まれた境遇にかかわらず、みんなが自分らしく生きられることを目指しています。会社自体は営利ですが、NGOのようなものを組み合わせて、「人のスキル向上を支援することでインパクトを与えたい」と思っています。

 どういうことかというと、外部環境変動が大きすぎて、計画を立ててもその通りに行くことがあまりないようなアフリカには、「今日が良ければいい」「ハッピーに生きれればいい」といった価値観が強く、お金を渡しても生活用品やお酒などの娯楽に使われてしまうことが多いんです。

 本質的なインパクトを出すという点では、こういった地域では単にお金を渡すことはムダなんです。でも、「スキル」という形で人に渡せば、それは他人に奪われるものでもないし、スキルを活用して何か他の価値のあるものに変えることができる。ビジネスパーソンでも同じで、どんなにお金を稼いでいても、ある日突然全部失うかもしれない。でも、スキルだけは失わない。これってユダヤ人的発想ですよね。だから、絶対に他人に奪われないものを研修・コンサルティングとして提供しています。

 実際に、昨年、私の講座を受けたOB・OGを私の友人がアフリカのモザンビークで経営しているベンチャー企業に連れて行って、私の研修で得たスキルを現地で還元するということをやりました。

ドキュメント・コミュニケーションとは?

 ドキュメント・コミュニケーションとは、資料を通じてコミュニケーションをすることです。PowerPointでの資料作成のことではありません。

 元マッキンゼーの中川邦夫さんが10年以上前に「ドキュメント・コミュニケーション」という言葉を提唱しました。(中川邦夫 (著) ドキュメント・コミュニケーションの全体観 上巻 原則と手順

中川氏が提唱するドキュメント・コミュニケーションの「3つの原則」
原則1「解・動・早」(解っていただく、動いていただく、できるだけ早く)
原則2 問題解決コミュニケーション(常に問題解決を目的としてコミュニケーションする)
原則3 スタンド・アローン(自分が説明しなくても、資料自体が自らを説明していく)

 私流に言い換えると、『「人を動かす一人歩きする資料」でのコミュニケーション』です。

 特にBtoBの商材を扱う場合、会社規模の大きいお客様に対して、自分が全ての決裁者に直接会って、すべてを説明できる訳ではないですよね。最近、私が会った元外資系大手SIerの銀行担当の方は、銀行の上層部の方とはまず会えないので、いかに資料に語らせるかを意識していたそうです。

 また、口頭で話すよりもドキュメント・コミュニケーションのほうが再現可能性が高いし、「言った、言わない」の議論を防げます。

 このドキュメント・コミュニケーションには4つの特徴があります。
1. 問題解決型
2. 論理的 (右脳よりは左脳的)
3. アクション思考
4. 図解・グラフ

 これらの特徴を活かして、ドキュメントという形に最も表現しやすいのが、PowerPointを使ったドキュメンテーションです。

「働き方改革」とは?

 次に働き方改革の話をします。働き方改革と聞くと、皆さん「早く帰れ、残業するな」みたいなイメージをお持ちかなと思うんですが、個人、企業、政府のそれぞれの目的が違うので、どれにフォーカスをあてるかによって働き方改革の話が違ってきます。

 ただ一つ言えるのは、政府は政策誘導しています。今年4月から働き方改革関連法が順次施行されますが、企業は法律に従わなければならないし、皆さんが経営者であろうがなかろうが、自分の身にもその影響が及んできます。この政府の視点を理解しておくのは重要です。

政府にとっての「働き方改革」とは?

 政府がどういう意図をもって働き方改革を進めているかというと、究極的には経済成長を続けること。これができないと国が成り立たちません。

 GDPをシンプルに表現すると、就業者数と労働生産性の掛け算で表現できます。

GDP = 就業者数 X 労働生産性


 まず、日本の就業者数についてお話をします。皆さん実感がないと思いますが、過去10年で生産年齢人口(15~65歳の人口)は700万人減少しています。今後20年間で、さらに人口の1割くらいにあたる1,200万人減る見込みです。

 そして、労働力人口は過去10年で50万人減少しています。

 では、なんで生産年齢人口は10年で700万人も減っているのに労働力人口は50万人しか減っていないのか?

 その大きな要因は3つあります。
1. 働く女性がこの10年で70万人増加
2. 60歳以上の労働力人口がこの10年で350万人増加
3. 外国人労働者がこの60万人増加


労働力人口をキープするための政府の取り組みとして3つ挙げられます。

 1つは、究極的には出生率を上げていくしかありません。保育の無償化や在宅勤務の推奨などやってますが、20年後くらいにようやく効いてきます。

 2つ目は、この4月から施行される法律の働き方改革のテーマは長時間労働の解消、つまり、育児中の女性や高齢者でも働けるようにしようということと、非正規と正社員の格差を是正することで、同一労働同一賃金によって短い時間でも働こうというインセンティブが働き、女性や高齢者の労働力率を上げるということです。

 そして、3つ目は外国人の就労条件緩和などで外国人労働者を増やすということです。

GDPの式に戻って…

GDP = 就業者数 X 労働生産性


 では、労働生産性はどうかというと、OECDで日本の労働生産性は18位。めちゃくちゃ低いんです。アメリカで2人でやってることを、日本では3人でやっているということです。

 労働生産性をさらに分解すると…

GDP = 就業者数 X 労働時間 X 労働生産性(時間当たり)


 GDPをキープするためには、労働時間を下げるなら労働生産性を上げなければいけない

 これを政府はどうやってやろうとしているかというと、長時間労働の解消のみでやろうとしている。つまり、「働く時間を短くすれば、君たちがんばるでしょ」と。だから、「仕事があるのに帰らなきゃいけないけど、いったい誰がやるの?」となっているわけです。

 4月に施行される働き方改革関連法は、長時間労働の解消と非正規・正規社員の格差の是正にフォーカスしています。

 これをどう皆さん乗り切るのかがポイントになります。

企業にとっての「働き方改革」とは?

 企業にとっての働き方改革をまとめると、政府から残業規制をかけられていくので、残業を減らさなければならないというのが1つ目。2つ目は生産性の向上。3つ目は人手不足解消のための人材確保。4つ目が、企業のイメージ向上ということで、働き方改革をやることが企業の責任と解釈できます。

 実際に企業は何をやっているかというと、味の素さんは所定労働時間を20分短縮したり、スーパーフレックス制の導入などで「時間」にアプローチしています。1on1で社員のモチベーションを高めることをやっている企業もありますが、どの企業も「生産性を高める」ことに関してはすごく悩んでいると思います


セッション2 対談セッション ~ドキュメント・コミュニケーションの要点~

──質問1:なぜコンサルタントはドキュメント・コミュニケーションを大事にするのか?

 ドキュメント・コミュニケーションは、私がコンサルタントとして先輩に叩き込まれたことでもあり、今もコンサルティングで心掛けていることですが、そもそもドキュメンテーションと問題解決がリンクしちゃってるんですね。コンサルティングは欧米で発展したものですが、問題解決にあたって、ドキュメントを使うことが効率的なので磨かれたんだと思います。

 コンサルティングは、基本的には問題解決なので、聞く・考える・まとめる・伝えるということを繰り返します。お客様やいろんなエキスパートに話を聞いて、自分なりに聞いたことと調べたことを考えて整理して、整理したものを伝える。これを全部ドキュメントを通してやっていきます。聞くときにも、質問を考えておいて、しっかりドキュメントに落としてインタビューに臨む。聞いたことを整理してドキュメントに落として、ドキュメントに提案を整理してドキュメントで相手に伝える。つまり、アウトプットすることで、物事が整理されて解決されていくし、頭の中から考えを取り出さないとチームやお客様に共有できません。

 もう一つは、ドキュメント・コミュニケーションに求められる能力は沢山あるんです。総合格闘技なんですね。

 私は資料作成講座を教えてますが、ロジカルシンキングも鍛えるし、仮説思考も鍛えるし、図解も使うし、数字も扱うし、文章力も必要だし・・・。これらは冒頭に申し上げた、あらゆる仕事に求められるポータブルなスキルであって、他者から奪えるものでもないし、業界を選ぶものでもありません。

 コンサルタントは、ドキュメント・コミュニケーションスキルを極めることで、問題解決の技法を身につけています。問題解決の技法はこれらの複数のスキルで裏打ちされていて、それをドキュメントを通して扱っている、というのが、コンサルタントが資料作成を大事にする理由だと思います。

──質問2:「働き方改革」とドキュメント・コミュニケーションの関係は?

 そもそも1日で絶対に終わらない量の仕事を与えられている場合を除くと、生産性が低いから長い時間働いてるんですね。では、なんで生産性が低いのかというと、日経の調査によると「非効率な会議や資料作成が多い」というのが最も大きな要因のようです。

 最近、資料を作ることを禁止している企業が出てきてますよね。それは、我流のドキュメント・コミュニケーションが横行していることによる問題が生じているから、資料作成を禁止したんだと思います。

中川氏が考えるドキュメント・コミュニケーションの大問題
1.ドキュメントの作成コスト
2.コミュニケーションへの悪影響

 問題の1つは、作るのに時間かけたのに出来上がったものが良くわからんということ。作るところにコストがかかってる。2つ目が、その資料を読んでもよく分からないから、結局会議が進まない、という読む人への悪影響。だから、「すべての人の、膨大な時間とコストが無駄に使われてる」というのが、資料が悪者にされる原因だと思います。

 日本はブルーカラーではなくホワイトカラーの労働生産性が低いと言われていて、これが問題なんです。ホワイトカラーの生産性が低い原因の一つにドキュメント・コミュニケーションがあると思います。

 この課題の真因の1つは自己流。学んだことがないので、当然分かりづらい資料を作っている。もう1つは、具体的にどう直せばよいのか誰も教えてくれない。極端な言い方をすると、分からない者どおしでモヤモヤしながら、「お前が悪いんだ」「いや、お前が悪いんだ」ってことをやっているので、かなりシュールなことが起きている。「非効率」という点で、「働き方改革」と「ドキュメント・コミュニケーション」が繋がってると思います。

──質問3:ドキュメント・コミュニケーションを働き方改革に活用するには?

 大きな話からいくと、働き方改革の領域は、組織と個人にまたがってきます。

 組織としての取り組みとしては、会議を削減する、業務フローを改善する、IT化などがあります。多くの企業がすでに取り組んでいます。個人については、ほとんどの場合は、残業しないでなんとかしろ!という感じで個人に責任を押し付けていると思います。

 個人だと、コミュニケーションスキル、ロジカルシンキングスキル、資料作成スキルなどを向上させることで、かなり生産性が上がるんじゃないかと。毎回10枚完璧な資料を作れとは言わなくても、1枚の分かりやすい資料だけで物事は進むことをいろんなお客さんとやりとりした経験から感じてます。

 大事なのは、組織と個人がまたがる部分組織は、無駄な会議を削減するという意思決定の結果を下に落とすけれど、残った会議の中身をどうするのか決めてない、という話です。会社(組織)として会議はこういう形式にするから、会議資料のフォーマットはこうしてほしいとか、こう埋めてほしいと参加者(個人)にリクエストするとか、コミュニケーションルールを決めるところが結構漏れている。

 これに対する具体的なアプローチは、ドキュメント・コミュニケーションのルール・原則をしっかり決めることにつきます。これによってスピードアップと質の改善が図れます。ルールが決まっていない状況で個人の裁量に極力任せないことがポイントです。

 私が経営するルバートでは、組織と個人の両方にアプローチしてます。事例を紹介すると、あるコンサルティング会社では、提案営業力強化の打ち手として、営業担当各々が作っていた提案資料を揃えましょうということで、資料を揃えたうえで研修を行いました。あるメーカーでは、ロジカルな思考プロセスでお客様からのヒアリング内容の報告ができるようにテンプレートを作成したところ、コミュニケーションロスを減らせたと聞いています。



ドキュメント・コミュニケーションの効果として、営業面だと売上の向上もあるでしょうし、社内のドキュメント・コミュニケーションを改善すれば時間削減にもなりますので、コストを下げることにつながる。要は利益を増やすことができます。私の感覚では、ドキュメント・コミュニケーションの改善による働き方改革を声高に言ってる人が少ないので、まだまだ改善の余地があると思います。

──質問4:「グローバル化」でのドキュメント・コミュニケーションとは?

これからの時代で非常に大切なので、おさえていただきたいポイントです。

 冒頭にお話ししましたが、労働力人口をキープするためには外国人労働者を受け入れないといけません。今の政府は、なし崩し的に現場との議論なしで外国人労働者の受け入れを進めてしまっています。

 オーストラリアの移民政策では、言葉ができることを条件の大きな要素にして外国人を受け入れてますが、日本は日本語能力は必須ではありません。最近ファストフード店に行ったら、日本人のベテラン店員が外国人の店員に怒鳴り声で指示をしていたんですが、たぶんコミュニケーションとして成り立っていない。怒鳴ってる店員も怒鳴られてる店員もお互い何をしたらよいか、どうコミュニケーションしたら良いか分からないみたいな。2人とも英語を話せない。日本人が英語ができればいいっていう問題でもないです。今、日本にたくさんいるのは母国語が非英語のベトナム語とかモンゴル語とかネパール語の方ですからね。英語ができればいいっていうのは今の日本においてはもはや古い考え方なんですね。外国の方とうまくやるためには、話す以外の手段を考えなければいけない時代になっています。

 参考になるのが、ファミリーマートの取り組みです。澤田社長が非常に外国人スタッフ育成に問題意識を持っていて、外国人スタッフの育成に取り組んでいます。

 ファミリーマートの店頭スタッフの約7%が外国人スタッフなので、日本語、英語、中国語、ベトナム語、ネパール語で業務マニュアル、文化集、用語集を作ったり、接客を学ぶための動画を作ったりしています。こういうことがどんどん広がることで、ドキュメントがより重要になると思いますし、日本の今後10年の大きな変化の一つになるでしょう。

──質問5:ドキュメント・コミュニケーションはどうすれば身に着くのか?

 実はドキュメント・コミュニケーションって職人芸なんです。最近コンサルタントの仕事も変わってきてはいるんですが、コンサルティング業界は徒弟制です。ある先輩コンサルタントからその人のスキルを叩き込まれるんです。自分が作ったパワポの資料を先輩に渡すと、赤ペンでバーッとコメントが入って返ってくるんです。そこにルールはなくて、「揃ってないからダメだ」「汚ねえよ」といった具合で、職人的に「見聞きで覚えろ!」みたいな(笑)。だから、ドキュメント・コミュニケーションができる人が少なくなっちゃう。そんな徒弟制みたいのは拡大生産できないじゃないですか(笑)。

 今回私が挑んだのは、これを何とか体系化して定型化することなんです。それが結果的に500ページになっちゃったんですね(会場笑)。今日この本を初めて手にした方は、「なんだこれ?」「こんな本、読めないよ!」と思ってらっしゃるかもしれないですが(会場笑)、すし職人が寿司の握り方を本にしたら、たぶんこんな感じの分厚い本になると思います。「手をこう、ちょっと斜めにして」みたいな。言葉にするとどうしても長くなっちゃう。職人の技ってそういうことですよね。

 では、ドキュメント・コミュニケーションをどうやって身に着けるかというと4つポイントがあります。

 1つ目が、資料作成のプロセスを知ると効率的に資料が作れます。2つ目が大事で、型を知る。ストーリーラインや図解をゼロから考えるのは大変なので、型に当てはめたり、型を組み合わせればなんとかなる。3つ目がルールを知る。4つ目がツールを使いこなす

 1と2についての本は世の中に沢山あるんです。ただ、実際にはドキュメントを作るためのツールを使わずしてドキュメントを作れないので、3と4については、ツールとしてPowerPointを使ったらこうなります、ということをこの本で提案しています。

 この本には特徴が4つあります。

 1つ目は、この本は資料作成の流れどおりに構成されていること。最初から最後までざっと読むことで資料作成の全体の流れが理解できます。2つ目が、スポーツジムの事例で一連の流れが分かるようにしてます。執筆している時、全体最適と部分最適を完璧にするために苦労しました。3つ目が、見開き1ページに1つのルールがまとめられている。4つ目が、本で解説している図解やグラフのテンプレートや、事例のスライドをダウンロードできるので、皆さんがすぐにルールに則したスライドを作れるようにしています。

 そして、この本は使い方指導が必要な本なんですね(会場笑)。

 まず、ざっくり流れを確認してください。次に気になった部分だけ読んでください。その後は、テンプレートをダウンロードしてすぐに使い始めてください。テンプレートがあれば、ある程度型があるので作れます。最後は、机に置いておく。実はこの本、自立できますので、まずは置いておけばいいということなんです(会場笑)。

 要は、真面目に全部読もうとしなくていいです。この本は皆さんが資料作成をするうえでのパートナーなので、内容をざっくり理解して、どこに何が書いてあるのか分かるようにしておいたら、後は必要な時に使ってください

 この本を活用していただくことで、皆さんの個人のスキルアップになると思いますし、一緒に働く周りの方が助かると思います。

 ちなみにご報告までですが、発売1週間で増刷が決まりまして、世の中の資料作成スキルを学びたいというニーズがあるんだなと思いました。また、アマゾン「売れているビジネス書」ランキング(1月20日~26日)で46位に入りまして、パワポ本がランクインしてるのを見たことがなかったので、これも時代の要請なのかなと思った次第です。

 この本は、私が講師をしている2日間の資料作成講座をベースにしているので、本を読むのが大変だという方は、ショートカットとして2日間講座を受けていただくと、この本の7割くらいはカバーできます。他にも資料作成の実践講座もありますし、講座のOB・OGのFacebookグループでは、自主的に「ファイナンス勉強会」なども開催されているので、資料作成以外の学びも深めたりできます。

セッション3 実践セッション~図解入門~

 「実践セッション」の詳細についてはこちらのレポートをご覧ください。

質疑応答

質問1. 職場で自己流で資料を作っている人に対して、どう接していけば良いでしょうか?

松上  資料作成について、人それぞれの主義主張があると思うんです。同僚どおしで型化するのは、正直難しいと思ってます。ボトムアップでやるのはだいたいうまくいかない。私は、ドキュメントのフォーマット化においては、ある程度マネージャーとか上の人が組織の下に落とすことが重要だと思います。上長の方に、「こういうふうに資料を揃えることが大事なんです。だから揃えていきませんか?」という風に、上長にまず納得していただいたうえで落としていくのが私は一番いいんじゃないかと思います。

質問2. トップダウンで資料作成の改善をやろうという時に、トップの方がパソコンを使えないことがあると思うんですが、その場合どうすればいいですか?

松上  そういうことが多いんですよ(会場笑)。そういう人が少なかったら、こういう問題って起きていないはずで。パワポがなかった時代に評価されて上がってきた方だと思いますし、手を動かさなくて良かったということですね。私はそういう人たちを無理やり変えるということをしたことはないですが、一つできることは、実際の成果物を見せて、「分かりやすいね」と好評をいただいたところで、「こういうのを社内で広めませんか?」ということで研修をやるなどして、身をもって効果を実感してもらうことですね。

質問3. 組織と個人のお話でおしゃっていた「コミュニケーションのルール化」の具体的なイメージを教えてください。

松上  例えば、会議で「これを決めよう」という場合、決め方が決まってないことがあります。誰が決めるのか、全員が合意しないといけないのか、といったことを、ある程度決めておかないといつまでたっても押し付け合いになるってことがよくあるんですよね。そういった意思決定のプロセスをしっかり決めるといったイメージだととらえていただければと思います。

質問4. 自分のチーム全員にこの本を買ってもらったのですが、どこを読めと言えばよいですか? 12ステップと154原則とボリュームがあるので、アドバイスいただければと思います。

松上  本の序盤で、どのように自分の提案を相手に伝えるか、といった相手に期待する行動とかを設定したうえでコミュニケーションの根幹の話をしています。まず、第3章「目的設定の大原則」と第4章「ストーリー作成の大原則」をしっかり読んで、会議の発言で気にしてみるとか、メール送るときに気にしてみるところからスタートしてもらって、職場での共通言語を作ることから始めていただくのが良いのではないかと思います。

質問5. 読者のこの本に対する評価について教えてください。

松上  コンサルタントの方は、「お~!これだーっ!」という感じで、みんなめちゃくちゃ身をよじって喜んでました(会場笑)。それ以外の方は、この本をどう使えばいいんだろうかということで、使い方のガイダンスをしっかりしてあげると、より多くの人がとっつきやすくなるんじゃないかと、今日皆さんからの質問やお話しを聞いて思いました。

まとめ

松上  今後、ドキュメント・コミュニケーションがどうなっていくのかについて考えてみました。

 世の中では、ホワイトボードやチャットツールを使うことがもてはやされてると思うんですね。こういうツールがフィットするのは、業務の性質がフロー型で、スピード感が必要で、試行錯誤と失敗を繰り返しながら新しいことを生み出すようなR&Dつまり事業開発フェーズです。

 でも、事業ってこれだけで回るかというとそうじゃないんです。ある程度の規模になって拡大・効率化していくフェーズに入ったら、業務の性質が今まで積み上げたものをどう改善するかみたいなストック型になるし、着実に失敗をつぶすためにPDCAをひたすら回す。そして、外部の大きな組織も巻き込んでいかなければならない。そうなると「人を動かす一人歩きするドキュメント」が必要になります。

 最近、大手上場会社の方に聞いた話ですが、その会社では資料作成を禁止して、ホワイトボードだけにしたんだそうです。すると、ホワイトボードに機密情報がたくさん書いてあるので、社内に外部の人を入れられなくなってオフィス見学ができなくなったとおしゃってました。それだけドラスティックなことをやってます。そして何が起こったかというと、外部の人と働くときにドキュメントがなくて困ってる。社内はいいけど、社外のパートナーとシステムを作るといった時に大変困ってると言ってました。

 メルカリだって、最初はフロー型でやってたと思うんですが、あれだけの膨大なオペレーションを回そうと思ったら、外部の人をうまく使ってやらないといけない。そうなると絶対にドキュメントが必要になるわけです。

 フロー型とストック型のどっちがいいとかではなくて、両方うまく使っていくことが求められている。2つ違うフェーズをごっちゃにして、新規事業で最初からガリガリドキュメント作るのは非常に非効率です。でも、世の中の全ての企業がベンチャー企業みたいにホワイトボード使えばいいかっていうと、絶対そんなことないわけです。2つの事業フェーズの区分けを考えると、適切にドキュメントの位置づけができると思います。

 今後、ドキュメントは基本的にデジタルドキュメントになっていきます。映像はどうなのかというと、映像で伝えられる情報は限られているので、文章・文字が非常に重要です。

 ドキュメント・コミュニケーションの「考える」「作る」「伝える」のプロセスを、今は全部人間がやってます。だから、この本でパワポの操作まで一気通貫で全部書いてます。でも、ドキュメントを「作る」ことは、今後人工知能などで確実に代替されていくわけです。スライドなんて全部データですから、こんなに人工知能に合ってるものはないわけです。しっかりした教師データがあればだれでも分かりやすいスライドが作れるようになります。そうなると、これから人間にとって大事になるのは「考える」と「伝える」になります。私はこの二つのスキルを磨き続けていきたいと思いますし、皆さんも一緒に磨き続けていただければと思います。

最後に

 ドキュメント・コミュニケーション的に、今日話したことをスライドにまとめました(笑)。


* * *

セミナー司会進行兼ライティング:渡邊絵美(株式会社ルバート マーケティング・広報担当/フリーランス)


◆元外資コンサルによる「戦略的プレゼン資料作成講座」2日間集中講義
パワーポイントによるビジネスドキュメンテーションの流れを総合的に学びます。外資コンサル出身の松上純一郎が、目的の設定、ストーリーラインの作り方、図解、グラフの表現までを2日間、一気通貫で伝授します。パワポ資料作りに時間がかかる、体系的なやり方を誰にも教えてもらえない、資料は先輩社員のものを使いまわすだけ...等の悩みの解決を目的にした講座です。日々のビジネスコンサルティングの中での学びを常に講座に反映しています。研修のみの講師ではなく、現役コンサルタントだから提供できる「現場で実践されるスキル」を皆さまに常に提供し続けます。

◆株式会社ルバート
「人がよりよく生きる」ために「組織が変わる」、「人が変わる」ことに貢献したい、また、その場面に立ち会いたい、という想いから、人材育成のための「ビジネス研修」と企業変革のための「経営コンサルティング」を通して、個人と企業のありたい姿への変化をサポートし続けます。

◆『PowerPoint資料作成 プロフェッショナルの大原則』松上純一郎(著)本書から抜粋したサンプルPDF(合計132ページ)を期間限定で公開しております。


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