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人を動かす資料の大原則とは|『PowerPoint資料作成 プロフェッショナルの大原則』出版記念セミナー開催レポート~実践セッション~

 2019年1月29日、『PowerPoint資料作成 プロフェッショナルの大原則』(技術評論社刊)の出版記念セミナーが開催されました。

 著者である松上純一郎氏が登壇し、「働き方改革の時代に求められるドキュメント・コミュニケーションとは」について講演しました。

セミナーのタイムテーブル
 1. 講演セッション
  ~「ドキュメント・コミュニケーション」と「働き方改革」 ~
 2. 対談セッション ~ドキュメント・コミュニケーションの要点~
 3. 実践セッション ~図解入門~
 4. Q&A
 5. まとめ

 今回は「セッション3 実践セッション」の模様をほぼ全文書きおこし形式でお届けします。(※セッション3以外のセミナーレポートはこちら

《登壇者のプロフィール》株式会社ルバート 代表取締役 松上純一郎氏
同志社大学文学部卒業、神戸大学大学院修了、University of East Anglia修士課程修了。米国戦略コンサルティングファームのモニターグループで、外資系製薬企業のマーケティング・営業戦略、国内企業の海外進出戦略の策定に従事。その後、NGOに転じ、アライアンス・フォーラム財団にて企業の新興国進出サポートに携わる。現在は株式会社ルバート代表取締役を務める。ルバートにて企業に対して中期事業計画策定等のコンサルティングを提供する一方で、自身のコンサルティング経験から、提案を伝え、人を動かす技術を多くの人に広めたいという想いで、個人・法人向けの研修を行っている。著書に『PowerPoint資料作成 プロフェッショナルの大原則』(技術評論社)、『ドリルで学ぶ! 人を動かす資料のつくりかた』(日本経済新聞出版社)。

実践セッション~図解入門~

松上  私の講座を受けたことがない方が沢山いらっしゃいますので、基本図解の内容をやりたいと思います。今まで私が見た図解についての解説の多くは、情報の構造と図解の対応関係が明確になっていないと思いました。私は図解が非常に大事だと思っています。頭の中にある情報を図解に表すことを型を知って身に着けるというのを教えてて面白いなと思うのは、型っていうのはアウトプットだと思うじゃないですか。だけど、図解の型があるおかげで、自分の頭の中も論理的思考になるっていう「ニワトリ・卵」みたいなところがあって、自分で図解の型を持っておくことで情報が整理できるんです。ぜひ一つのロジカルシンキングの訓練だと思って、今日は皆さん一緒に図解をやってみていただければと思います。

 まず最初に、列挙型、背景型、拡散型、合流型、フロー型、回転型の図解の6つの基本形について説明します。この本の249ページを参考にしながらお聞きください。左側が情報パターン、右側が図解パターンの構成になっています。

 列挙型は「万能の列挙型」と言われています。要素が分かれていればこの型を使えます。逆に言うと、要素間にあまり関係性がないときに列挙型を使います。例えば、「社内の課題」を、「営業の課題」「マーケティングの課題」「商品開発の課題」の3つの要素で整理する場合、厳密にはお互い関係しているかもしれませんが表面上では別々なので列挙型を使います。

 背景型は、Aが結果、あるいは起きている現象、そして1,2,3はその背景にある原因だと思ってください。よって、1,2,3が後ろ側にあって、Aが前に出てきます。例えば、「売上の低下」について、いろんな原因が考えられます。「背景=原因」として原因を結果の背面に配置してあげると、人は勝手に「結果と原因」、「原因と結果」という関係として見てくれます。つまり、新商品の発売の遅れ、競合商品の値下げ、競合商品の発売によって売上が低下している。図解は人の認知と整合することが大事なんです。

 拡散型は、一つの原因が複数の要素になります。拡散型の典型的なケースですが、リーマンショックが起こって、銀行の貸し渋り、企業がそれによって資金繰りが悪化して倒産する、倒産すると消費が冷え込む、というように、リーマンショックから連鎖的に波及しました。こういう場合は、一つの原因が複数の結果を生み出しているので拡散型を使います。

 合流型は拡散型の逆で、複数の原因が一つの結果になります。営業員の削減、新商品投入の遅れ、競合の新商品のリリースといった原因があって、売上が減少しました。

 「原因と結果」というと、背景型と合流型は一緒じゃないかと思われるかもしれません。これら二つの型の使い分けのポイントについて説明します。合流型には矢印があります。人の認知として、時間が流れを示すように感じるという事なので、原因と結果が時間を経ている場合には合流型を使うと人の直観に合います。原因と結果が同時進行で起きているようなものだと、背景型を選ぶと人の直観にあった図解になります。

 フロー型と回転型については、複数の要素間に時間の流れがあるということです。

 フロー型は、例えば計画→準備→実施のようなものですね。

 回転型は、フロー型の例がもう一回りする。つまり、計画→実行→反省、そして計画にまた戻ってくるといった場合に回転型を使います。

 以上が図解の6つの基本形ですが、実際に情報を整理しながらできるかがポイントになってきます。

紙とペンを使って図解問題にチャレンジしてみよう

 これから時間をとりますので、先ほど学んだ6つの型のどれがあてはまるかを考えて、紙に図解してみてください。自分で型を選ぶときに無意識やってしまうことが多いので、共有タイムでは、隣の人とペアになって、簡単に自己紹介をして隣の人に自分の思考プロセスを説明してみてください。

《実践問題1》「待機児童問題」

 では、問題です。

 合流型を選ぶか背景型を選ぶかのポイントは、時間を経て結果がでているかどうかなんです。

 回答例です。より直観的なほうということで、私は背景型を選びました。

 なぜかというと、核家族化とかが進みながら待機児童が増加していった。つまり、すべてが積み重なって最後にドーンと待機児童問題が起きたわけではなくて、同時進行で待機児童が増えていったと理解したほうがいいんじゃないかということで背景型を選びました。

《実践問題2》「DAZNとJリーグの放映権契約」

 2問目の問題はこちらです。

 回答例です。

 関係性を見ると「原因と結果」だよねと。そして時間の流れがあるので、私の回答例は拡散型

 フロー型を選んだ方がいましたが、これは応用で、拡散型に追加で要素間に矢印をつけてあげると要素間の因果関係が見えるようになります

《実践問題3》「人事マネジメント」

 最後の問題です。


 回答例です。

 要素を並べ替えないとうまく表現できないと思うんですが、私は回転型でいきました。

 いろいろな考え方があると思います。一般的には、人事ってこれらを回転させないと育成がうまくいかないなので、フロー型よりは回転型に設計するのがポイントです。

 たった3問でしたが、結構面白くないですか?

 型を知っておくと、パッと情報を見た時に「これってこの型だな」と、自分で何かを設計するときに型に当てはめられるかなと考えられる。だから、図解は非常によい思考の訓練だと思います。ちなみに、図解を教わった翌日の新聞の朝刊を読むと図解して見えてくるという方がたまにいます。

 応用形の6つもありますので、ぜひ本を参考にしてみてください。

* * *

セミナー司会進行兼ライティング:渡邊絵美(株式会社ルバート マーケティング・広報担当/フリーランス)


◆元外資コンサルによる「戦略的プレゼン資料作成講座」2日間集中講義
パワーポイントによるビジネスドキュメンテーションの流れを総合的に学びます。外資コンサル出身の松上純一郎が、目的の設定、ストーリーラインの作り方、図解、グラフの表現までを2日間、一気通貫で伝授します。パワポ資料作りに時間がかかる、体系的なやり方を誰にも教えてもらえない、資料は先輩社員のものを使いまわすだけ...等の悩みの解決を目的にした講座です。日々のビジネスコンサルティングの中での学びを常に講座に反映しています。研修のみの講師ではなく、現役コンサルタントだから提供できる「現場で実践されるスキル」を皆さまに常に提供し続けます。

◆株式会社ルバート
「人がよりよく生きる」ために「組織が変わる」、「人が変わる」ことに貢献したい、また、その場面に立ち会いたい、という想いから、人材育成のための「ビジネス研修」と企業変革のための「経営コンサルティング」を通して、個人と企業のありたい姿への変化をサポートし続けます。

◆『PowerPoint資料作成 プロフェッショナルの大原則』松上純一郎(著)本書から抜粋したサンプルPDF(合計132ページ)を期間限定で公開しております。


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