見出し画像

行く川の流れは絶えず

昨日、ついに、エアコンが壊れた。
リビングのエアコン。家の中で一番大きいやつ。
エアコンに貼られたシールには「2000年製」とあった。
「ミレニアム!!」と世の中が浮かれていたあの時代に生まれたエアコン。
「ハリーポッターと賢者の石」がベストセラーになり、「未来日記」を見て福山雅治の「桜坂」に泣いた、あの2000年だ。
よくまあ、20年も動いていたものだと感心するけど、突然の故障に財布も心もピンチだ。
でも、ここ数年の猛暑を考えれば、買い換えない選択肢などない。
家族会議の結果、今夜、買いに行くことにした。

その上、昨日は、大好きな友達から「避けられていた」という事実に気がついて、ショックで泣いた。
多分、私を嫌いになったのではないのだろうと思う(多分ね! いや、お願いだから、そうであってくれ!)
家庭か本人の事情で、「当分、会えない」と伝えてきたのだと思う。
その友達に会って話をするのが、リアル界隈で一番楽しい時間だっただけに、これから何を楽しみにして生きていけばいいのだろう。
大人の友情は難しい。配偶者や子供や仕事やいろんな事情が複雑に絡みあって「ただ気が合う」だけでつきあい続けられないのだから。
仕方のないこととわかってはいるものの……やっぱり辛い。
今はまだ「ただただ悲しい」気持ちに支配されている。

8月になれば、新しい車が私のところにやってくる。それだけが楽しみ。

エアコンも車も友情も、私の暮らしは、少しずつ、少しずつ、変化していく。
細胞が新陳代謝を繰り返すように、私の周りのものが少しずつ入れ替わって行く。
気がつけば、周りのものが全部入れ替わっていていて、驚く。
今、私の目の前に立ててある本も、数年前と違うラインナップ。
着ている洋服も使っている化粧品も、机もパソコンもスマホも、何もかも昔と同じものは何もない。

行く川の流れは絶えずして、元の水にあらず

方丈記を書いた鴨長明の冒頭の言葉は、1000年たっても変わらない。
川に流れる水のように、絶えず変わり続けるものの中で、変われない自分が川の早瀬の真ん中に突っ立って、流れる水に押し流されまいと必死に足を踏ん張っている。だけど、川の流れは速くて、いつ押し流されるかという恐怖と、いつか誰もいなくなるという孤独感が津波のように襲ってくる。

本当にお前は変わっていないのか

そんな声が聞こえてきた。
今、私は書いたこともなかった文章を書き、出会うはずのなかった人と交流している。昔ほど意地悪でも皮肉屋でもなくなったし、感情を表すことが少しだけうまくなった。人を信じてみようと思うようになったし、人は優しいのかもしれないと思うようになった。良くなったかもしれないし、また別のところが悪くなったかもしれない。でも、私も変わった。
私の細胞は新陳代謝を繰り返す。
人間の細胞は数年で全部入れ替わるらしい。そうすると、数年前の自分と今の自分は、全然別人ということだ。
変わらないものなどないということか。

変わることは怖い。変わることが全ていい方向に進むとは限らない。
現に、新陳代謝を繰り返すたび、私の体は「老化」に向かっている。

でも、変わってしまうなら、仕方ない。
私にできることは、少しでもいい方向に変わっていこうと努力することだけだ。
じわじわと激流に流れ流されながらも、美しい方に体を向け続けていくしかない。

新しいエアコンは、省エネタイプの自動お掃除機能付きにしよう。
友達とは、また「新しい距離感」を作っていこう。

サポートいただけると、明日への励みなります。