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そば米汁を食べてみませんか?

去年の夏、奈良で茶粥を食べました。
ほうじ茶でお米を煮て作る茶粥。熱々でしたが、ほうじ茶の香ばしさが口をさらっとさせてくれるので、暑い(熱い)ながらもすいすい食べられる。ほんのりしょっぱくて、炎天下をお店まで歩いてきて、汗で失った塩分を補ってくれました。
優しくて美味しい食べ物でした。
どうして全国に広まらないのかと不思議なくらいです。

子供の頃から、当たり前に食べているものが、実は地域限定のとても珍しいものだったということは結構あるのではないでしょうか。
最近は、メディアの影響でどんどん全国区になっていたりもしますが、まだまだ地域だけのものでとどまっていることも多いと思います。
先ほどの茶粥も「美味しい!」と絶賛する私を、奈良県出身の友人は「そんなのどこが珍しいの?」と、不思議そうでした。

妹のダンナさんは、県外出身者です。
結婚の挨拶に来た時、私の母が出した料理に感動したそうです。
「こんな美味いものがあったのか」と。
私たちには、当たり前すぎて「これのどこがいいの?」と思う料理でも、彼にとっては、驚きのうまさだったそうです。
母も父も、それを聞いて大喜び。おかげで彼の人気はうなぎのぼりになったとか。
今でも、母の作るその料理を楽しみにしているようです。

妹のダンナさんが大絶賛した料理、それは「そば米汁」

「ああ、またそば米汁か」
子供の頃の私には、その程度の認識。
夕食の定番メニュー。読んで字のごとく、そば米を汁物にした料理。
そば米を大根や人参、鶏肉、油揚げ、しいたけなどど一緒にお出汁で煮た料理です。
味噌汁の代わりによく夕食にでます。特に冬場。

そば米ってなに? と思われたのではないでしょうか。
これは、蕎麦(ソバ)の実のことです。「米」とありますが、米ではありません。
「ソバの実だよ」と説明すると、「ソバを実ごと食べる発想はなかった」と一様に驚かれます。そういえば、旅番組で徳島に来た芸人さんも同じ感想を述べていたことを思い出しました。
不思議ですよね。なぜ、蕎麦は全国に普及しているのに、ソバの実を食べる発想はなかったんでしょう。

母は、この料理を「そば米汁」と呼びますが、調べてみると「そば米雑炊」と呼ぶのが主流のようです。
蕎麦は雑穀の一つ。それを煮てあるので「雑炊」と呼ぶみたいです。

はい、これが、そば米です。徳島県内なら、どんな小さなスーパーにも置いてあります。

「そば米雑炊(ぞうすい)」は祖谷(いや)地方の郷土料理です。祖谷地方は高い山に囲まれて米が作れないため、ソバが作られていました。ソバ米とはソバの実を塩ゆでして、からをむき、乾燥させたものです。源平の合戦(げんぺいのかっせん)にやぶれ祖谷地方に逃げてきた平家の落人(へいけのおちうど)たちが、都をしのんで正月料理に作ったのが、「そば米雑炊」のはじまりといわれています。
(農林水産省のHPより)

そば米は、ソバの実を塩ゆでし、殻をむいて、乾燥させたもの。
もともとは祖谷地方の郷土料理でした。祖谷地方は、徳島県の西の端、山深い地方です。「祖谷のかずら橋」という観光名所を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
谷にかけられた、かずら橋。歩くとギシギシと音を立て、ゆらゆら揺れます。足元の木と木の間の隙間から、谷底が見えます。スリル満点です。

話を戻しましょう。

そんな、県外出身者の義理弟をトリコにした「そば米汁」のレシピをご紹介します。(レシピは家庭によって違います。これは我が家の母流)

材料
 ・そば米
 ・大根
 ・人参
 ・鶏肉
 ・こんにゃく
 ・豆腐
(調味料)
 ・だしの素
 ・塩
 ・酒
 ・しょうゆ

とにかく、そば米があればオールOK。野菜もあるものでいいですし、調味料もご家庭の好みの味付けでどうぞ。けんちん汁を作るような感じです。

まず、そば米を下ゆでします。沸騰したお湯に10分ほどゆでます。ざるに上げておきます。


ぷちぷちとした感じが分かりますでしょうか?

次に、材料をさいの目にカットします。(大根だけ、いちょう切りにしてしまった)


カットした鶏肉・野菜などを煮ていきましょう。

今日は、マルシマのだしの素を使いましょう。粉末で、水に溶けやすく、味がしっかりしているのに後味すっきり、美味しいです。

このだしの素は、クニ@ミユキさんが書かれたnoteでおすすめされていたものです。

今まで、九州発の某有名だし専門店から買っていました。こちらに売っていないので、自分や家族が大阪や東京・福岡に出向いた際、わざわざ買いに行っていました。それが、今じゃすっかり、マルシマさんに心酔中。近くのスーパーで買えて、美味しい、お手頃価格となると心変わりは仕方がない。
距離は、私とだしの素との愛を育めなかった模様。私には半径5キロメートル以内の恋が向いているようです。

さて、野菜・鶏肉が煮えました。豆腐もさいの目に切って入れて、ひと煮立ち。
だしの素、塩、酒、醤油で味付けも完了です。


最後に、茹でておいたそば米を投入し、少しだけ煮ます。


器に盛って、できあがり。

(毎度、写真が下手ですみません)

結婚して初めて、夫にそば米汁を作った時のこと。
先にそば米をゆでておいておくことを知らず、野菜やお肉と一緒にそば米を投入し、そのまま、ガンガン煮てしまいました。
気がつくと、そば米がだし汁を吸ってパンパンに膨れ上がり、ぶよぶよのそば米で埋め尽くされる鍋。なんとも気持ちの悪い仕上がりに。プチプチとした独特の食感はなく、ただ、微妙にそば風味のおかゆを食べているようで、「まずい!」の一言しかありませんでした。
くれぐれも、そば米は、先に茹でておいて、後入れでお願いします。

とても簡単で美味しい、お腹が温まるそば米汁。
根菜の出回る冬によく登場しますが、夏の冷房で冷え切った体をじんわり温めてくれておすすめです。

そばには、白米よりビタミンB群が多かったり、ルチンと呼ばれるポリフェノールも含まれています。
「そばの香りが強そう」と思われるかもしれませんが、意外や意外、そばの香りはあまりしません。私が子供の頃、麺のそばと、そば米が同じものであると気づいていませんでした。

もし、お近くのスーパーで「そば米」を見かけられましたら、ぜひ試してみて!
ヘルシーで美味しいので、全国区になればいいな。

これを書くにあたって、そば米について調べていたら、最近の雑穀ブームもあいまってか、新たなそば米のレシピを見つけました。

この中にあった、「さつまいもとそば米のポタージュ」がとても美味しそう。
今度、試してみたいと思います。(まだそば米が残っているしね!)

では、また! 次回は「大野海苔」について書きたいな。

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