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お片づけの極意はビジョンを持つこと

「綺麗に片付いてます! うちより綺麗!」

先日、知人に頼まれて、ある調査のモニターに参加した。
それは、家庭のキッチンにある食材の収納状況を調べるというもの。
数人の整理収納アドバイザーさんがモニター調査を委託され、うちに来た。
整理収納アドバイザーさんがキッチンや冷蔵庫の中の写真を撮りながら、我が家の収納を褒めてくださった。
片付け下手、収納下手の私にそんな言葉をいただけるとは夢にも思っていなかったので、めちゃくちゃうれしかった。

掃除、片付けは苦手だ。今もかなり苦手。できればやりたくないものの一つだ。
なんていうか、掃除とか片付けって、私の中では、マイナスをゼロに戻すようなもののように感じる。プラスにならない。やってやっても、また汚れたり散らかったりして、不毛な戦いのよう。

わが母は片付け上手だ。リビングや押入れもいつもスッキリしていた。
妹もその血を受け継いで、とても片付け上手。

いつも片付いている部屋で生活してきたので、本当を言えば私も片付いた部屋が、結構好き。モノが少なくて、ごちゃごちゃしていないのが好き。
色やモノの多いところにいると目がチカチカして、頭がクラクラする。
だから、片付いた部屋で暮らしたいと思っては、いる。
なのに、誰に似たのか、私は全くの片付け下手だった。

母は主婦だったので、私が学校に行っている昼間に家事や掃除をする。朝、家のリビングやキッチンが散らかっていたとしても、学校から帰ると見違えるようにスッキリ片付いているのだ。妹もしかり。自分の部屋をいつの間にか綺麗に片付ける。
私にとっては、魔法にしか見えなかった。どうやって整理整頓や収納を駆使すれば、片付いた部屋になるのか、全然見当が付かなかった。

断捨離もした。
とにかく捨てまくった。本も洋服もCDも何もかも。
クローゼットはスカスカ、本棚もスカスカ。夫のモノも何でも捨てた。
スッキリした。そして後悔した。
ふわふわのカシミアのストール、お気に入りのワンピースやバッグ。お気に入りの本。友達がくれたプレゼント、子供の書いた絵や手紙。
とにかく捨てろと、愛着のあるものや、自分に合っていたものまで捨ててしまった。洋服やバッグは、探しても同じものは見つからず、本も古いものになると見つからない。手紙やプレゼントは2度と手に入らない。今も後悔し続けている。

そして、最後に出会ったのが、今、アメリカで大人気という、こんまりさんこと近藤麻理恵さんの「魔法の片付け」いわゆる「こんまりメソッド」
彼女のことは本を読んで、人気が出る少し前から存じていた。ちょこちょこと、彼女のメソッドを試していた。
幸運にも、数年前、彼女が私の町へ講演に来られたことがあった。
すぐさま申し込んで行ってみた。
最前列に陣取った。
登場した、こんまりさんは、とても華奢で可愛らしい、春のようなパステルカラーをまとった人だった。けれど、片付けに対しては、見た目の春をぎゅうんと通り越えて、真夏の炎天下のように熱い人だった。

「ときめくもの」だけを残す。彼女ののお片づけ理論でよく言われる言葉だ。
ときめくものなら残してもいい。ボロボロになったお気に入りのTシャツもアイドルのグッズも、読まなくなった本も、ときめくのなら残してもいい。
断捨離で失敗していたこともあって、こんまりさんのメソッドの「ときめき」に基づいたお片づけの話は、私の心に希望をもたらしてくれた。

そんなお片づけを愛するこんまりさんが、「ときめくものを選ぶ前に、もっと重要なことがあるんです」と、おっしゃった。その次におっしゃったのがこの言葉。

「限界まで自分の理想の暮らしを考えてください」
「映像が思い浮かぶくらい考えてください」

モノを選別する前に考えなくてはならないのは、自分はどんな生活がしたいのかということだそうだ。
「そこを考えなければ、お片付けは続きません」ときっぱりと彼女は言った。

それから、こんまりさんの言葉に従って、自分はどんな暮らし方が好きなのか考えてみた。
ごちゃごちゃとした部屋は嫌いだ。できれば、目に見えるモノは少ない方がいい。
ニューヨークのアパートのような、SATCのキャリーやユーガットメールのキャスリーンが住んでいるような雰囲気の部屋で、読書や書き物がしたい。
それから、帰ってきたら部屋がすっきりと片付いているのがいい。
疲れたら片付けは休みにしたいから、多少、モノが溢れても我慢する。
家族が自ら片付けられるようにしたい。
道具は、見た目が良くて、使いやすいモノだけを厳選したい。
無印やニトリのようなシンプルなデザインのものがいい。
少しだけでも、グリーンを育てたい。
キッチンの作業台には、調理道具や調味料を置きたくない……
こんなふうに、延々と自分の理想の暮らしを考えた。

それから、なぜか片付けがうまくいくようになった。
もちろん、こんまりメソッドに従って、お片づけ祭りを実行し、ときめくものを残し、ときめかないものは、大幅に処分した。
でも、それ以降は、意識しなくても不思議にモノが自然と減って、収納用品がいらなくなった。
特に気にしなくても、インテリアにまとまりができてきて、モノがあっても部屋がすっきりして見えるようになった。
いい加減な性格の私が、本当に好きと思えるものが見つかるまで、たとえお玉ひとつ、お皿1枚でも妥協して買うことをしなくなった。
そして、前ほど片付けや掃除が苦痛というほどでなくなった。やっぱり嫌いだけど「まあやってもいいか」くらいには思えるようになってきた。

断捨離で失敗したのは、なんのビジョンも持たず、ただモノを減らしたことが原因だった。
ビジョンがあれば、行動しやすくなる。
ビジョンがあれば、自然とその情報が集まってくる。行動の選択がしやすくなる。迷うことが減る。自分に必要かそうでないかが判断しやすくなる。
多分、無意識に自分の理想の暮らしに近づくような選択や行動をするようになったのだろうと思う。その積み重ねのおかげで、アドバイザーさんにお褒めをいただけた。この方法は間違ってなかったということだ。
こんまりメソッドの本当のすごいところは、ここに気づかせることなんじゃないかと思う。こんまりメソッドは、片付けの方法論ではなくて、生き方の方法論なのかもしれない。
極論を言えば、こんまりメソッドでは、もし散らかっている部屋で暮らしたいというビジョンのある人がいれば、その人は片付けをしないのが正解なのだ。

実家の母や妹は、きっとずっと前から誰に教わるでもなく、自分の暮らしたい部屋のビジョンを持っていたのだろう。私にはその視点がなかった。
母や妹から見れば、私の家の片付き方なんて、まだまだだろうと思う。
それでもいいのだ。私たち家族が機嫌よく、快適に、不便なく暮らしていて、自分の理想の暮らし方に近づいていれば、それでOKだ。母や妹の理想の暮らしを求めているわけじゃないのだから。

あと、私には、もう一つ叶えたいビジョンがある。
程よく筋肉のついた体に、ビキニで南国の海岸を闊歩する。背中の大きく開いた真っ赤なドレスでスレンダーな体を包み、パーティに行く。体にぴったりのスーツを来て、ハイヒールを履いて、かっこよくプレゼンする。可愛いランニングウェアを着て颯爽と街を走る。体にいい栄養たっぷりの料理を作って食べる。
そんなビジョンがあるにも関わらず、なぜかダイエットはうまくいかない。
こればっかりは、一回断食でもやって、脂肪の断捨離が必要なのかもしれない。



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