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自己啓発本を手放す理由

先日、某心理カウンセラー(自己啓発?)のDVDをメルカリに出品した。
残念ながら、まだ売れていない。

30代後半からの10年くらい、この心理カウンセラーの言葉にしがみついて生きてきた。それをついに手放したいと思った。

自己啓発にはまっていた時期がある。やめたのは、つい最近だ。
やめたというか、忘れたというのが正しい。いつの間にか本を買わなくなった。ブログを読まなくなった。DVDを見なくなった。ラジオも聞かなくなった。ほんといつの間にかなのだ。

がんばらなくていい
心のままにワクワクするほうをやってみたらうまくいく
好きなことだけすればいい
どんな感情でも出した方が好かれる
あなたは愛されている
存在するだけで価値がある
働かなくてもお金は入ってくる
お金は使えば使うほど入ってくる などなど

この言葉たちにしがみついて、ひたすら自分の存在価値を探していた。
同じようなことが書かれている本を、いくつも買って繰り返し読んだ。同じようなことしか言わない高額なDVDを買って見た。
だけど、どこにも私の求める答えはなかった。

ついには、高い料金を払って、某心理カウンセラーのお弟子さんといわれる人のカウンセリングを受けにいった。
「上司がパワハラみたいな態度で、一緒にいて辛いんです」
「仕事なんてやめちゃっても、なんとかなりますよ」
「仕事がやめたいわけじゃないんです」
「じゃあ、上司に『お前の言うことなんか聞くか、あほんだら!』とでも言いましょうか? ここで練習してみよう!」
「……」
「それは、子供の頃のお母さんとの関係が、影響してるですよ。よく思い出してみて」
「……」
そこにも、私が求める明快な答えはなかった。

私が真に求めていたもの。
今ならわかる。

失敗しないで幸せになる方法。

自己肯定感が低いと失敗することが怖い。
「失敗=ダメ人間」という図式が頭の中から離れない。
もともと、失敗しがちで、自分をダメだと思っているから、これ以上、恥の上塗りはしたくない。
できることなら、布団をかぶって、人にも会わず、本やテレビ、マンガといった一方通行のコンテンツを消費して、何もせずじっとしていたい。傷つかないように、一生冬眠して暮らしたい。
そうすれば、失敗しないですむ。自分のダメなところを見なくて済む。恥ずかしいところを見られることもなく、笑われたり、バカにされたりすることもなく、ただ平穏に生きていられる。

でも、心のどこかで「このままじゃダメだ」という思いもある。
だけど、外は魑魅魍魎の住まう悪魔の世界。突風が吹き荒れ、荒涼とした世界。きっと自分なんか一瞬で吹き飛ばされ、悪魔の餌食になって、屍になってしまうにちがいない(と、思い込んでいる)

だから、「失敗しないで幸せになる方法」がほしい。

そんな心に、心理カウンセラーの言葉は、ピタっとハマる。

がんばらなくていい
好きなことだけすればいい
心のままに生きればいい
働かなくてもお金は入ってくる
あなたは愛されている

こんな言葉をいくら呪文のように唱えても、何も変わらなかった。
どんどん仕事を嫌いになり、どんどん人から遠ざかり、どんどん預金通帳の残高が減っていった。

奇しくも同時期にライティング講座を受けることになった。ライティング講座の謳い文句が「人生を変える」とあったからだ。
自己啓発の延長のつもりだった。

上手く書けなくて、何度も泣いた。上手く書けて褒められた時は、本当に嬉しかった。
ネタを探して過去を振り返って、自分が結構頑張ってて、ちゃんと生きてきたんだということに気づいた。
まだまだダメなところはいっぱいあって、自己肯定感が爆上がりするわけでもないけど、「まあ、ぼちぼち生きてこうや」って自分に言えるようになった。

私に必要だったもの。

それは、考えること。

文章を書くようになってよく考えるようになった。自分のこと、周りのこと、何が好きで、何に怒ってて、何が不満なのか。考えたことが正解かどうかは分からない。ただ、たくさんの仮説を言語化することで、その仮説を確認してみることができる。
失敗することもある。
うまくいくこともある。
人生はトライアンドエラーなのだと知った。

失敗を恐れて、自分の中に閉じこもっていては、いつまでも成功は訪れない。
あるのはただ、幸せになりたいというぼんやりした、手に入らない願望だけだ。

心理カウンセラーの言葉は、魔法の言葉なんかじゃない。
ありふれた励ましの言葉だった。
よくよく世の中を観察してみると、成功した人、うまくいっている人、愛されている人、そんな人からも、言葉は違っても同じような意味の言葉を聞く。

生き方は人それぞれだ。
人生のベクトルは、向きも長さも太さも、人の数だけある。
どんなに心理カウンセラーが優秀でも、私に、あなたに、カスタマイズされた答えは用意されない。

私は何が好きなのか、私はどういう人間になりたいのか、どうやって生きて死にたいのか、誰が好きで、何が嫌いで、何をしたいのか。

考える。
見つけた仮説を試してみる。
失敗したらまた考える。
その繰り返しで、見つかるものがある。
それが、心理カウンセラーの言葉の数々だったんだ。

数学の公式を教えてもらっても、なぜこの公式になるのかは分からないのと同じ。自分で証明してみて初めて、公式に意味が生まれ、自分のものになる。

考えることは難しい。
私も、自己啓発本を読み漁っていた頃、自己啓発の言葉を自分に落とし込むすべを知らなかった。
誰も考える方法など教えてくれない。

そんな時は書けばいい。
自分に、誰かに向かって読ませる文章を書いてみればいい。きっと自分の気持ちが見えてくる。

私は書くことで考える方法を見つけた。
他の人はそれが絵かも知れない、歌かもしれない、話すことかも、俳句や短歌かもしれない。
でもきっと何かあるはずだ。
そして、それを見つけた時、自己啓発本で、答え合わせをしてみるといいい。
きっとあなたが見つけ出した答えがそこにはあるはず。

もう、私に自己啓発本はいらない。答えは自分の中にあるから。

DVDはまだ売れないけど、明日は大量にある本を出品しようと思う。
人生の答え合わせが必要な誰かのために。

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