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ブラック企業に転職して2週間で逃げ出した話⑤

◾︎労働マルチの実情

wikipediaによると、

・委託業務員に対し、違法な早朝から深夜に及ぶ拘束を行っている。 現在、正社員募集という求人広告で応募者を騙し、委託販売員として採用している。 正社員としては決して採用されないという特徴がある。
・販売方法は主に、アポの取れていないいわゆる「飛び込み」での販売を行うものが多いとされる。企業からの基本給はなく、収入は商品の売り上げしだいの出来高制となっている。 現在、このビジネスモデルが、労働マルチと呼ばれ、労働基準法に違反していると示唆されることも多い。

こんな感じで書かれています。

なんのこっちゃ?と思う人がかなり多いと思いますが、「路上のフルーツ売ってるおにーさんおねーさん」と言うとピンと来る人も多いのではないでしょうか。

路上で「新鮮なフルーツなんですけどいかがですか?これ売らないと帰れないんですよー」みたいに言ってくるアレ。
扱っている商材が違うだけでやっていたことはほぼ同じ、つまり、ここの系列会社だったということが明らかになりました。
私もフルーツ売りさんには会ったことがあるし、歩合制で酷い仕事をさせているらしいという話も聞いたことがあったけれど、まさか一緒だったなんて…!とショックを受けました。
よくよく思い返してみれば、求人サイトで申し込んだもうひとつの方の会社には「フルーツをプロモーションする商社」って書いてあったので、そっちの会社はガチのフルーツ売りだったんだろうな…。

さて、ここで当初の求人内容をもう一回見返してみましょう。

・海外コスメやウォーターサーバー事業にまつわる新商品のプロデュース。
→プロデュース・プロモーションなどと書いてあることが多いが、要はただの『販売・接客』をクリエイティブな仕事に見えるように言葉を変えているだけ。

・ある程度仕事ができるようになったら企画・発案やデザイン、買い付けなどにも関われる。
→企画やデザインをしている人は社内にひとりもいない。

・外資系ということもあり、海外にも会社がある。よって海外研修もあり。
→海外研修は確かにある。なのでこれは嘘ではない。このビジネスを始めたのはアメリカの企業らしいので、大ボス会社が海外にあるということを考えるとここも嘘は言っていない。

・正社員とアルバイトの募集。正社員は給与約24万+インセンティブ、アルバイトは日給1万円以上。
→総合職(業務委託)と販売職(正社員・アルバイト)の2種類があり、販売職を希望すると100%不採用となる。
社内にいるのは全員業務委託(自営業者)ということになるので、社保や交通費の保証はない。契約書も交わす必要がない。
総合職は実際のところ完全に歩合制になるとのこと。なので稼げない人は交通費などを差し引いて給料がマイナスになることも。
(私のいたオフィスでは、皆が稼げるようにオーナーが配慮してくれていたし、フルーツ販売のように「売れない分は自費で買い取り」などはさせていなかったので、そういう点では同業系列会社よりも良心的だったのかもしれない)
販売職は会社によって「営業職」と言い換えられていることもあるとか。

・勤務時間10〜19時、週休2日制(土日祝)、夏季休暇あり。
→拘束時間はかなり長い。月曜日しか休みがない。夏季休暇もない。だってその条件『販売職』の条件だからね。『総合職』も同じ条件だなんて一言も言ってないよね?

・社保完、寮あり、交通費規定支給、独立支援制度。
→前述の通り、社員は全員業務委託契約なので保険や交通費の保証はない。独立支援制度はあるもののオーナーになったら10万貰えるとかその程度のものらしい。

完全に法の穴を潜ってる、というか、ここで「私って正社員じゃないの!?」とさらにショックを受けることに。
確かに面接の時に「業務委託のような形」みたいな話はあったようにうっすら記憶しているけど、ほんとに業務委託だったとは…。そりゃ椿さんも嘘ついてまで必死で営業するわけだ。
あと盲点だったのは、求人に載ってたA社でぐぐっても労働マルチの話は全くヒットしないこと。新しい会社だからね。
B社でぐぐったらばっちり出てきました。被害者が集まってる2ちゃんのスレとか出るわ出るわ。

そしてこの会社、ネガティブなことを言う人が全然いない。おかしいくらい皆ポジティブ。
そのノリについて行こうとすると自分もポジティブ思考になる。「私、前はネガティブだったけどこの会社に入って変われた!今がすごく楽しい!仕事楽しい!」そんなことを言っているメンバーばかりでした。
つまるところ、これ、どんなに薄給でも、労働条件きつくても、仕事が楽しいと思い続ける洗脳にかかってるわけです。
LINEのJuice連投が「宗教みたい…」と思った私の判断は正しかったのだと気付きます。
確かにポジティブになりすぎると本質から目を逸らしてしまう。そうやって「低賃金でも辞めない部下」を作り続けて、その部下をオーナーに昇進させることで自分にもお金が入って……その名の通り『マルチ(ねずみ講)システム』なわけです。
だから万が一自分がオーナーになっても、このサイクルからは逃れられないし、全く同じ仕事を部下にやらせることしかできない。経営も何も押し売り販売しかやってきてないから。
そう考えるとめっちゃ怖い。

2ちゃんのスレには『採用かどうかの連絡を自分からさせたり、色々なことを暗記させてテストさせるのは、その人のやる気を見るため=やる気がある人は洗脳しやすいし、辞めにくい』という書き込みもあって、ものすごく腑に落ちました。な、なるほど…。

前に「ここで働いてる人は皆いい人」と書いたけれど、ポジティブ人間に矯正・洗脳された人ばかりだったと思うと、別の場所で出会って仲良くなりたかったな…と心から思います。
まだ働いている人たちは皆誰かを騙そうとしているわけではないし、洗脳され続けてる被害者なんですよね。
でも私にはどうすることもできないし、もう関わりたくないし、辞めるときに「これ労働マルチなんですよ」なんて言えるはずもなかった。

◾︎現在

不当解雇宣告されて3日後の朝に寮を出ろと言われたので、必死で家を探しました。運良くすぐ入れるシェアハウスがあったので今はそこに住んでいます。お盆中だったのに、私の事情を察してすぐ対応してくれたS社さん本当にありがとうございました。ここで決まってなければネカフェ難民になっていたかも。

無事に次の仕事も決まりました。転職エージェントサイトに登録して、ありがたいことに1社目で内定を貰えたのでこちらも本当に助かりました。運が良かったです。
もちろん面接時に「前の会社がブラックだったので…」という話をした上で、労働条件をちゃんと確認しました。この会社はきっとブラックではない、はず…w

給与の振込先は椿さんに伝えてあるのですが、まだ振り込まれている形跡はないです。

また、お盆中で行政が動いていなかったので、不当解雇を確認してすぐに労働条件相談ほっとラインに電話しました。

担当者さんいわく、
「お金などの話はできる限り当事者間で解決すること。支払いを渋るようであればこちらからも動けるが、基本的には何もできない」
「不当解雇については「辞めたくなかったのに辞めさせられた!」という体で裁判や労働審判を起こすことはできるが、自分が辞めたくて解雇された場合は合意の上での退職になってしまう(私の場合は「辞めようか悩んでいます」と言った段階で辞めさせられたので、その気になれば裁判はできるが、金銭面や時間を考えると見返りは少ない)」
「寮は仕事を辞めた段階で、オーナーの意思でいつ出て行ってもらえるか決められるケースが多いので、いきなり出て行くことになっても訴えたりできない」

という、何とももやっとする回答をいただいたので「労基まわりってあんまり役に立たないんだな…」と凹みました。
しばらく経っても振り込まれないようであれば、労基に動いてもらおうと思います。そもそもいくら振り込まれるかも教えてもらってないんですけどね。聞いたけど教えてくれませんし。

あと意味があるかどうか分かりませんが、A社の求人を載せていたサイトに求人票に虚偽記載があると報告メールも送りました。
ただこの系列会社、調べてみるとハローワークや他の求人系サイトにも求人が載っていたので、「載らないようにする」というのは難しいのかなーと思います。
求人は大体「海外に行ける!」とか書いてあったり、楽しそうな写真を載せていたりするので、この話を知ってさえすれば一発で見分けることはできるかと思います。

そんなこんなでしんどい思いをしましたが、何とか生きていくことができています。
相談に乗ってくれた友人たちにも感謝しまくりです。本当にありがとう。

どんな理由があっても、仕事や家を焦って決めるのは本当に良くないなと痛感しました。
ちょっと怪しいなーと思っても冷静に判断する余裕がなければ、どんなに慎重な人でも引っかかるんだなあと。詐欺とかもそうですが「自分は大丈夫」と思ってる人って普通に引っかかります。お気をつけて。

労働マルチの被害者が少しでも減るように、と思ってまとめさせていただきました。
読んでくださった方、長々とありがとうございました!

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